三百億円の損害を出した株の誤発注事件を追う「猿の話」。
ひきこもりを悪魔祓いで治そうとする男の「私の話」。
別々の人物の視点で話は進んでいき、やがて交差をする二つの物語は、まさかの展開を迎える。
孫悟空からユングまで登場するカオスな小説。
伊坂幸太郎による、夢の中のような物語を味わうことのできる物語となっている。
「SOSの猿」のここが面白い
株の誤発注事件を追う「猿の話」
五十嵐真は、とあるシステム開発関係の会社での品質管理部門で仕事をしている。
会社で作ったプログラムにバグ等があると、そのバグが発生してしまった原因追求や再発防止策を講じるのが主な仕事となる。
そんな彼の元に、会社が過去に納入したシステムによって株の誤発注事件が発生したとの連絡があった。
株の誤発注により一瞬にして300億もの大金を失ってしまったという。
システムに問題はなかったのか?
五十嵐は調査を開始した。
エクソシストが奔走する「私の話」
遠藤二郎は悪魔払いの技術を習得して人助けをしている、いわゆる”エクソシスト”である。
この力はイタリアへと留学時代に偶然習得したものだった。
そんな彼が知り合いから、息子の引きこもったのをなんとかしてほしいとの相談を受ける。
引きこもりに悪魔払いの力は有効なのか?
二郎はこのエクソシストの力で、少年の引きこもりを直そうと動き始めた。
交差する二つの物語
『SOSの猿』の物語の進み方としては、「私の話」と「猿の話」が交互に独立した話としてまずは展開される。
そして、この二つの話がある程度進んだ段階で交差するのだが、この交わり方にもちょっとした仕掛けが隠されている。
ユングが登場してみたり、孫悟空が登場してみたりとカオスな物語となっていて、読んでいて不思議な気分に誘われる。
通常の伊坂幸太郎の小説とは、少し変わった雰囲気の本である。
終わりに
というわけで、『SOSの猿』を紹介した。
株誤発注事件を追うシステム品質管理担当者とひきこもりを直そうとするエクソシストの二つの話が展開される。
全くバラバラで関係のなかった話が、突如として交わり合いひとつの物語となる。
伊坂幸太郎による作品で、彼の通常の小説とは違った雰囲気が漂う話となっている。
少し変わった”伊坂幸太郎作品”を読んでみたい人には、よい小説となっている。