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■作家・柴崎友香さん(42)

 15年前に亡くなった祖父は戦時中、広島市の現在の原爆ドームの近くでコックをしていたといい、原爆が落とされる2カ月ほど前まで周辺に住んでいたそうです。祖父がそこにいたままだったら、私はここにいないでしょう。

 私は大阪で生まれ、育ちました。私が使っていた駅の近くでは終戦前日に空襲がありました。一日違いで死ななければならなかった人たちと、祖父のことがつながりました。私が生きていることと戦争が関わっているとも感じました。「わたしがいなかった街で」(新潮社)は、そういう気持ちで書いた小説です。

 いまの社会のあり方、まちの構造、人間関係も戦争の影響を受けていないはずはないし、今も別の場所で戦争は起こっています。自分は戦争を体験していませんが、体験していないからこそ、「なぜ、そんなことをするのか」という疑問を強く、ストレートに持てるところもある。

 今はテレビなどで戦争の映像が多く見られますが、単に見るだけでは「消費している」とも感じます。人が戦争で苦しい思いをしている様子を一方的に見ていいのか、という気持ちがあります。見たからには、何かを考えるなり、動いてみるなりしなければ、と。

 「終戦から70年」って聞くと…

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