日本の政治報道はいまだ「ハート前」なのか
鳥越氏がウソをついているかどうかは外部からは分からない。「事実無根」という表現を額面通りに解釈すれば、一切ウソをついていないということなのだろう。
ならば「事実無根」を信じて有権者は投票すべきなのか? それとも文春報道に真実が含まれると信じて投票すべきなのか?
はっきりしているのは、投票日が31日に迫っており、このままでは有権者は候補者について十分な情報を提供されない状態で態度を決めなければならないということだ。
メディアは候補者についての情報を提供する役割を担っているとはいえ、あまりにも時間的制約がある。この意味では文春が見切り発車的な特集を組むのは仕方がない。
仮に鳥越氏が都知事に選ばれた後に文春報道に真実が含まれていることが明らかになったら? この場合、同氏はウソをついていた格好になる。リーダーとしての人格を問題視され、再び都知事選のやり直しになるかもしれない。
ちなみに、大新聞やNHKなど主要メディアは、産経新聞を除いて文春報道を実質的に無視。鳥越氏側が文春編集部に抗議文を送ったり東京地検に刑事告訴したりした事実を短く伝えているだけだ。女性スキャンダル疑惑をあえて避けているように見える。
取るに足らない話だから疑惑には触れないという方針なのか。それとも文春報道は事実無根だから無視してかまわないと考えているのか。どんな編集判断をしているのか、紙面からはまったく見えてこない。
いずれにせよ日本の政治ジャーナリズムはまだ「ハート前」の世界にあるようだ。
著者:牧野洋
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