強盗被害は虚偽 金メダルの競泳選手が謝罪

強盗被害は虚偽 金メダルの競泳選手が謝罪
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リオデジャネイロオリンピックで金メダルを獲得したアメリカの競泳選手4人が、現地で強盗の被害に遭ったという訴えは虚偽だったことが明らかになりました。選手は謝罪し、大会の組織委員会は「ブラジルの人々は恥をかかされたと感じていた。謝罪に感謝する」としています。
オリンピックの競泳男子800メートルリレーで金メダルを獲得したライアン・ロクテ選手らアメリカの選手4人は、今月14日早朝、リオデジャネイロで強盗の被害にあったと訴えましたが、捜査を行った現地の警察は18日、「事実と違う」と発表しました。
警察などによりますと、ロクテ選手らはパーティー会場からタクシーで選手村に戻る途中、立ち寄ったガソリンスタンドでトイレの備品などを壊し、警備員から拳銃を向けられるなどして、日本円にしておよそ5000円を弁償したということです。
ロクテ選手は19日、声明を発表し、「起きた事を説明するのに注意深さや率直さを欠き、謝罪したい」として、強盗事件の訴えは虚偽だったことを事実上、認めたうえで、「自身の行動にもっと責任を持つべきだった。オリンピックの開催国に申し訳なく思う」と謝罪しました。
競泳界のスター的存在のロクテ選手らが強盗の被害に遭ったという話は、リオデジャネイロの治安の悪さを象徴するニュースとして繰り返し報道されました。
大会の組織委員会のマリオ・アンドラーダ広報責任者は記者会見で「ブラジルの人々は恥をかかされたと感じていた。謝罪に感謝する。過去のこととしたい」と述べました。

これまでの経緯

リオデジャネイロオリンピックの競泳男子800メートルリレーで金メダルを獲得したライアン・ロクテ選手らアメリカ代表の競泳選手4人が、現地で強盗の被害にあったと最初に報じられたのは今月14日のことです。
ロクテ選手は当初、14日早朝、パーティー会場からタクシーで選手村に帰る途中、銃を持ったグループに路上でタクシーを止められ、現金を奪われたと話していました。
大会の組織委員会のマリオ・アンドラーダ広報責任者は、報道をいったんは否定しましたが、アメリカのオリンピック委員会がロクテ選手らの話として強盗事件を公表したことを受け、15日、遺憾の意を示し、「大会で、こうした暴力が課題となっていることを謝罪する」と述べました。
しかし、警察がロクテ選手や当時一緒にいたフィーゲン選手から事情を聴いたところ、銃を持っていたという人物の数や奪われた現金の合計額などについて証言が食い違っていました。
また、選手村に帰ってきたロクテ選手らが談笑している様子が防犯カメラに映っており、強盗の被害に遭ったあとにしては不自然なことなどから、17日、ブラジルの裁判所は警察の求めに応じ、ロクテ選手とフィーゲン選手の出国を禁止する措置を取りました。
18日に記者会見した警察によりますと、ロクテ選手ら4人はタクシーで選手村に帰る途中、ガソリンスタンドに立ち寄りましたが、その際にトイレの備品を壊したまま立ち去ろうとして、警備員とトラブルになり、警備員から拳銃を向けられる場面もあったものの、最終的に日本円にしておよそ5000円の現金を渡し弁償したということです。
これを受けアメリカのオリンピック委員会は「選手の1人が暴力的行為をしたと考えている」とする声明を発表し、警察の捜査結果を認めたうえで、「選手たちのふるまいは受け入れがたい。オリンピックを開催しているブラジルの人々に謝罪する」とコメントしたため、選手みずからの説明を求める声が高まっていました。
弁護士によりますと、出国禁止の措置を受けブラジルにとどまっていたフィーゲン選手は19日、裁判所に対して日本円にして100万円余りの罰金を支払い、出国禁止の措置がとかれたということです。
ほかの3人はすでにアメリカに帰国しており、今後はIOC=国際オリンピック委員会が4人の処分の検討を行うことにしています。

IOCは4人の処分を検討

リオデジャネイロオリンピックで金メダルを獲得したアメリカの競泳選手4人が強盗の被害にあったと虚偽の申告をしていたことについて、IOC=国際オリンピック委員会は規律委員会を設けて、ロクテ選手ら4人の処分を検討するため、事実関係の調査を始めることを明らかにしました。
IOCのマーク・アダムス広報部長は19日の定例会見で「ブラジル国民が憤慨していることは理解できる」と話し、4人の言動がブラジル国内で大きな論議を呼んでいることに理解を示していました。
一方、リオデジャネイロ大会の組織委員会は「ブラジルの国民は悲しみ、がっかりしていたが、謝罪を受け取りこれで終わりにする」としています。

米メディアは厳しく非難

この問題について、アメリカのメディアは19日付けの新聞の紙面などでロクテ選手らの一連の行為を厳しく非難しています。
このうち、有力紙の「ワシントン・ポスト」は、ロクテ選手について「極めて幼稚な32歳のスイマーだ」などと表現するとともに、ロクテ選手が発表した声明の内容についても、ブラジル側に対して「敬意がない」と酷評しています。
また、「ニューヨーク・ポスト」も「この問題の重荷に今後、耐えなければならないのは彼だけではない」と指摘し、ロクテ選手だけでなく、アメリカ人全体がこの問題で世界の人々の反感を買うことになりかねないと批判しています。