大阪大学は、額に貼るだけで脳波を計測できるパッチ式脳波センサーを開発したと発表しました。
冷却シートを額に貼るのと同等の手軽さと、大型医療機器並みの計測精度を両立した脳波センサー。同等の計測精度を持つ従来型医療用脳波計の問題点のひとつは、装着者の頭部全体に複数の電極を有線で装着し、さらに導電ゲルを塗布する必要があるため、まず装着に手間がかかるだけでなく、寝返りがうてないなど装着しているだけで負荷がかかるところにありました。
この装着負荷は、心地よい睡眠を得ているときの脳波や、子どもの脳波の計測を困難にすることから、装着者への負荷が少ない脳波計の開発が待たれていました。
脳の状態を計測するハードルが下がることの代表的なメリットは、睡眠の質の判定や、認知症など脳関連疾病の早期発見。また装着負荷の低下によって睡眠の質自体が向上するだけでなく、子どもにも装着しやすくなるため、これまで計測できなかった質のデータが取れるようになることが期待できます。
今回発表されたパッチ式脳波センサーは、計測したデータを無線伝送できることから装着時の快適さも確保されており、深い睡眠の際に見られる2Hz以下の徐波(δ波)の検出も確認されており、装着者への負荷が少ないセンサの有用性が示されています。
大阪大学によれば、脳波の測定手順が簡便になることによって、従来よりも多くのシーンで脳波データが取得しやすくなり、脳と個人の状態との因果関係を解明する一助になることが期待できるとのことです。
また将来の展望としては、家庭内レベルでの脳波測定と、測定結果をもとにした個人状態の分析および生活の活性化を目指すとしています。具体的には、要介護者の見守りセンサ、運転者の不調に対応した自動/手動運転の切り替え、子どもの集中力から好きな科目を同定する手段、赤ちゃんの情動を読み取って、赤ちゃんにとって快適なおむつの開発に役立てるなどの例を挙げており、幅広い活用が期待されます。
人体に装着して生理情報を得るウェアラブルデバイスにつきまとう課題のひとつは、侵襲性(生体内の恒常性を乱す外部刺激)です。今回のような脳波センサの例でいえば、装着者に常時負荷がかかっていたヘッドギア状から、冷却シート並みの使い勝手に進化したことで、侵襲性は低くなったといえます。
もし、本発表において将来的な用途として挙げられているような使い方をするならば、ほぼ常時デバイスを装着していなければならないはずなので、この進化は好ましい変化と言えそうです。
では実際に運用するとなると、どういった形状が適切なのか、装着することそのものが計測データに影響を及ぼさない程度の快適性が保たれているのか、デバイスを身につけることが社会的に受容されるのかなどなど、単体の技術が確立するだけでは話が終わらないところが、ウェアラブルデバイスの難しいところです。