漫画原作者の猪原賽(@iharadaisuke)ですこんにちは。今回はタイトルどおり、新人漫画家向け新人賞・持込・投稿ポータルサイト「マンナビ」(β版)がオープンしたというマンガ業界的話題。ありそうでなかったポータルサイト、マンガ家志望者は必見かも。
◆ポータルサイト 「マンナビ」とは◆
◇ありそうでなかったジャンルのポータルサイト
世にウェブマンガサイト、マンガ・イラスト系SNS、そして出版社やマンガ雑誌の公式サイトはあふれていますが、これからマンガ家になりたい! という人がアクセスすべき情報はそうしたサービス・サイトごとに分散していました。自分のところだけにヒット作を生む将来の大作家を抱えたい……出版社も運営会社も当然これまでそう考えてきたはず。
またマンガ家志望者にしても、(週刊少年ジャンプなど特定のマンガ誌しか眼中にないです、という人は別にして)これだけマンガのジャンル、雑誌の種類、そしてさらにWEBコミックサービスなどが林立すると、さてどこに持ち込めばいいのやら……と悩んでいる人も多いのでは?
新人マンガ家やマンガ家志望者を支援する「トキワ荘プロジェクト」さん*1が、これまで10年間の支援活動からさらにマンガ業界に踏み込んだ、新しい取り組みを始めました。
それが今回紹介する「マンナビ」です。
「マンナビ」は、マンガ家志望者が持ち込むべき出版社・編集部を見つけるべく、自ら探して発見できる「マンガの新人賞・持込・投稿」の情報ポータルサイト。
出版社や編集部の垣根を超え、こうした情報を一箇所に集約する画期的なサービスはこれまで無かったんじゃないでしょうか*2。
◇このマンガポータルサイトがすごい!
<マンガ賞検索ができる>
「マンナビ」では、
- 雑誌ジャンル
- 出版社
- 種類(後述)
- 締切日
などの項目を選んで、新人マンガ賞を検索することが出来ます。
ヒットした「マンガ賞」では、〆切や応募方法が閲覧できます。
- 大型(年1回の大型賞/週刊少年ジャンプの手塚賞など)
- 月例(月1回の賞/各誌月例賞など)
- 定例(四半期に1回などの定期的な賞)
- 特別(特別な応募要項のある賞/りぼん小学生まんが大賞など)
と、種類も分類されており、いつの何の賞を狙って応募作を描くか、応募の参考になるでしょう。
<持ち込み情報も検索可能>
同様にジャンルや出版社から検索し、持ち込み情報も探すことが出来ます。
なかなか勇気の出ない持ち込みですが、問い合わせ方法から出版社の地図まで表記されており、ハシゴ持ち込みの予定も立てやすいかも?
<情報は各誌編集者が更新>
そうした投稿・持ち込みに関する情報は、まとめようと思えば各出版社から情報を引っ張ってきてまとめることもきっと可能なはず。しかし単なるまとめサイトと違うのは、「マンナビ」の情報は各社・各誌の編集者が直接情報を編集するという点。公式サイトと同じ公式情報が「マンナビ」には記載される……はずですw
◇ご注意!「マンナビ」は現在β版運用中
「はずです」と書いたのは、まだ「マンナビ」はオープンしたばかりのβ版だからです。現在正式な情報が載っているのは一部の出版社・編集部に限りますし、まだサムネイルも用意されていない箇所も多いです。
が、近々予定されている正式オープン後は、情報がどんどん足されていくはず。「マンナビ」編集長・菊池さんは、8月16日付でこう語っております。
現時点で、80ほどの新人賞、150ほどの雑誌・媒体情報などをこちらで掲載していますが、一部の新人賞、雑誌、編集者情報など、編集者ご自身が少しずつ情報を足していってくださっています。
これから、9月に開催するトキワ荘プロジェクト最大のイベント、出張編集部@京まふに向けて、持込に来る持込者向け情報を充実させていきながら、新人漫画家にとって実際に役に立っていく形を構築していきたいと考えております。
(新人・若手マンガ家の「死ぬほど努力しているのに報われない」をなくしたい!の活動報告 - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)より)
「マンナビ」がマンガ家志望者の有用なポータルサイトとして育つよう、もう既にキャリアを重ねた漫画原作者という立場ではありますが、見守って行きたいということで、今回ブログでお知らせした次第。
では、興味のある方、【コチラ】から「マンナビ」へどうぞ。まだβ版ですが、ブックマークだけでもしておいてみてくださいね。(▼さすがβ版、アイキャッチ画像等、OGP設定もまだまだまだのようでw)
◇注目!「編集者から探して漫画を持ち込む」検索
最後にひとつだけ。もう一度上の画像を見てみてください。「『編集者』から探して漫画を持ち込む」という検索が可能ですよね。これ、マンガの持ち込みに革命を起こすかもしれません。
なぜなら、本来マンガを編集部に持ち込むと、マンガ家志望者は編集者を選べないのです。たまたま当番だった編集者に自分のマンガを見せることになり、もし編集者が気に入ればそのまま担当に付く、ということが持ち込みの常です。
その「たまたま」が、あなたと相性が悪い編集者だったら? 他に当たればデビュー出来た原稿をクソミソに言われ、しょんぼり帰ってお蔵入りにしてしまうかもしれない。よしんば担当に付きプロへの道が拓けたとしても、作品の方向性や打ち合わせのスタイルが合わず、消耗してしまうかもしれない。
じゃあ、自分の好きな作品の担当編集者を持ち込み指名できればなあと思うことはマンガ家志望者の必然かと。
先日、漫画の編集者M氏が、こういうエントリーをアップしていました。
新人漫画家へ/編集者の役割とはいったい何?|漫画の編集者Mのブログ
会社や雑誌、サイトだけで選ぶ時代から一歩突っ込んで、担当編集者を選ぶ日が来ると思います。
編集者指名制時代の到来?
デザイナーは、基本的に指名でお仕事してますから。
そんなに新しいシステムではありませんね。
フリーランスの編集者も、今よりも増えるでしょう。
時代は変わりますよ。
「マンナビ」はまだβ版であり、詳細はわかりませんが、サイト内で「編集者」とされているのは、各誌の編集部総合的な名前です。
▲「編集者紹介」の欄。現在はサイト編集長の菊池健さんのみ記名。ほかは「編集部」とひとくくりになっています
正式稼働のあと、「編集者」が「個人」になった場合、「編集者から探して漫画を持ち込む」検索欄が活きて来る。今は「編集部」という形でお願いしているが、記事情報を更新する記名の編集者が現れ、またフリーランスの編集者も参加するようになることを想定し、「編集者から探して漫画を持ち込む」検索欄を用意しているのでは? と私は見ています。
すると、今回の私のエントリーは、何もマンガ家志望者・新人に限らず、編集者との関係に悩んでいるプロ作家や、出版社・雑誌に縛られないフリーランスの編集者や、編集プロダクションにとっても、もしかしたら有用な話なのかもしれません。
上掲の漫画の編集者Mのブログと合わせて閲覧し、考えてもらえれば幸い。
◇執筆者・猪原賽の紹介
漫画原作者をしています、猪原賽(いはら さい/@iharadaisuke)です。
つい先日『放課後カタストロフィ』(漫画・平尾リョウ/月刊ヒーローズ連載)、『ウミナシケン!』(作画・諫山メガネ/comico PLUS連載)が相次いで連載終了。
現在連載中の仕事は『仮面ライダークウガ』(原作・石ノ森章太郎 脚本・井上敏樹 漫画・横島一 企画白倉伸一郎)の構成スタッフです。
オリジナルの新連載に向け、これまでの関係編集部や作家さんと企画を進めているところですので、こちらのブログの読者になっていただいたり、Twitterをフォローしていただけると。
【近著】
▲9月5日に最新刊が発売されます。