どこの日本酒専門店にいっても似たような銘柄しか並んでない。というお話
2016/08/11こんにちは、最近は日本酒の専門店や居酒屋が増えてきていますね。しかし、そこに並んでいる銘柄をよく見てみてください。どこの酒屋、居酒屋も、似たような銘柄が並んでいることが多いと思います。また、旅行や出張で飲んで気に入った日本酒、都内の酒屋で買おうと思っても取り扱ってない。居酒屋でも全然見ない。なんて経験ありませんか。
日本酒は、約2万銘柄あると言われています。なのに、多くの酒屋や居酒屋に並んでるのは、約100銘柄程度なんです。これはなぜでしょうか。
今回は、日本酒の価値の作られ方、流通についてお話します。
まず、日本酒の価値はどう作られるのか?
そもそもみなさんがよく見る日本酒の銘柄は、どのような銘柄なのでしょうか。どんな理由で、表に出るようになるのでしょうか。私たちは、下記の2点だと考えています(ここではあくまで、現場に立って感じてることを素直に記載します)。
メディアや有名人の影響力
テレビや雑誌や著名人の影響力は大きいです。著名人が美味しいと言った、またはテレビに出た話題の銘柄だと、味に間違いが無いという真理が働き、多くの方は価値が高いと認識します。
ちなみにワインの世界では「パーカーポイント」という評価基準があります。これは世界で最も影響力のあるワイン評論家「ロバート・パーカー」が生み出した、100点満点で表すワイン評価方法です。高得点をつけられたワインは宣伝、広告なしで自然にワインが売れる、という現象が起こります。※日本酒の世界には、このような圧倒的な著名人はいません。
業界内での影響力
業界内の価値とは、業界で話題ということです。日本酒業界(嗜好品業界)は、政治力が強く、かつとっても狭い業界です。影響力の強い酒屋がある銘柄を扱うと、他の小さな酒屋も、その銘柄をこぞって仕入れるようになります。また仲の良い蔵が集まり、日本酒イベントを主催したりします。他にも業界でアイドル的な酒を作り上げたり、アイドルユニットのようなグループを作ったりして、話題を作ったりしています(一般の方にはほとんど認知されていませんが)。(※1)
また業界内には「鑑評会」や「コンペティション」など、日本酒の大会があります。こちらも一般の方にはほとんど認知されていませんが、ここで賞を取った銘柄が、業界で話題になります。ちなみにコンペティションも、全国の全ての日本酒の蔵元が参加しているわけではありません。(※2)
このように日本酒の価値は「メディアや有名人による影響力」「業界内での影響力」の2つから作られます。
※1:他にも、日本酒の蔵元はお米を仕入れるためキャッシュアウト型、かつ過大な在庫を持ち、設備投資型のビジネスのため、生産量の急増が難しいです。そのため量に限りができ、希少性が生まれたりします。
※2:業界を否定しているつもりは一切ありません。
日本酒の流通について
次に、日本酒の流通を見てみましょう。日本酒は一般的に、下記の流れでみなさまのもとに届けられます。
これをもとに、今回は消費者と直接繋がる、酒屋と居酒屋の事情、そして消費者の事業を見てみたいと思います。(※3)
※3:蔵元と酒屋の間に、酒問屋が入るパターンもあります。ただこの酒問屋は現在はほとんど機能しておらず、伝票上の役割のみとなっていることが多いです。そのため、酒問屋はここでは一旦無しにします。歴史のある酒問屋が、蔵元(銘柄)を囲ってるケースもあります。
酒屋の事情
まず、酒屋の事情です。結論から言うと、酒屋は早く売れる銘柄を仕入れます。
理由として、酒屋も商売だからです。一般的に、酒屋→蔵元への支払いは、末締め翌月末。すると約2ヶ月間、お金が日本酒に変わります。そうすると早く現金化できる銘柄を、店頭に並べるようになります。キャッシュが尽きたら、お店が潰れてしまうからです。
ではこの「早く売れる銘柄」とはどんな日本酒か。それが、先に説明した「メディアや有名人によって話題」「業界内での話題」に繋がります。そのため多くの酒屋は、雑誌やメディアで話題の銘柄、業界で話題な銘柄を仕入れるようになります。(※4)
実際、自ら全国の蔵元に足を運んで、全く無名の蔵元を開拓する酒屋は少ないです。なぜなら時間もかかるし、交通費もかかります(既に話題の蔵元に積極的に訪問する酒屋は多いです)。そのため確実に売れるし間違いない、メディアまたは業界で話題の銘柄を仕入れるようになります。
もちろん時間をかけて、自ら新しい蔵元を常に発掘をしている酒屋もたくさんあります。一概には言えません。
※4:蔵元が酒屋を選ぶことも多々あります。理由は2つあり、1つは保存管理の面、もう1つは安定購入の面です。俗にいう、特約店。こちらは長くなりますので、別の記事で紹介します。
居酒屋の事情
結論から言うと、ほとんどの居酒屋は、酒屋頼みです。
居酒屋も商売です。お客さまが注文してくれる日本酒を、仕入れる必要があります。お客さまが注文しない銘柄は、損をしてしますので、仕入れたくありません。また接客するスタッフは、末端のアルバイトスタッフも多く、全てのスタッフが日本酒を知っているわけではないことも多いです。
そのため、お酒のプロの酒屋がおすすめしてくれる日本酒を揃えれば失敗するリスクも少ないため、酒屋頼みの居酒屋が多くなります。「今は日本酒が盛り上がってるから」と、あまり日本酒に詳しくないけど、取り扱うお店も増えています。
もちろん日本酒にこだわった専門店は、自ら蔵元を開拓したり、気に入った蔵元の日本酒を直接仕入れてたりします。こちらも一概には言えません。
一般消費者の事情
では実際に、消費者はどうなのか。
日本酒(嗜好品)は、詳しい人か、あまり詳しくない人に分かれます。そして、ほとんどの人は「あまり詳しくない」場合が多いと思います。日本酒はたくさんの銘柄、種類、専門用語と複雑ですからね。覚えるだけで大変です。
でも美味しい日本酒が飲みたいし、買いたい。失敗したくない。そのためほとんどの方が、居酒屋で飲む場合は店員のおすすめを注文したり、酒屋の場合は店主のおすすめを購入すると思います。また他にも、テレビや雑誌で見た銘柄を注文することもあると思います。テレビ番組『ほこたて』で獺祭が紹介された後、もの凄い反応があったと言われています。
ここがポイントです。日本酒をあまり知らない多くの方は「居酒屋や酒屋のおすすめ」か「メディアで話題の銘柄」を注文します。日本酒に詳しい方(※5)は、気になる銘柄を自分で選び、注文するようになります。
※日本酒に詳しい人、好きな人は、インターネット、業界イベント、専門の酒屋、こだわった日本酒専門店を通じて、自ら勉強してどんどん詳しくなります。業界のイベントに行くと、必ずと言っていいほど、同じ顔ぶれが並ぶほどです。一種のコミュニティが形成されて、独自の市場が出来上がっています。
結論:どこも同じ日本酒の銘柄しか並んでない理由
このように、一般の方は、居酒屋や酒屋頼み。居酒屋は、酒屋頼み。酒屋は「メディアで話題」または「業界で話題」の日本酒を仕入れています。結果的に私たちが居酒屋や酒屋で目にする日本酒は、「メディアで話題」か「業界で話題」なものになってきます。
そのため、例えばみなさんが出張や旅行で見つけた銘柄でも、「メディアで話題」か「業界で話題」でない限り、都内や県外ではなかなか見つけることはできないのです。
この2点を、私たちは否定するつもりはありません。特に「業界で話題」になる銘柄の酒質は、感動するほど良いです。
少し脱線しますが、「良い日本酒」とは何でしょうか。ある人が「美味しい」と思うものでも、別な人は「あまり美味しくない」と思うこともあります。本来、嗜好品である日本酒の価値は、たくさんの選択肢があり、そこから自分に合ったものを選ぶべきだと、私たちは考えています。日本酒は嗜好品で、味覚は人それぞれです。
最後に、KURANDの取組み
私たちKURANDの立場は下記です。
まず、「メディアで話題」「業界で話題」の銘柄は、取り扱っていません。それらは都内で日本酒を扱っているお店でしたら、至るところで飲めますので、それらを伝えることは私たちKURANDの役割ではありません。私たちKURANDスタッフは自ら、全国各地の蔵元の開拓に努めています。そして、パートナーの蔵元と一緒に、今までにない新しい日本酒の商品開発も行っています。
私たちは、世の中にはもっとたくさんの日本酒があることを伝えたいと思っています。
そして日本酒にはもっともっと、個性があっていいと思います。日本酒の味わいを評価せず、メディアや業界に振り回されず、自分に合った日本酒に出会うことが大事だと思っています。あなたにとって本当にぴったりな日本酒も必ずありますし、たくさんの楽しみ方が日本酒にはあります。
これから日本酒に興味を持つ方も多いかと思いますが、自分に合った、または共感した日本酒に出会ったいただけると嬉しいです。
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