連合広告明石版記事バックナンバー:親学講座 |
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質問 「親学」ってなんですか?
回答 「親になるための学び」「親としての学び」のことです。
わが国は“できちゃった婚”の多い国であり、内閣府の最近の調査でも「子どもを持つ必要はない」と考える20代は63%、30代は59%、「結婚は個人の自由だからどちらでもよい」が70%を占めています。中高生などが「親になる」とはどういうことか、結婚して子供を生み育てる喜びや幸福の価値などについて学ぶのが「親になるための学び」です。
これまでの子育て論は、子供にかかわる方法論に重きが置かれてきましたが、「親学」は、親が変われば子供も変わるという「主体変容」を基本理念としています。
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教育の責任を自分以外の何かに転嫁しないで、親自身が自分の子供観、幸福観などを見直し、親心をはぐくみ、親自身が成長する「親育て」こそが子育て支援の中核的課題といえます。
「親学」の基本的な考え方の第1は、教育の原点は家庭にあり、親は人生最初の教師として、教育の第一義的責任を負うことを深く自覚することです。
第2は、胎児期・乳児期・幼児期・児童期・思春期という子供の発達段階に応じ、家庭教育で配慮すべき重点は異なることです。
第3は、子供の発達を支援するためには、母性的なかかわり(慈愛)と父性的なかかわり(義愛)が必要であることです。
(明星大学教授、親学推進協会理事長・高橋史朗)
産経新聞(平成22年1月18日)より転載
本文中の“”は編者による
『連合広告明石版第8号(2011年4月号)掲載』 |
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質問 「親学」は価値観を押しつけ家庭教育に介入するのでは?
回答 それは誤解です。「親学」は子供の発達段階に応じて、母性的な慈愛と父性的な義愛によって、子供の発達を支援し、保障しようとするものです。
価値観には時代とともに変わらない「不易」な価値と、時代とともに変わる「流行」の価値があります。例えば「虚言をいふ事はなりませぬ」「卑怯(ひきょう)な振舞いをしてはなりませぬ」「弱い者をいぢめてはなりませぬ」「ならぬことはならぬものです」と定めた会津藩の藩校・日新館の教えは、いつの時代でも義愛によって教えねばならぬものといえます。
渡辺京二著『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)によれば、江戸末期に来日した欧米人たちの多くが日本は「子供の楽園」と表現し「日本の子供ほど行儀よく親切な子供はいない」と述べています。
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そして、著者は「礼節を備えた子供たちは一体どこへ消えたのか?」「それはこの子達をそのように育てた親達がどこへ消えたのかと問うことにひとしい」と指摘しています。
日本の子供が礼儀正しかったのは江戸町方で組織されていた江戸講や寺子屋などで、親と地域が一体となって「江戸しぐさ」を教えてきたからです。
「親学」は「親育ち」を支援し、親が手本を示すことによって、子供の発達を支援しようとするものです。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年2月1日)より転載
『連合広告明石版第9号(2011年5月号)掲載』 |
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質問 今なぜ、「親学」が必要なのですか?
回答 時代とともに社会の在り方が大きく変化し、「地域・家族の絆(きずな)」が薄れ、親を支えてきた祖父母や地域社会の子育て支援力が低下したために、親の負担が増大して孤立化し、その結果、親心を喪失し、「親力」が低下しているからです。
有識者でつくる「日本の教育を考える10人委員会」のネット調査によれば、公立小中学校の教員の84%が「保護者の過度な要求への対応」が負担と答えており、最も重荷になっていることが判明しました。
保育士のアンケートでも、「10年前と比べて保護者の要求が強くなったと感じる保育士が約9割」を占めることが明らかになっており、親の責任感や自覚が不足した未熟で自分勝手な親が増加の一途をたどっています。
このような社会と親などの環境の変化が子供の「脳内汚染」をもたらし、睡眠や食生活など子供の基本的生活習慣の乱れが生じています。
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家庭における愛着形成が不足しているために「他者に共感する力」が弱まり、子供の対人関係能力や社会的適応能力が育っていません。また、自制心や規範意識、コミュニケーション能力が低下しています。
このような状況を克服するためには、親として必要なこと、大切なことは何かについて学ぶ「親になるための学び」「親としての学び」すなわち「親学」が必要なのです。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年2月14日)より転載
『連合広告明石版第10号(2011年6月号)掲載』 |
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質問 親学は何を目指しているのですか?
回答 親学の目的は、「親の成長を通して子供の心を育てること」です。子供の心を育てるにあたって、親が心すべき最も大事なことは、「親自身が変わり、成長しなければならない」ということです。これまでの子育て支援策は、保育サービスの量的拡充や働いている親への経済的支援に主眼が置かれてきましたが、親の人間的成長を促す「親育ち」支援が何よりも大事です。
子育てに伴う困難や問題は、親と子が「共に育つ」ために与えられたものとプラス思考で受けとめることが大切です。北海道家庭学校(北海道遠軽町の児童自立支援施設)の教会には「難有」と書かれた額が掲げられていますが、「難が有るから、有難い」という感謝の心が育つのです。マイナスと見える問題に対して、プラス思考で臨む心の姿勢や生き方の転換を「観の転換」「主体変容」と親学では表現しています。子供の健全な成長、発達と将来の幸福を心から願う「親心」の涵養を親学は目指しています。親心の特性である慈愛(母性)と義愛(父性)の調和ある涵養が大切です。
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親の子供観、人生観、幸福観などが変われば、子供が変わり、地域社会が変わり、学校も国も変わります。子育ては本来、親にとって喜びであり楽しいものです。子育てで孤立している母親を支える父親の育児への協力が必要不可欠といえます。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年3月1日)より転載
涵養(かんよう)…水が自然に染み込むように、無理をしないでゆっくりと養い育てること。
『連合広告明石版第11号(2011年7月号)掲載』
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質問 発達障害を予防する子育ての在り方とは?
回答 金子保・片岡直樹・澤口俊之著『発達障害を予防する子どもの育て方』(メタモル出版)によれば、発達障害は人間性知能(HQ)の発達障害が主な原因で、「乳児期や幼児期での環境が良ければ、障害として現れないか、現れても健常範囲」であるといいます。
脳生理学研究者の澤口俊之氏は、生後2歳ごろまでの乳児脳の段階なら「発達障害は予防できる」「発達障害の改善は8歳ごろまででなければ難しい」と指摘しています。
では、予防のためには一体何が必要なのでしょうか。それは昔から日本人の誰もが実行してきた伝統的な子育ての在り方を取り戻すことなのです。
40年以上、発達障害の予防と早期支援に取り組んできた、さいたま市教育センターの金子保所長は、『2歳で言葉がない子・増えない子「様子を見る」のは危険です』(メタモル出版)において、同様に指摘しています。
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発達心理学や脳科学の最新の科学的知見によって、日本の伝統的な子育ての意義が創造的に再発見されています。親学推進協会はDVD「子育ての再生を目指して〜科学的知見に基づく子育てのポイント〜」を作成し、そうした知見の啓発活動を行っています。科学的知見に基づく親学を普及することによって、さまざまな効果が期待できるのです。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年3月15日)より転載
『連合広告明石版第12号(2011年8月号)掲載』
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質問 日本の伝統的子育てとは?
回答 子供の発達段階に応じた親のかかわり方について、日本人は「しっかり抱いて、下におろして、歩かせる」と語り継いできました。
「しっかり抱いて」は、親に甘えて依存するという、母子の「愛着」形成の重要性を表しています。「下におろして」は、愛着からの「分離」、「歩かせる」は、「自立」を意味しています。「愛着」が慈愛の母性的かかわり、「分離」が義愛の父性的かかわりといえます。「3つ心6つ躾(しつけ)9つ言葉12文(章)15理で末決まる」という江戸時代の格言もあります。
千利休が茶道の心得を百首の和歌に託したといわれる「利休道歌」の中に、「規矩(基準、物差し、の意)作法守りつくして破るとも離るるとても本を忘るな」という「守破離」の精神を詠んだ和歌があります。 「守」とは、師の教えに従い、師の形を学び、形の「格」に至る、「基本」の型を体得する段階、「破」とは、自分の特質を加味して「応用」していく段階、「離」とは、自由に自分独自の個性を「創造」していく段階といえます。
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これは、「他律」から「自律」、「自律」から「自立」という子供の発達段階に応じた伝統的な子育ての在り方にもあてはまります。
「3つ子の魂百まで」「可愛くば2つ叱りて3つほめ5つ教えて良き人にせよ」という言い伝えも大切にしたいものです。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年4月5日)より転載
※守破離…しゅはり
『連合広告明石版第13号(2011年9月号)掲載』
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質問 子育ての科学的知見とは?
回答 学術研究に基づく幼児期の子育ての重要性が明らかになり、政府機関や民間の報告書などにも反映されています。
3歳までの間が脳・神経系や情緒・生活習慣の発達上重要な時期であり、この時期に「誰がどう世話をするか」は重要な問題である(日本学術会議「子どものこころ特別委員会」報告書)。
子供が3歳になるまでに成人としての価値観や社会的な行動の基礎が築かれる。この時期に受ける愛情に満ちたケアや養育、そうした大事な経験がないことが、幼い心に消すことができない刻印を残すことになる(ユニセフ「世界子供白書」)。
共感・誇り・恥などの感情や自己コントロール能力の芽生えは2歳頃までに現れる(文部科学省「子供の徳育に関する懇談会」報告書)。
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脳の発達には「臨界期」があり、自己抑制能力や共感能力を司る大脳前頭葉の発達は、3歳までが臨界期である(國米欣明氏著『その子育ては科学的に間違っています』三一書房)。
自己抑制力の中枢である「眼窩前頭皮質」の発達の臨界期は3歳までであり、特に出生少し前から生後2歳頃までが最もよく発達する時期であることが、アメリカの研究グループによって明らかになった(同)。
情動は、生まれてから5歳くらいまでにその原型が形成されると考えられる(文部科学省の情動に関する検討会報告)。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年4月19日)より転載
『連合広告明石版第13号(2011年10月号)掲載』
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質問 児童虐待の根因は?
回答 アダルトチルドレンの問題を指摘したことでも知られるマリー・ウィンは、『子ども時代を失った子どもたち―何が起っているか』で、子育てを大切な義務と考え、子供のために犠牲になる親はいなくなったと述べています。このような時代の変化に伴う親心の喪失という根本問題が児童虐待の背景にあります。
児童虐待の根因は、親の自然的保護の後退と衰弱にあります。児童の権利には、保護と自立という2つの法観念が含まれており、前者は19世紀の産業化の中での親の保護能力の弱体化、後者は20世紀後半の脱産業社会における家族の崩壊にその源を発しています。このような歴史的視野に立つとき、親子の人間関係が、法の支配により崩壊に拍車がかかったという歴史の教訓に学ぶ必要があり、親の保護能力の回復による児童虐待の防止が急務といえます。
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4月22日に衆議院青少年問題に関する特別委員会に参考人として意見を述べた折に、児童虐待にかかわる親権の一時停止について質問を受けました。法は人間関係を破壊することはできますが、強制によって人間関係を形成することはできません。
親権を行うにあたっては、児童の成長発達権を保障することが最も重要であり、子供の発達段階とそれに応じたかかわり方についての科学的知見や情報を提供することが、児童虐待防止法第4条に定める「国及び地方公共団体の責務」といえます。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年5月3日)より転載
『連合広告明石版第13号(2011年11月号)掲載』
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質問 「つながり格差」とは?
回答 大阪大学などの研究グループが、平成19年の全国学力テストと昭和39年の学力テストを社会環境を加えて分析した結果、「学力を左右する要因として、離婚率、持ち家率、不登校率の3指標の比重が高まっている」ことがわかりました。
これらは、「いずれも家庭、地域、学校での人間関係の緊密さに関連する指標」で、地域の格差や親の年収などの経済格差よりも、「人間関係の『つながり格差』が学力を左右する傾向」にあることを示しています。ミシガン大学が2000年に実施した「世界価値観調査」では、世界で最も幸せな国はナイジェリアでした。この結果について『ニューズ・ウィーク』は、「逆境が人間関係を深めているからではないか」と分析しましたが、人間関係の絆の温もりが「子供の幸福」につながっていることも明らかになっています。
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一方、ユニセフのイノチェンティ研究所が2007年に27カ国の15歳を対象に実施した「子供の幸福度」調査によれば、「孤独を感じる」と答えたのは日本が3割で断トツの1位、2位は1割のアイスランド、他の25カ国はすべて1割未満でした。
これは、わが国が人間関係の絆が最も希薄化している結果といえます。わが子に輝宙(ぴかちゅう)、愛猫(きてぃ)と名付けた親がいますが、女の子の夢の変遷調査で「いいお母さんになりたい」が消えたのも当然の結果といえるでしょう。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年6月20日)より転載
『連合広告明石版第16号(2011年12月号)掲載』
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質問 子供の範となるにふさわしい大人になるには?
回答 第二次反抗期と重なる思春期に限らず、大人から見ればまだ物事をよくわかっていないように見える学童期でも、少なからず子供は大人の理不尽な言動に傷つき、反発を覚えています。子供は、大人が考える以上に大人の言動をよく見ており、理不尽さや狡(ずる)さなどにいらだちを覚えているのです。そしてそれは、時に暴力を伴う反抗となり、あるいは引きこもりとなる。まず私たち大人は子供時代を思い起こし、
子供目線で子供の範としてふさわしい生き方をしているかどうかを省み、改める必要があります。
まずどんな長所、短所があるのか、あるがままの自分をよく理解することが大切です。もとより長所は生かし、短所には注意を払わねばなりません。また、自ら反省すべき点は素直に反省し、謝る必要があれば相手が誰であろうと率直に謝り、改めるべきは改める。さらに自分なりの夢をしっかりともってたえず努力する。どんな些細(ささい)な夢であっても目標に向かって懸命に歩む姿は子供に感銘を与えるはずです。
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一人前の社会人として人間力を高めること。また、大人としてしっかりとした物の見方、考え方、すなわち人生観や人間観などをもつことも大切です。
結局、人間としての成長を求めて努力することが子供の範となることにつながるといえます。
PHP総合研究所教育研修部部長・親学推進協会常務理事 大江弘
産経新聞(平成22年8月15日)より転載
『連合広告明石版第17号(2012年1月号)掲載』
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質問 不登校になった子供へのかかわり方は??
回答 子供が不登校になると、親は心配して「どうして学校へ行かないのか」という原因追及と、「学校へ行きなさい」という登校刺激を一方的に繰り返しがちです。しかし、これはかえって子供の心を閉ざし、精神的に追い詰めてしまうおそれがあるので要注意です。
不登校にはさまざまなタイプがありますが、どの場合でも父性的に厳しくかかわるよりは、まず母性的なかかわりを優先して、子供の行動を関心をもって見守り、子供の話をよく聴くという共感的な子供理解から始めることが大切です。不登校の本当の原因はわかりにくいものです。話し合いの中から子供の気持ちや状況を把握していくのです。
不登校の原因には、誘因(きっかけ)と要因(背景)があります。いじめ、非行、給食、発病、教師の発言などが誘因であれば、できるだけ早く関係者と連携を図って対応することが必要です。交友、神経症、学業不振、コミュニケーション能力不足などの要因については、その子の課題に応じて「じっくり」かつ「積極的」にかかわっていくことです。
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不登校=悪として、まずは登校させることが第一と考えず、母性・父性的関わりを適切に使い分けながら、最後は子供が自分の力で不登校という問題を克服できるような「自立」を目指すことが肝要です。
八洲学園大学客員教授
親学推進協会専務理事 大森弘
産経新聞(平成22年12月5日)より転載
『連合広告明石版第18号(2012年2月号)掲載』
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質問 外国での取り組みは?
回答 多くの国々で両親学校、母親学級、父母会などが開催され、またさまざまな工夫が凝らされた書籍やリーフレットなどを通じて、親の学習のための情報や気づきの機会が提供されています。それらはあるときは福祉の観点から、またある場合には教育や心理学の面から行われたりします。
まず目を引く取り組みとしては、ニュージーランドで実施されている、子供が自主的に遊ぶとともに母親がくつろぎつつ育児についても学べる「プレイセンター」が挙げられます。また米国では、ミズーリ州で開発された「教師としての親」プログラムや、アドラー心理学をもとに開発された「積極的で責任感のある子供を育てるための親の系統的訓練」プログラム、あるいは米国の心理学者トマス・ゴードン氏によって創案された「親としての役割を効果的に果たすための訓練」プログラムなどがあります。英国では、情報提供、スキルの学習、経験の共有、過去を振り返る機会の4つの要素で構成される「親教育」プログラムがあり、カナダでは、「完璧(かんぺき)な親なんていない」プログラムが広く実施されています。もちろん、これら以外にもいろいろな取り組みがあります。
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いずれにしろ親教育は、すでに一つの世界的な流れになっているといえるでしょう。日本も決してうかうかしているわけにはいきません。
PHP総合研究所教育研究部部長
親学推進協会常務理事 大江弘
産経新聞(平成22年7月4日)より転載
『連合広告明石版第19号(2012年3月号)掲載』
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質問 スキンシップ遺伝子って何ですか?
回答 先天性表皮水疱(ほう)症という難病について研究している大阪大学の玉井克人准教授は、「スキンシップにかかわる遺伝子が存在する」として、次のように指摘しています。
先天性表皮水疱症の子供は例外なく、他人を思いやる極めて温かい心の持ち主で、優しく、愛情豊かな成熟した心を持っており、誰も遺伝性皮膚疾患という難病を持って生まれてきたことを恨んでいません。
両親が毎日朝夕、1年365日、一生涯、水疱の一つ一つを消毒して丁寧に針で穴をあけ、水を抜き取り、軟膏を塗り、ガーゼで保護し、包帯を巻かないと細菌が感染して治療を困難にし、命を奪うこともあります。両親との豊富な肌の触れ合いが、子供の脳の情動領域のみごとな発達を促し、スキンシップ遺伝子が皮膚で心の受容体を産生し、触れ合う相手の愛情を脳に伝え、愛情豊かな心を育てる機能を持ちます。
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現代社会はスキンシップを遠ざける方向に急ピッチで進んでおり、その帰結として、子供たちの皮膚にある心の受容体刺激が極端に低下し、情緒不安定な子供の増加、性行為の低年齢化、中高生の売春などが広がっています。スキンシップ受容体数の減少した男女は接触による幸福が得られず、子供の誕生が激減して少子化が進行しているのです。親子のスキンシップ回復が急務です。
一般財団法人親学推進協会理事長・高橋史朗
産経新聞(平成22年5月17日)より転載
『連合広告明石版第20号(2012年4月号)掲載』
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質問 親子のコミュニケーションでまず大切なのは?
回答 親学で重要な「主体変容(まず親が変わる)」は、現実には親と子のコミュニケーションのあり方にかかわってきます。一般に親は自分の子供に対して自分の「分身」「血を分けた存在」という気持ちを持つものです。それは親としての自然な愛情かもしれません。しかし、この気持ちは親の子離れ、子の親離れを妨げ、子供は自分の所有物であり、思うように操れるものであるという「私物化」の考えにつながるおそれがあります。したがって親が子供に対し、子供の自立に向けての発達を支援することのできる適切なコミュニケーションをするためには、子供への見方・態度として、まず次に述べる3つに留意することが大切です。
第1に、親子は別の人間であるという見方です。子供は、親とは別の心で、自分なりに感じ、考え、悩んでいるのです。
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第2に、子供を肯定的に見ることです。どの子も長所、短所を持っていますが、生まれてきた以上、生きる意味や価値があるのです。
第3に子供に積極的な関心を持つことです。子供が自分への親の愛情や信頼を常に感じているかが問題です。マザー・テレサは言いました。「愛情の反対語は無関心である」と。これらは、結局は子供の生命や人格を尊重することであり、本当の親心につながるものといえましょう。
八洲学園大学客員教授
親学推進協会専務理事 大森弘
産経新聞(平成22年9月5日)より転載
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質問 親が子供の心を受けとめるには?
回答 前回で述べた子供への見方・態度を踏まえて、親の共感的な態度を育てることが大切です。
「共感」とは、子供の気持ちをあるがままに(評価せずに)感じとることです。「思いやり」の心ともいえましょう。
それは親が自分の尺度で子供を評価することでもなく、子供の気持ちに同一化してしまうことでもありません。一般の会話では、「共感」は「同感」、「同意」といった意味で使われますので、それとは違うことに十分注意する必要があります。
例えば、「××先生は嫌いだ」という子供の発言に対し、「そんなこと言ってはだめ!」とか「ママも××先生大嫌い!」といった答え方ではなく、「○○君、××先生が嫌いなのね」という答え方です。
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親がこのような態度で傾聴に努めると、子供の承認欲求(わかってほしいという気持ち)が満足され、本音を話しやすくなります。
共感的に心を受けとめるためのコミュニケーション・スキル(技法)というものがあります。一般的な用語では「あいづち」「繰り返し」「明確化」「指示」「質問」などです。本協会の親学講座では、これらについて具体的に学ぶことができます。「技法」というと難しい感じですが、理解した範囲で、とにかく実践していくことが大切です。
八洲学園大学客員教授
親学推進協会専務理事 大森弘
産経新聞(平成22年9月19日)より
転載

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