ほこりと血にまみれてぼうぜんと……シリア男児の写真に憤り
- 2016年08月19日
ほこりと血にまみれてぼうぜんとしているシリアの男の子の写真に、世界各地の人が憤慨して声を上げている。シリアの反政府組織「アレッポ医療センター」が17日、アレッポ空爆で破壊されたビルから救出され救急車に座る5歳のオムラン・ダクニーシュちゃんの写真を公表したのを機に、ソーシャルメディアで広く拡散された。
医師たちによると、オムランちゃんは頭の傷の手当てを受けた後、退院した。両親と3人のきょうだいも、大きなけがはなく、助かったという。
写真は、衛星テレビ局「アルジャジーラ・ムバシェル」のマフムード・ラスラン記者が撮影。「アレッポ医療センター」は、オムランちゃんの写真は17日深夜、反政府勢力支配地区のカテルジでの様子だと発表した。空爆はロシア軍によるもので、少なくとも3人が死亡、12人が負傷したと同センターは説明している。
オムランちゃんを映したビデオ映像では、医療関係者が破壊された建物からほこりと血にまみれた男児を運び出し、救急車の椅子に座らせる様子が映っている。その後、オムランちゃんはしばらく身動きせず、何も言わず、ぼうぜんとした表情で座っている。しばらくすると、血で濡れた顔を手で拭いてから、手のひらを見て驚いた表情をする。慌てて手のひらを椅子にこすりつける様子も映っている。
写真を撮ったラスラン記者はAP通信に対して、破壊されたアパートのがれきからオムランちゃんの両親のほか、1歳と6歳と11歳のきょうだいを救出したと話した。
「バルコニーから1人ずつ、次々に引っ張り出していた」とラスラン記者は言い、オムランちゃんを渡される前には、3人の遺体を次々に受け取ったと話した。
オムランちゃんの写真はすでに、昨年9月初めにトルコの砂浜に打ち上げられたシリア出身のアラン・クルディちゃんの写真を連想させると、ソーシャルメディアでは2人の男の子の写真を並べた画像が多数投稿され、共有されている。
オムランちゃんの写真を機に、ツイッターでは多くの人が終わらない戦闘に怒りの声を上げている。
「血に塗れてぼうぜんとする生存児童の顔は、アレッポの恐怖を物語っている」と、反政府勢力「シリア国民評議会」のアディブ・シシャクリさんはツイートした。
トルコを拠点とするコメンテーター、オマル・マダニアさんは、「ロシア軍機に狙われた少年が、アレッポの瓦礫の中から出てきた。これが、すべての国が団結して戦っているテロリストの姿だ」と書いた。
サウジアラビアのコラムニスト、ジャマル・ハショッギさんは「まるでアラブ連盟の首脳会議や国連安保理に黙って座り、何も発言しない連中をその沈黙とまなざしで非難しているかのようだ」と書いた。
かつてシリアの主要商都で工業都市だったアレッポでは、数週間前から政府軍と反政府勢力の戦闘が激化し、数百人が死亡している。
国連のデミストラ特使は、市内で身動きがとれずにいる市民200万人に人道援助を届けるための「人間性の表明」を訴えており、ロシアは早ければ来週にも48時間、攻撃を停止する用意があると回答している。
アレッポには今月初め以来、人道援助が届けられていない。
国連によると、約5年のシリア紛争で25万人以上が死亡し、1100万人が住む場所を失っている。
(英語記事 Battle for Aleppo: Photo of shocked and bloodied Syrian five-year-old sparks outrage)