次に、華僑と中国について考えてみます。
祖国・中国が目覚ましい発展を遂げるようになり、注目されるようになってから華僑の目は中国に向き始めました。
中国に戻って商売を始めることを思いついた華僑は、まず子供に中国語を学ばせて中国の富裕層とのコネを作ろうと考えて子供を中国留学に送り込む親が増えました。おかげで、いまや中国全土にタイ華僑の留学生が見られます。
もっとも、留学期間が終わればそのほとんどが帰国するけれど、やはり留学中に知り合った華僑との付き合いは途絶えることがありません。
華人のお金に関する生活習慣や文化
最後です。現在、タイで財政界を牛耳っているのは華僑だといわれています。
このことは財閥のほとんどが華僑系であり、華僑の血がタイ王朝にまで入っていることをみても一目瞭然です。ただ、他の東南アジアの国とは違ってタイでは華僑とタイ人との間で争いが起きていません。
華僑のお金に関する生活習慣は、その信心深さに垣間見られます。薬指はお金が流れていく指だという言い伝えを信じて、お金の流れを止めるために金の指輪をはめたりする人もいます。
また、割り勘を好まず、交互に奢りあうのが彼らの社交術です。墓参りのときにも、故人に仕送りをする意味で紙の紙幣を燃やします。さらに、タイ最大のチャイナタウン・ヤワラ―のなかにある店舗には必ず商売の神様・関羽帝がまつられています。
それから、公的機関や銀行とコネ作りをするために子供に先行投資して教育を受けさせるため高い教育レベルを誇ります。
こうしたことから、いかにお金=人脈を大事に循環させていくかということへの哲学が長い時間を経て無意識に華僑たちを富裕層にしたと私は考えます。
これまで見てきたように、華僑はタイに根づきながらも中国人としてのアイデンティティを頑なに守り続けてきました。
商売上手なのは、その昔、一旗揚げようとして中国を出た祖先の血が強いからかもしれません。
この考えは世代交代を繰り返して、華僑→華人になって移住先の文化や生活習慣に完全に同化しても変わりません。
むしろ、発展を続けているうえにビジネスチャンスが転がっている祖国・中国に戻るという風潮まで生まれてきました。
このことから、どんなに時代が変わっても華人は華人のままであり、「落葉帰根(どんなにルーツと離れてもいつかはそこに戻る)」と「生地生根(生まれた地に根付く)」という中国のことわざ通りに中華系のアイデンティティを守り続けて生きるだろうと私は考えます。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
【参考】
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BY W.L
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