災害情報の「空振り」が続くと、本当に注意すべき時がわかりにくくなる。ここ数年、各地で発生する竜巻、突風に対する注意情報も、そんな感覚で受け流されていないだろうか。

 この10年を見ると、竜巻の1年の確認数は海上竜巻をのぞいて平均約25個。台風シーズンの夏から秋にかけてが最も多い。

 気象庁は08年から、竜巻、ダウンバーストなどの突風が「今まさに発生しやすい」という段階で竜巻注意情報を出している。年間の発表は800~千件以上にのぼるが、どれだけ有効活用されているか疑問だ。

 たしかに大雨や雷と違い、実際に情報が発表されても竜巻に遭遇する可能性は低い。だが、ひとたび巻きこまれたら甚大な被害が出るのが竜巻だ。

 06年に北海道佐呂間町と宮崎県延岡市で相次いで発生した竜巻では、計12人が死亡した。12年には茨城県つくば市で1千棟以上の建物が破損し、死者1人、負傷者は37人に及んだ。13年には埼玉、千葉両県で1千棟超が損壊した。

 注意情報が始まって8年。気象庁など関係省庁は、もっと情報の活用を促してはどうか。

 そのために、まず大切なのは予測精度の向上だ。

 茨城の竜巻では、注意情報をメールなどで住民に伝達していなかった市町もあった。理由は「精度の低い情報を流すことで、誤情報が続き、情報の信頼性が失われる」だった。

 竜巻注意情報が出て実際に竜巻やダウンバーストなどの突風が吹いた確率は5~10%だ。気象庁は一昨年から消防の協力を得て、目撃情報をとり入れるなどして精度向上に努めている。独自の観測網をもつ民間の気象会社の情報も活用するなどし、さらなる精度向上に結びつけてほしい。

 情報の対象が都道府県単位であることも改善の余地がある。「県内のどこかで発生するかも」といわれても行動しにくい。気象庁は、区域を細分化する方向で検討中だ。信頼性を高めるためにも急務だろう。

 情報を受ける側も、うまく活用する心構えが大切だ。

 竜巻注意情報が出るということは、大雨や雷などの激しい現象が起こりやすい知らせでもある。ただし、即避難を呼びかける性質の情報ではない。まずは自分で空模様を確認し、黒い雲、急に暗くなる、冷たい風が吹くといった、発達した積乱雲の兆候があれば、頑丈な建物に避難することが求められる。

 自ら考え、対応する。防災情報を賢く使いこなしたい。