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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2016-08-19

プライバシー情報を転売もマイニングもしなくて課金なしで無制限に使えるMoneytreeさんはどうやって儲けているのか 08:07

 さて、先日Moneytreeさんから頂いた不可解なメールについて紹介しました。

https://i.gyazo.com/7c47c0fc60c9b88e36698a4036d36bec.png


 いま見ても不可解で怖い。

 要するに「Moneytreeは、(他社のサービスとは違って)勝手にユーザ情報からデータマイニングして広告を出したり、半匿名情報と謳ってユーザのプライバシーに関するデータを横流ししたり、一定期間より前の利用履歴を見るために課金を要求したりはしないよ」という主張を「みんなの周りに伝えよう」という謎すぎるキャンペーンでした。


 まあこの手のサービスが無料で無制限に使えるというケースの場合、データの横流しは日常茶飯事で、ユーザはデータをある程度は横流しされることを覚悟の上で使うものだと思っていたのですが、どうもMoneytreeはそれをせずに経営を維持しようとしているようなのです。広告も出さず、課金もせずに??どうやって??むしろ怖い

Moneytreeさんが「僕、怪しくないよ! 広告も入れないし課金もしないし閲覧制限もかけないよ!」と言ってて益々怪しい件 - shi3zの長文日記

http://d.hatena.ne.jp/shi3z/20160705/1467734933


 あの記事自体はそんなにページビューがあったわけではないのですが、運命とは数奇なもので、Moneytreeさんから直々に「説明に伺いたい」ということで昨日猛暑の中お出でいただきました。


 そこでまず分かったのは、「ユーザーのプライバシーを守る」ということがMoneytreeの企業理念の根幹を成していることでした。


 ではMoneytreeはどうやって儲けを出そうとしているのかというと、銀行や企業などがMoneytreeのAPIを使って顧客サービスを行う場合に、若干の手数料をとってサービスをしているとのことです。


 どういうことかというと、Moneytreeはその製品の性質上、全てのクレジットカード情報や銀行通帳の内容などを一元管理しています。


 ユーザーのプライバシーを保ったまま、ユーザーの必要に応じて、必要な企業にユーザーの情報の一部を開示できるという仕組みを企業向けに提供しているのです。


 たとえば「なるほど」と思った例に弥生会計があります。

 個人事業主などが弥生会計のクラウドにMoneytreeを通じて接続しておくと、MoneytreeではAIが出入金記録を精査して自動的に仕訳して弥生会計に入力してくれます。


 一般の人にはなかなかイメージ出来ないかもしれませんが、個人事業主や企業では通帳内容を税理士が把握したり経理担当者が把握しているのが普通です。そういう場合には、Moneytreeの持つ様々なデータへの接続点が一元化されているというメリットが最大限に活かせます。


 Moneytreeを使わない状態だと、出納情報を全て経理担当者が弥生会計に入力しなおさなければなりません。


 「なるほどそれは便利ですね」という感じです。この手間を考えると、企業がMoneytreeに対してお金を払う理由は正当に思えます。


 企業はMoneytreeから提供される有償のAPIを通じて、ユーザーひとりひとりの確認を取った上で(ここ重要)、必要なだけの情報開示を企業やサービスに対して行うことが出来ます。


 たとえばファイナンシャルプランナーなどに預金口座の一部を開示するとか、カードの利用履歴を開示するとかでコミュニケーションコストを減らすことが出来ます。


 そういうビジネスモデルを描いているので、基本方針としてMoneytreeはユーザーから集めたデータを勝手に使わないし、勝手にデータマイニングして広告を表示したり、半匿名情報としてデータを横流ししたりしない、というわけです。



 まあ悪い人たちじゃなさそうだということは最初のメールからも思っていましたが、反対に、こんなビジネスモデルで会社が永続化できるのか少し不安になりました。


 ちなみにMoneytree以外の同種のサービスでは半匿名情報として氏名だけが塗りつぶされた個人情報が一人いくらという値段で流通するのが普通だそうです。


 それはそれで想像するとちょっと怖い。

 TSUTAYAの履歴とDMMの履歴(艦これとかね)とAmazonの履歴とヤフオクの履歴とdocomoの使用履歴と銀行口座などなどが全部統合されたらもうバレバレじゃん。匿名じゃなくなってるじゃん。


 それがほぼ生データのまま流通しているというから、それはそれで怖い話です。


 けれども、まあイマドキ個人情報一つにどれだけ価値があるのかというのはちょっと疑問です。


 特に悪用されなければ個人情報が取られてもいいや、という人も少なくない昨今、まあ僕はTポイントカードをわざわざ財布から出すのが嫌になったのでTポイントカードを使うのやめましたが、たまたま知人の勧めでMoneytreeを使っていたので個人情報が流出しないことをかくにん、よかった。


 ・・・ってほどシビアかなあ。

 まあ芸能人の方々とかは細かく個人情報とられたら面倒くさい、というのは当然あるんだと思いますけどね。

 我々一般人なんかは別にどうでもいいといえばどうでもいい。

 

 まあさすがに「あの会社のあの人がこんなエッチな本買ってましたよ!」とか喧伝されたらそれはそれで困る。


 でも僕のブログのアフィリエイト見てても、もちろん誰が買ったのかはわからないんだけど、何を買ったのかはわかるようになっていて、それはそれでちょっと嫌な気分になることがある。これが個人情報の恐ろしさか。


 ただねー、Googleも企業当初の理念は「広告なんか入れないぞ」だったのに、今や世界で一番広告を売る会社なわけで、Tumblrもそうだよねー。だから、Moneytreeさんにはぜひ頑張っていただきたいのだが、正義を貫くにはまずカネが必要、ということもぜひ考えていただいて儲けていただきたい。


 ちなみにMoneytreeの利用規約はオープンソースで共有されている。


 「われわれは、利用規約を公開し、クリエイティブ・コモンズとして共有してるんですよ!この崇高な気持ちを皆さんと分かち合いたい。そして他の会社にも同じ規約をぜひ使って欲しいと考えているんですよ」


 鼻息荒い。

 なるほどね。


 「まあいい人達そうだから、後日談としてブログでとりあげますよ」


 というと、喜んで帰っていった。

 うーむ。憎めない人たちではあるんだけどなあ。


 じゃあせっかくなのでその利用規約とやらわ見てみるか。


GitHub - moneytree/policies: Moneytree Terms and Policies from moneytree.jp

https://github.com/moneytree/policies

 もちろんここには個人情報を悪用しないなどのマニフェストが書かれていて、少なくとも彼らの眼が黒いうちは本当に個人情報の流用はしないんだろうなあ、ということは伝わってくる。


 と思ったら

お客さまのデータは:

お客さま自身のものです

安全に保持されています

いつでも削除することができます


第三者への情報提供:

事前に同意をいただいている場合

個人を特定できない情報である場合

法令に基づく開示を要求された場合

あれ?個人を特定できない情報なら開示するの?それってあなた達がさっき批判していた「半匿名情報」ってやつじゃ・・・

統計情報の作成

Moneytreeは、お客さまから提供いただいた情報を、個人を特定できない統計情報に処理するために利用することがあります。


 結局データマイニングするんじゃん。

 広告は出さないけどデータマイニングはするの?


 というか彼らがわざわざgithubで共有している利用規約が特段他の規約とくらべてプライバシー保護に熱心だとも思えない。

 あ、あとさ

Creative Commons 表示 - 改変禁止 4.0 国際

あなたは以下の条件に従う限り、自由に:

共有 — どのようなメディアやフォーマットでも資料を複製したり、再配布できます。

営利目的も含め、どのような目的でも。

あなたがライセンスの条件に従っている限り、許諾者がこれらの自由を取り消すことはできません。

あなたの従うべき条件は以下の通りです。

表示 — あなたは 適切なクレジットを表示し、ライセンスへのリンクを提供し、変更があったらその旨を示さなければなりません。あなたはこれらを合理的などのような方法で行っても構いませんが、許諾者があなたやあなたの利用行為を支持していると示唆するような方法は除きます。

改変禁止 — あなたがこの資料をリミックスし、改変し、あるいはこの資料をベースに新しい作品を作った場合、あなたは改変された資料を頒布してはなりません。

追加的な制約は課せません — あなたは、このライセンスが他の者に許諾することを法的に制限するようないかなる法的規定も技術的手段も適用してはなりません。

 あの・・・改変禁止って書いてありますが

Moneytreeは、お客さまの個人情報に関する法令その他の規範を遵守し

 って冒頭に書いてあるのを改変禁止になっていたら、Moneytree以外なんにも使えないじゃん。


 改変禁止の自社専用の利用規約をgithubで公開してクリエイティブ・コモンズとして公開・・・


 まさにチラシの裏にでも書いてろというレベルの寝言でございます。



 日本語がわからないのか(社長は日本国籍ではないそうですが20年くらい日本に住んでる人だそうです)、それとも本当に深刻なほど頭が悪いのか。 

 

 むしろ善良な人に見えただけに不安が益々募ります。



 長文日記はMoneytreeさんを応援・・・していいのか判断に迷っています