コトの起こり
職場のそばに駐車場がある。
といっても、舗装され整備された駐車場ではない。
どちらかというと、原っぱという言葉がぴったりな駐車場だ。
だだっぴろく、いつもクルマがまばらに停まっている。
ワタクシの職場は、工業団地の一角にある。
ちょうどその駐車場を、道路を挟んで見下ろすかんじだ。
ヤツとの遭遇
ある時、食堂で休憩をしていた時の事。
窓から、件の駐車場をぼんやりと見下ろしていた。
すると、何かがクルマの下から這い出た。
そして走っていくのをみた。
「何だろう・・・?」
目を凝らすと、なんとウサギだった。
走り方が独特だったからわかった。
猫のようにささっと走るのではない。
ややため気味にどったどった走る感じだ。
「どうしてウサギが??」
と思った。
野生のウサギだろうか?
だが仕事中だった。
だからそれ以上、うさぎを見ているコトは出来なかった。
そしてすぐにその事は忘れてしまった。
再びヤツに逢う
半年くらい経って、
またそのウサギを見た。
前回より、やや大きくなっていた。
相変わらず、どったどった走っていた。
駐車場の外れに、資材置き場がある。
どうやらその付近をすみかにしているらしい。
前回は三秒も経たないうちに視界から消えた。
しかし今回は、駐車場の中を行ったり来たりしていた。
食べ物を探しているのか・・??
いや、どちらかというと遊んでいるように見えた。
どたどた走り、勢い余って草むらにツッコむ。
「だ・・誰も見てないよなッ!?」
とばかりに周囲をきょろきょろ見る。
この姿が、なんとも愛らしい。
とはいえ屋外だから、うさぎの外敵も多いだろう。
しかしながら、ヤツはたくましく生きているようだ。
何も出来ないが、ちょっぴりうさぎに好意を感じてしまった。
唐突に居場所がなくなった
駐車場の取り壊しが決まった。
工事をするので、よろしくお願いしますと、業者さんが挨拶にきたのだ。
すぐに浮かんだのは、あのうさぎの事だった。
後味の悪さを感じた。
だが、どうする事も出来ない。
その場は承知しましたと、あいさつをして終わった。
工事は数か月かかった。
まず駐車場を更地にする。
そこに社屋を建てるらしい。
すぐ向かいの出来事なので、いやおうなしに目についた。
ワタクシはいつもウサギを探した。
更地になっても、ヤツはあらわれなかった。
基礎工事がはじまる頃には、もうあきらめていた。
やがて社屋が完成し、その会社のひとたちが頻繁に出入りするようになった。
少し時間が流れた。
再びヤツがw
運転中にケータイが鳴る。
会社まであと数百mのところなのに、と思いながらクルマを停めた。
電話の応対をする。
目の前には、他所の駐車場があった。
要件をやりとりしつつ、見るともなしに駐車場に目をやった。
ビックリした。
そこにヤツが居たのだ。
以前より痩せて見えたが、しっかり生きていた。
本当に驚いてしまい、電話中にも関わらず「あれっ?」と言ってしまったよw
ヤツは去り際、ワタクシの方をチラ見したように見えた。
そしてさっさといなくなってしまった。
現在
それから今日まで、ヤツをみていない。
しかしいつかまた、突然現れるのではないか?と思っている。
仕事は毎日つまらない。
だが、ヤツに出会うかもしれないと思うと楽しい。
そんな気持ちで、今日もクルマに乗る。
それでは本日はここまで。
皆様、良い出会いををを!!