プリン、カップ入りスープ、発泡酒――。極めて身近な食品などの物価が下がり始めている。スーパーの販売情報からはじく消費者物価指数は18日、1年4カ月ぶりに前年比でマイナスに転じた。賃上げペースが鈍い中、企業が今春以降に値上げに慎重になっているためだ。日銀が9月の金融政策決定会合で予定する「総括的な検証」にも影響しそうだ。
16日時点の全国のスーパーの販売情報からはじき出す日経ナウキャスト日次物価指数(7日平均)は前年比マイナス0.01%。昨年4月9日以来のマイナスになった。
マイナスとなった商品をみると、消費者が日々の買い物で頻繁に購入するものが目立つ。
値下がりの影響が大きい上位5項目にはキノコ、菓子パン、豆腐、総菜・弁当、発泡酒という商品が入った。スーパーの店頭では即席カップ麺などの値引きも進む。大手スーパーのイオンは「消費者は価格に敏感になっている」としている。
昨春からは円安による原料高などを背景に、牛乳といった乳製品を中心に食料品の値上げが進んでいた。しかし消費の足踏みが鮮明になる中、今春以降は値上げの動きは鈍くなっている。日銀内でも「もっと多くの企業が価格を引き上げるとみていたが予想以上に慎重だ」との声が聞こえる。
総務省発表の消費者物価指数(生鮮食品除く)は、6月まで前年比で4カ月連続のマイナスが続いている。原油安の影響や円高に加え、消費低迷が主因だ。身近な商品の物価に詳しい東京大学の渡辺努教授は「食品の価格低下は消費停滞の影響が大きい。今後は円高傾向による輸入物価の下押し圧力も重なり、物価の基調がより低迷する可能性がある」と話す。
日銀の黒田東彦総裁がこれまで物価について強気の姿勢を保ってきた一つの根拠が身近な商品の値上げの広がりだった。
だがこの日次物価指数がマイナスになったことで、日銀は物価の基調をより精緻に点検する考えだ。9月の決定会合で2013年4月に導入した異次元緩和以降の政策効果について分析。政策目標とする2%の物価上昇率の実現が遠のくなか、物価がなぜ上がらないか集中的に検証する予定だ。分析次第では、一段の追加緩和や政策目標を修正する可能性が出てくる。