圧巻ボルト 夢の「18秒台」本気で狙った
リオデジャネイロ五輪第14日の18日(日本時間19日)、陸上男子200メートルで優勝したウサイン・ボルト(ジャマイカ)。
フィニッシュで珍しく派手なパフォーマンスを入れなかった。タイムを見ると、思わず天を仰いで顔をゆがめた。それでも「五輪は最後」なのが本当に惜しいぐらい、強さが際立った。ボルトが男子200メートルを制し、3大会連続で100メートルとの短距離2冠を達成した。
最大のライバルである昨年の世界選手権銀メダリスト、ジャスティン・ガトリン(米国)は足首が痛み、準決勝で姿を消していた。トラックには雨粒も落ちていた。そんな状況の中、196センチ、95キロの巨体を奔放に揺らしながら、人類最速のスピードに乗った。コーナーを抜けた時点で先頭。新たな伝説の1ページは開けていた。あとは引き離すだけだった。
天を仰いだのは、悔いを残したから。自らが保持する19秒19の世界記録を破れなかった。ボルトは元々、この種目で競技人生を始めており、思い入れも強い。最大3メートルにもなる雄大なストライドが一番の魅力だが、そのストライドで減速することなくカーブを駆ける技術も巧みだ。
一方で、今月21日で30歳になるボルトは、夢の「18秒台」へのチャンスが残り少ないことも自覚している。だからこそ、レース前から強い意欲を示し、本気で記録を狙った。
レース後のボルトは伝説のボクサー、モハメド・アリやサッカーの王様ペレの名前を挙げ、「偉大な人たちの一人になろうとしている。リオ五輪後、同じ立場に立っていたい」と語った。3大会連続3冠にも王手で、19日の400メートルリレーを制すれば、米国のスーパースター、カール・ルイス(米国)と並ぶ金メダル9個となる。【新井隆一】