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日水、半世紀ぶり増資 「魚」から「薬」へ転身

2016/8/19 18:14
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 日本水産が54年ぶりの増資に踏み切る。手にする資金の主な振り向け先は海ではなく、陸にある。それも医薬品工場への大型投資だ。同社の医薬品事業は水産資源の活用から始まり、日本国内で一大ビジネスに育ったが、世界市場の開拓はこれから。半世紀ぶりの増資には、「魚」から「薬」に経営の軸足を変える狙いが込められている。

■「優等生」の医薬品

 日水の増資は1962年以来初めて。最大3522万株(現在の発行済み株式数の13%)を発行し、約167億円を調達する見込み。調達した資金の使い道は固まっている。医薬品事業の生産設備の拡張だ。

 同社の医薬品事業の目玉はエイコサペンタエン酸EPA)。血液をさらさらにして動脈硬化などを防ぐ効果があるとされ、医薬品や健康食品に用いられている。日本国内の医薬品EPAでは既に高いシェアを握っており、昨年12月には鹿島工場内に生産拠点を新設すると発表している。

 今回の増資で調達する資金のうち58億円は、この工場建設に使う。日水が半世紀ぶりの増資を決めたのは、同社が「転身」しようとしているからと言っていい。

 日水は1911年の創業で、その歴史はトロール漁業が始まり。以降、日本の水産ビジネスを引っ張ってきたが、日水の事業内容は大きく様変わりしている。2016年3月期の連結決算を見ると、水産事業の売上高は全体の約4割を占めるが、営業利益で見ると2割にすぎない。営業利益の約半分は缶詰など食品事業が稼いでいる。

育てるには時間

 一方、売上高は4%でも、営業利益の2割を稼ぎ出しているのが医薬品事業だ。水産事業は水産市況の影響で利益がぶれやすいのに対し、医薬品事業は好採算で安定的な収益をあげられる。日水にとっての「優等生」だと言える。

 その医薬品事業は今のところ、日本国内市場が主戦場。現在はほとんど海外展開していない。日水の根本喜一・経営企画IR室長は「海外でEPAが医薬品と認められているのは米国くらい。今後はほかの地域でも申請するし、健康食品としての需要もまだまだ伸びる」と話すが、海外事業を育成するには時間もかかるだろう。

 すぐに結果が出ないことは日水も分かっている。根本室長は「調達コストなどを中長期的な視点で考えた。成果を出すまでに時間がかかるが、事業を成長させて株主に還元する」と超低金利時代に増資を選んだ理由を説明している。

 古くからのビジネスを守るだけでは、生き残れない。だからこそ、富士フイルムホールディングスは「フィルムの時代の終わり」を見越して事業ポートフォリオを見直してきた。日水はうまく転身できるだろうか。

(中尚子)


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