◇Kボール、スムーズに硬式へ
7月の第98回全国高校野球選手権長野大会に出場したのは84チームで、98チームが出場した第84回(2002年)と比べると14チームも減った。長野県高校野球連盟によると、少子化による学校の統廃合や部員不足などが原因という。小中学生の野球熱を高めようと4月には、県高野連が中心となり、県青少年野球協議会を設立。野球人口減少に危機感を持つ指導者らは、高校入学後も子供たちに野球を続けてもらえるよう環境整備に取り組み始めている。【ガン・クリスティーナ】
県高野連によると、加盟92校の今年度の総部員数は硬式、軟式合わせ、3733人(前年度比129人減)。少年野球クラブなど中学生以下を含めた小中高の「野球少年」の人数は約8400人で、10年(約1万1000人)と比較すると2600人の大幅減となっている。背景には、少子化やサッカーなどスポーツの選択肢が増えたことにあるという。
同協議会はこうした現状を踏まえ、県高野連や学生野球の関係団体が参加して設立された。来年1月14日には、小中高校の指導者らを集め、初の「ベースボールサミット」を開く。小中高間の技術交流や指導方法など、直面する課題や今後の取り組みを確認する。
「このままでは、20年後には野球がなくなるのでは」と伊那市立春富中野球部監督の小島貴弘教諭(49)は危惧する。小島監督は、高校受験のため、夏場に部活動を引退する3年生が、勉強の傍ら野球を続けるためのチーム「上伊那オールスターズ」を11年前に設立。今年は選手約45人が週1回練習しながら、NPO主催の大会で試合を続けている。
チームは、軟球と同じ材質で、重さや大きさを硬球に合わせた「Kボール」を使用。軟球経験しかない選手が高校で硬球になじめず、挫折することがあるためだ。小島監督は「中学から硬式をやっていた選手に対して引け目を感じる選手もいる。スムーズに移行できるよう準備すれば、継続率向上にもつながる」と説明する。
上伊那オールスターズ選手で伊那市立伊那中3年、伊藤憲伸さん(15)は「硬式でやっていけるか不安だったが、今ではボールがつぶれず飛んでいくことにわくわくする」とし、「野球をすることで礼儀が身につくし、甲子園に行けなくても悔いなく頑張ることの大切さを学べると思う」と前向きだ。
さらに、小島監督は、昨年12月に上伊那地区の学校の中学野球部や少年野球クラブなどの監督ら約130人による「上伊那ベースボールサミット」を開いた。会合では、「10年で100人増」や「高校進学後の野球継続率10ポイント増」(現状約60%)などの目標を設定した。
小島監督は今後、小中校の技術交流会や高校野球部の見学会を計画。また、地元企業の見学や経営者による野球経験がどう仕事で生かせるのかについての講演などで、選手が野球を続けることと将来がどうつながるかを考える機会をつくりたい考えだ。「野球は人間育成に役立ち、日本を元気にする力がある。上伊那での活動が、全国に広がるうねりになってくれれば」と語った。
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