五輪の環境配慮 問われる東京の発信力
リオデジャネイロ五輪は環境配慮を優先課題に掲げている。開会式では、入場行進する選手らに樹木の種が渡され、その種が緑の五輪に成長する演出がなされた。地球温暖化が進行する中、「緑を植えて地球を再生しよう」というメッセージだ。
リオ五輪では、37会場のうち新設は10会場にとどまる。大会後、新設のゴルフコースは公共ゴルフ場となり、ハンドボール会場は解体して小学校に生まれ変わる。施設を無用の長物とせず、有効活用するためだ。化石燃料の使用を削減するため、聖火台も小型化されたという。
いずれも環境配慮の一環だ。
五輪は4年に1度の一過性の大会だ。にもかかわらず、準備や運営に大量の資源やエネルギーが投入される。だからこそ近年は、再生可能エネルギーの利用拡大や大会で使用した資材のリサイクルなどによって、環境影響を極力減らす「持続可能性」に基づいた取り組みが重視されるようになっている。
2020年の東京五輪・パラリンピック大会組織委員会も「持続可能な大会運営」を掲げている。運営での環境配慮はもちろん、開催をきっかけとした新たな取り組みや精神を、レガシー(遺産)として国内外に広めてもらいたい。
五輪の持続可能性は、4年前のロンドン大会で大きな注目を集めた。大会に関する工事に必要な資材や選手村で提供する食材などの調達について、持続可能性に配慮した基準が定められた。廃棄物や温室効果ガスの排出についても、具体的な削減目標が事前に示された。リオ五輪の取り組みも、その流れに沿っている。
東京大会はどうか。
大会の組織委は今月、環境に配慮した運営計画案を公表した。温室効果ガスの排出削減でこれまでの大会以上の成果を収めることや、廃棄物の発生抑制に努めることなどが示されている。計画の理念に異論はないが、数値目標は入っておらず、具体性に欠ける内容にとどまっている。
組織委は、計画の肉付けを急ぐ必要がある。その際に重要なのが、資材や食品などの調達基準だ。
組織委は第1弾として今年6月、競技場などの工事に使う木材の調達基準を示した。原木の生産国の法令に適合していることに加え、生態系や先住民の権利に配慮して伐採された木材の使用を求めている。
ただ、調達基準の対象は組織委の事業に限られる。新国立競技場など国や都の予算で建設される施設は対象外だというが、大会の主要施設が対象にならないのはおかしい。国や都の他の関連事業も含め、組織委の調達基準に従うのが当然だろう。
東京の発信力が問われている。