日本企業の大株主になったGPIF
公的年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、投資先企業との定期対話を始めるという。
筆者は、大本の制度設計として、GPIFあるいはETF(上場投資信託)の買い入れ増額を発表した日銀のような政府機関が民間企業の大株主になることに反対なので、「喜ばしい」とは言えない。しかし、彼らが大量の株式を持ってしまった現実を踏まえると、株主権の空洞化が起こることは不健全なので、対話に「全く反対」と言いたいわけでもない。
現在の東証一部の時価総額はほぼ500兆円なので、GPIFが日本株を約30兆円保有することは、GPIFが日本企業の6%の株式を保有する大株主であることを意味する。6%も株式を持たれている株主がいると、その動向によって企業経営が影響を受けることは十分あり得る。企業の側が「対話」を通じて、GPIFの腹の内を探っておきたいと思うことは自然だ。
ちなみに、日銀も、保有株式が2%に届くのは時間の問題だし、その後も毎年1%程度の株式を買い増しして、実質的な大株主としての存在感を大きくする方向だ。当面、金融緩和の縮小は円高を招き、日銀が目指すデフレ脱却を遠のかせるので、ETFの買い入れ額を縮小できる時期は見通せない。また、債券であれば保有していればいずれ満期が来て償還されるが、株式の場合は、日銀自身が売却しない限り株式保有は減らない。
GPIFは大株主として振る舞う覚悟を決めつつあるように見えるが、日銀はどうするつもりなのだろうか。日銀のETF買いが、株価形成に影響を与えていることに対する見解とともに、黒田総裁がどう考えているのか、聞いてみたいところだ。