News Up メダル取れなければ「税金のむだづかい」か?

News Up メダル取れなければ「税金のむだづかい」か?
日本人のメダルラッシュにわくリオデジャネイロオリンピックですが、残念ながら結果を残せなかった選手に対して「税金のむだづかいだ」などと批判する意見が、ソーシャルメディアに多く投稿され議論になっています。しかし、そもそもオリンピックにいくら税金が使われているのか、はっきりした数字は公になっていないことを皆さんご存じでしょうか?
今回、陸上の女子マラソンで14位でゴールした福士加代子選手は、試合後のインタビューで、メダルを取ることができなかった悔しさや応援への感謝のことばを述べたあと、最後に「オリンピックのマラソンは、出るもんだね。楽しいよ。苦しいけど」と話しました。
この最後の部分について、ツイッターなどで「税金でバカンスに行ったのか」などと批判が相次ぎました。
ほかの競技で残念ながら結果を出すことができなかった選手たちに対しても批判はあり、中には「税金のむだづかいだ」「国民の税金で来ていることを忘れるな」といった意見も見受けられました。

「税金でバカンスに行ったのか」

今回、陸上の女子マラソンで14位でゴールした福士加代子選手は、試合後のインタビューで、メダルを取ることができなかった悔しさや応援への感謝のことばを述べたあと、最後に「オリンピックのマラソンは、出るもんだね。楽しいよ。苦しいけど」と話しました。
この最後の部分について、ツイッターなどで「税金でバカンスに行ったのか」などと批判が相次ぎました。
ほかの競技で残念ながら結果を出すことができなかった選手たちに対しても批判はあり、中には「税金のむだづかいだ」「国民の税金で来ていることを忘れるな」といった意見も見受けられました。

「おそろしい議論だ」

こうした意見に異を唱えているのが、元オリンピック選手の為末大さんです。
ツイッターで「税金を投入したのにメダルが取れなかったという議論のおそろしいところは、税金が使われていない人間などいないわけだから、すべての人が税金に見合うリターンを国家にもたらしているのかという発想になる」と意見を述べたところ、5000回以上リツイートされ、共感が広がりました。
為末さんに改めて考えを聞いたところ、「例えば100枚セットの宝くじを買うようなもので、お金をかけたから全員が必ずメダルを取れるというものではありません。選手の義務は一生懸命頑張るところまでで、その結果、メダルを取れなかったことを責めても、誰もハッピーにならないと思います。一方で、オリンピックのために税金をどの程度使っていくかは、広く議論すべきことだと思います」と述べました。

公になっていないオリンピック予算

そもそもオリンピックにいくらの税金が使われているのか。
スポーツ庁の担当者に尋ねたところ、「オリンピック関連の予算は多岐にわたるため、今回のリオデジャネイロオリンピックにいくら使われたかという数字を出すことは難しい。数字が一人歩きする懸念もある」との回答でした。
例えば、選手の渡航費用などに使われる「派遣費」についても、JOC=日本オリンピック委員会は、今回、日本選手団601人を派遣しましたが、かかった額は公表されていません。
派遣費は国からJOCに払われる補助金から出ており、リオデジャネイロオリンピック開催前の昨年度の補助金が2億円余りで、今年度が2.9億円ですから、その差額の約8000万円以内か、などと類推することしかできません。

選手の強化やサポートに120億円余り

よく例に挙げられる「選手強化費」については、公になっています。
スポーツ庁から日本スポーツ振興センターに「運営費交付金」という形で支払われたあと、各競技団体に分配されて、強化合宿や海外遠征、コーチの人件費などに使われます。今回のオリンピックとパラリンピックで合わせて今年度は87億円となっています。
さらに、医学、栄養学などの科学的側面から選手をサポートする「ハイパフォーマンスサポート事業」として、今年度は35億円余りが計上されています。
今回、日本は、ロンドン、ソチ大会に続いて、選手のコンディションを整える「ハイパフォーマンスサポートセンター」を現地に設けました。
センターには、トレーニングルームのほか、疲労回復を促す炭酸風呂や和食を提供する食堂、対戦相手の試合映像を分析する設備なども用意されています。

急増する予算の透明度は

選手強化費は、昨年度は74億円だったものが今年度は87億円。政府が、東京オリンピック・パラリンピックでは過去最高の金メダル数を獲得するために、戦略的に選手強化に努めるという方針を掲げたこともあって、選手にかける費用は増額の傾向にあります。
オリンピックと政治の関係に詳しい奈良女子大学准教授の石坂友司さんは「ロンドン大会でイギリス政府は選手強化費を大幅に増加させて、金メダル獲得数で3位になりました。しかし、いったん増やした強化予算をどの程度絞るかという課題に直面しています。東京大会にどの程度の税金を投入するべきかについて、議論できている状況とはいえません。予算を増やして仮にメダル数などの結果が伴わなければ、選手たちがさらに厳しい批判にさらされることになりかねない」と指摘しています。
予算の透明性を高めたうえで、今回のオリンピックにかかった費用と4年後の東京大会にかけるべき費用について議論を深めていく必要があります。