盲目のiPhoneユーザーに聞いた、視覚を使わない驚きのスマホ操作術
こんにちはー! 株式会社人間の書けるムードメーカー、社領エミです!
会社の「社」に領収書の「領」で社領で〜〜す!
画像:表参道に立つ社領の写真
私は今、表参道に来ております。
というのも、先日たまたま全盲でiPhoneを使いこなしている方にお会いしまして……。
画像:スマホのイラスト
!?
え、iPhoneってツルツルですよ!? 触ってわかるボタン、ほぼないですよ!?
『電話もメールもインターネットもしますよ』とのことだったのですが、
一体、どうやって使ってるの……!?
き…………
気になる〜〜〜〜!!!!
もっと話を聞かせて〜〜〜〜!!!!
画像:ダイアログ・イン・ザ・ダーク前での社領の写真
ということで、外苑前にある施設 「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」 にやって来ました!
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、暗闇のソーシャル・エンターテインメント。完全な真っ暗闇の空間へグループを組んで入り、暗闇のエキスパートである視覚障がい者のスタッフの案内で、視覚以外の感覚を研ぎすませながら中を探検したりと、さまざまな体験ができる施設です。
そして!
こちらが生まれつき全盲のiPhoneユーザー、
檜山 晃(ひやま あきら)さんです!
画像:檜山さんの笑顔の写真
檜山さんは、ダイアログ・イン・ザ・ダークのスタッフさんであり、社領が先日ワークショップに参加した際に暗闇の案内をしてくださったお方。
5年以上前からiPhone 4、iPhone 5、iPhone 6 Plusと3台のiPhoneを使いこなしていらっしゃる、かなりのヘビーユーザーです。
「こんにちはー! 今日は色々教えてください、よろしくお願いします!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
iPhoneは見えなくても操作できる!
「早速ですが檜山さん、iPhoneを使いこなしていらっしゃるとか……!?」
「いえ、それほどでもないです、人並みです(笑) 電話にメールにインターネット、あとはAmazonで買い物するとかですかね……」
「えー!? iPhoneって見えなくてもそこまで操作できるの!? 一体どうやって…!?」
「見てみますか?」
画像:スマホを持つ檜山さんの手元の写真
こちらが檜山さんのiPhone 6 Plus。一見すると、私たちの使うiPhoneとまったく変わらなく見えますが……。
「ホームボタンを押してみますね」
画像:檜山さんのホーム画面
「●#%○」
「今このiPhone、何か喋った!?!?」
「『14時59分』って言いましたね」
こちらが、その動画です!
「言っ……てる…………?」
「言ってますよ(笑)iPhoneには、視覚障がい者でも使えるようVoiceOverという画面読み上げ機能が備わっているんです。今は、画面に表示されている『時間』を読み上げてくれたんですが……」
「これ、めちゃくちゃ早口じゃないですか!? 聞き取れます!?」
「はい。僕は慣れてるのでこの速度がちょうど良いのですが、遅くすることもできますよ。じゃあ試しに、天気を調べてみましょうか」
「な、なんじゃこりゃ〜〜〜!!! すごすぎる!!」
「iPhoneはこうやって、画面に出ている情報、今選択しているものの情報を読み上げてくれるので、全盲の僕も使うことができるんです」
「じゃあ、メールはどうやって…? 音声入力とかですか?」
「基本的には、Bluetoothのキーボードを使いますね。文字どおりのブラインドタッチで(笑)」
画像:折りたたみキーボードを持つ社領の写真
こちらが、檜山さん愛用のキーボード! 真ん中で折りたたんで、コンパクトに持ち運べるようになっております。
「なるほど、納得。やっぱりこのくらい凹凸がないと文字は入力できないですよね」
「いや、iPhoneの画面内のキーボードでも普通に入力しますよ」
「え!?」
「こんな感じに……」
「さらにですね。僕は目が見えないので、いま画面を見てないんです。なので、画面が点いてる意味ってまったくないわけですよ。というわけで、3本指で3回タップすると……」
画像:真っ暗な画面のスマホを操作する檜山さんの写真
「画面が真っ暗になります。が、これ、画面を真っ暗にしただけでiPhoneは起きてる状態なんです。僕はこれでも操作できちゃうんですよ」
iPhone「『マップ』。開くにはダブルタップします」
画像:驚いた顔の社領の写真
「…………。」
「……すごい……。すごい……もう『すごい』しか出てこない……。あとこれを作ったAppleを、心の底から尊敬した……」
点字でインターネットが読める! ハイテクデバイス「音声点字PDA」
画像:話をする檜山さんと社領の写真
「想像以上にiPhoneを使いこなしてらして、めちゃめちゃ驚きました…! ほかにはiPhoneでどんなことをするんですか?」
「一番よく使うのはインターネットやYouTubeですね」
「YouTube! 音を聞く感じですか?」
「ラジオを聞いたり、野球観戦したりですね。野球って音でもわかるんですよ、フライとゴロで全然音が違うんです。あとは映画も好きなので、NETFLIXで映画を楽しんだりとか……」
「iPhoneは娯楽の道具って感じですね」
「もう完全におもちゃですね、電話ができるおもちゃ(笑)」
画像:檜山さんの笑顔の写真
「ただ、『時間の確認』や『メモを取る』といった動作もiPhoneでするかといったら、そうではないんです」
「というと?」
「たとえば時間を確認する時、僕はこの腕時計を使ってます」
「? 普通の腕時計に見えますが……」
「これね、蓋が開くんですよ」
画像:蓋が開いた腕時計の写真
「おわーー!!」
「指で針を触れば時間がわかるんです」
「うわー、触ってみたい!」
「どうぞ。横から触ると針がずれるので、真上から……」
画像:腕時計に触れる社領の手元の写真
「あ、わかるわかる! 長針と短針!」
「暗闇でのワークショップ中は必ずこれを使いますね。お客さんが夢中になって暗闇を探検してる時に、時間の読み上げ音声が流れると現実に戻っちゃうでしょう」
「確かに、これだとみんなに気付かれずに時間を確認できますね。SEIKOを心の底から尊敬した」
「メモを取る時に使うのはこれ。音声点字PDA※です」
画像:音声点字PDAの写真
※PDA … 携帯情報端末のこと。
画像:音声点字PDAを興味深げに眺める社領の写真
けっこう分厚くて重い!
「おぉ……なんか音楽ゲームのコントローラみたい! これでメモが取れるんですか?」
「上の8つのボタンがキーボードになってて、点字を打ち込めるんです。こんな感じで……
『わたしはひやまあきらです。こんにちは』と、今打って見ました。触ってみてください」
画像:音声点字PDAの点字部分に触れる手元の写真
「オォォーーーイ!!! ポコポコしてる!! すごい!! すごい〜!!!」
「これ、見た通りモニターがついてないんですが、このツブツブがモニター代わりなんですよ。このデバイスがあれば、メモをとったり、メールを打ったり、インターネットに繋げてホームページを読むこともできます」
「インターネットもできるんだ! 確かに、視覚障がい者の方にとっては、インターネットに画面が必ずしも必要という訳ではないですもんね」
「そうですね。まぁ、このデバイスは読み物に向いてるかな。iPhoneとは、用途によって使い分けてます」
画像:にっこり笑う檜山さんの写真
「でもやっぱり、このデバイスは視覚障がい者専用のものだから。iPhoneを使うようになって、みんなと同じものを使えるのが物凄く嬉しいですね」
画面を見ないでiPhoneの操作にチャレンジ!
さてさて! 檜山さんのiPhoneの操作、めちゃくちゃスムーズに見えましたが実際どうなの?
音声だけの操作って、実は簡単だったりして……?
ということで、実際に私もやってみることに!
私のiPhoneを檜山さんものとまったく同じ設定にして、目隠しをしたままで『目隠しして打ってます』とツイートしてみたいと思います!
【iPhoneを檜山さんと同じ設定にする方法】
「設定」 > 「一般」 >「アクセシビリティ」 >「VoiceOver」にアクセスし、
画像:VoiceOver設定画面
一番上の項目「VoiceOver」をオンにすると、読み上げ機能の設定が完了!
「読み上げ速度」のスライドバーで、読み上げる速度を調整してみてください。
一番右のウサギアイコン側に設定すれば、檜山さんのiPhoneと同じ速度になりますよ。
※iOS 9.2.1での設定方法です
※VoiceOver機能は操作方法が特殊なので、目を開けて使ってもめちゃくちゃ難しいです。困った時のために、使用方法を調べられる使い慣れたデバイスを側に置いてのご利用をおすすめします!
目隠しをしたままロック画面からツイートまで、果たして私にできるのか……!?
チャレンジ開始で〜す!
画像:目隠しをしてスマホを持ち爆笑する社領の写真
「ぐわーー!! 目隠しした瞬間もうわからん!!!! いま私、ロック解除できた…!?」
「できてますよ」
「まずTwitterを開くのが難しいーー!! 私のホーム画面ってどんなだっけ!?」
「大丈夫です、今Twitterを選択してますよ。ダブルタップして」
「しました……ツイートボタンどこだっけ!? 右上!?」
「あ、今ツイートできる画面に来ましたね! まずは『め』を打ちましょう!」
「エム……エムどこ!? ヤバい、全然聞こえない! 今どこまで打った……!?」
画像:スマホに耳をすませる社領と檜山さんの写真
「今『め』ってちゃんと打てましたね」
「なんで全部わかるの!?(笑)」
ということで、10文字打つのに10分かけた大格闘の末、私がツイートしたのはこちら!
画像:「しtでううってなす」と呟いた社領の画面のスクリーンショット
画像:がっくりうなだれた社領の写真
「全然ダメじゃねーか!」
「『目隠し』まで打って、一回全部消してましたよ」
「まったく気付かなかった〜!」
これにて、目を使わずiPhoneを使うのはめちゃめちゃ難しいということが判明しました。
私たちは五感のうち、ほとんど目しか使っていない
画像:目隠しを外している社領の写真
「いやー難しかった……。ダイアログ・イン・ザ・ダークを体験したときも思ったんですが、視覚を遮断されると『私たちが普段いかに目に頼って生きているか』ということを痛感します」
「ね。僕はよく『ものが見える人たちって、基本的には五感すべてが使えるはずなのに、ほとんど目しか使ってないな』と感じていて」
「おっしゃる通りです……」
「なので、僕はダイアログ・イン・ザ・ダークのスタッフをする上で、視覚以外の色んな感覚を使うことで身の回りのことがもっと楽しくなるよ、ということを気付ける場づくりができるよう心がけてます」
画像:笑う檜山さんの写真
「確かにワークショップの後しばらくは、物の感触や音の感じ方がまったく変わりました! いつも使っている鞄でも、手で持った時の質感を生々しく感じるというか」
「そう感じていただけると嬉しいですね」
「ということで檜山さん、今日は色んなお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました!」
「こちらこそ、ありがとうございました。」
ユニバーサルデザインはすごい
画像:檜山さんと社領が並んで笑顔な写真
これにてインタビューは終わりです!皆さん、いかがでしたでしょうか。
視覚障がいを持つ方とお話するのは初めてだった私にとって、今回の取材は驚きの連続でした。
特に衝撃を受けたのは、檜山さんの「みんなと同じものが使えるのが物凄く嬉しい」と言う言葉です。
「使いやすい」は必ずしも「使いたい」とは違うのだなと。そんな中で、「誰もが同じものを使える」というユニバーサルデザインの大切さを改めて思い知った次第です。
という訳で!
そんな檜山さんがスタッフとして勤める「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」、東京会場・大阪会場と2会場で常設開催しております。みなさん、お近くにいらした際は是非体験してみてください!
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ダイアログ・イン・ザ・ダーク
http://www.dialoginthedark.com/
東京 外苑前会場
TEL : 03-3479-9683
大阪会場「対話のある家」
グランフロント大阪 北館 4F ナレッジキャピタル 積水ハウス「SUMUFUMULAB」内
「対話のある家」事務局(11:00~18:00 ※土日祝日除く) : 0120-29-2704
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では!
この取材をした日の夜、早速友達にVoiceOverを披露していたところ、画面を真っ暗にしてしまい戻せず危うく新幹線を逃しかけた社領エミでした。
社領エミ(しゃりょう えみ)
1990年生まれ 兵庫県出身。"面白くて 変なことを 考えている"会社、株式会社人間の書けるムードメーカー。面白くて変な記事を書こうと日々頑張っている。
Twitter:@emicha4649
株式会社人間:http://2ngen.jp/
コメント 20
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これ以上ありません。
手持ちのiPadで試してみましたが、これすごいですね!
社領さん=ネタ記事だったので見てビックリです
あとは、、、voiceover機能でmineoを読んでもらうと「ミネオ」になっちゃうのは、マイネオの人達に頑張ってほしいな笑
以前、同窓会で、大人になってから病気で失明した友達と会いました
メールに返信するときに、話が通じるように送られてきたメール文章を残したまま返信する場合が多いのですが、目の不自由な方へのメールは、その方法だとどこまでが今回の文章かわからなくなるので、前の文章は残してはいけないことを知りました
今は目が不自由な方も普通にiPhoneが使える時代なんですね
驚きました
久しぶりに友達に連絡をとってみようと思います
初めて知りました
まさかスマホから視覚情報を得ないで使うことが出来たなんてΣ(゚Д゚)
これはいい記事ですね。
勉強になりました(^^ゞ
本当に素晴らしい!
技術とは如何にあるべきか改めて考えさせられます。
ところでこれって「おもしろネタ」なのでしょうか?
新しいカテゴリーを作っても良いかも…
これは大変勉強になりました。
素晴らしい記事だと思います。(^^
コレは本当に良い記事ですね。
社領さんなので、ネタ記事だろうと思って開いて見てゴメンナサイ (´;ω;`)
人それぞれの活用の仕方というのは、私自身も大変興味がありました故、万人が使えるように考えられているという点が、普段その機能を使ってない方々にもアピールとなって良いものです。
良い記事だねっ。
iphoneだと機種やバージョンが違ってもおおよそ同じように使えるからいいのかな?
ツイッターでの入力を真似しようかと思ったけど、気力負けして音声入力で済ませました。
apple恐るべしですね
(^^ゞ
このレポートは素晴らしいと同時に、かなり貴重ですよ。他のブログ等でもこのような内容はお目にかかれないでしょう。健常者にも大変興味深い内容です。
社領さんに何かしら賞をあげたいくらいですね
\(^o^)/
いい記事なのに、社領さんが美人なのか不細工なのかちょくちょく気になって肝心の内容が頭に入らんかったです..
マイネ王らしからぬ良記事・・・大雨降ったら社領さんの責任です。
記事を拝読しまして,いろいろと自省しました。
自分は十分に社会のために役立てているのかと。
長いようで短い人生,日々前に進みたいものです。
貴重な記事をありがとうございました。
すごいいい記事だったにゃ!檜山さんも社領さんもにゃいすにゃ!チップ送りたいにゃー!
なかなかこういうことはIT系のニュースサイトでは知られていないのでもっとマイネ王で取り上げて欲しいにゃ!
社領さんはおもしろ系、真面目系も書けるのですごいにゃ!
ユニバーサルデザインが盛り込まれてるんですね。
アップル製品って。
私は聴覚障害者なので、iMacでもiPhoneでも使っています。
それでも、視覚障害者がいかにして使いこなせるのか、予想も付きませんでした。
この記事は為になります。
シェアさせて頂きたいと、存じます。
モノづくりに携わっていますが、ユニバーサルデザインを盛り込んだ製品は作ったことないです。(汗
こんなヘビーユーザーがいてくれるなら作りがいがありそうですね!
しかし提案しても上司に蹴られそーなのが辛い。(←凡人
私は緑内障という目の病気で、いつか失明するかもしれないとお医者さんにも言われています。見えなくなると何もできなくなるという絶望感に浸っていたこともありますが、今はあまり考えないようにしています。この記事を読んで、何もできなくなるわけではないことに気付かされました。私のために書かれた記事をありがとうございました。
すごい。見えないのに人が操作しているところが分かるってすごい。
ライターが株式会社人間の方だということにも驚き!
いい企画でしたっ!
すごいですね。iPhoneの機能。万人に対してのサービスが凄い。使いこなしている檜山さんもすごい。
ユニバーサルってこういう事なんですね。
中身の濃い記事でした。
大変中身のある良い記事でした。
👏👏👏👏
これからも、2回に1回で結構ですので、こんなレポートを期待します。
檜山さんすごい!
としかいいようがありませんね。
この企画を考えた社領さんも。
それにApple も。
(考えようによってはこんな機能いらないから安くしろ。なんて人がいるかも)
社領さんてちゃんと変換候補に入っているんですね。
これもまたすげーな。
私たちの周りには優秀な製品があふれていますが、設計者が意図した機能のどれだけを使っているのだろう。自分自身の頭(本当の能力)もだけど・・・
とにかく「すごい! すごすぎる!!」の一言です。
文字入力はまさに「本物のブラインドタッチ」ですね。私は絶対できない自信がありますσ(^_^;)
実は、前の職場で、インタビューされていた檜山さんと同じような方がiPhoneをVoice Overを駆使して使ってはったのを記憶しています。その方もiPhoneを私以上に機能をご存知でしたので、印象に残っています。
貴重なインタビュー記事、関心高く拝見させて頂きましたm(_ _)m