トヨタが「できる人」を作る秘密の仕組み

マニュアルを超える「標準」の威力

トヨタの「標準」とは、いったいどのような仕組みなのでしょうか(写真 :kou / PIXTA)
後輩がなかなか仕事を覚えない、言われたことを守らない、仕事が必要とされる水準まで達しない――。そんな悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。
その点、トヨタには「標準」という仕組みがあります。過去の失敗などが豊富に織り込まれた作業手順のことで、それをきちんと守れば、どんな人も一定水準以上の仕事ができるようになると言います。
「標準」は、簡単に言えばどんどん更新できるマニュアルのようなもの。どんな職場でも作ることはできます。『トヨタの失敗学』よりその効用と、正しい使い方についてご紹介します。                      (文中、敬称略)

トヨタが大事にする「標準」の威力

トヨタの職場でとても大事にされているものがあります。それが「標準」です。

標準とは、現時点で最善とされる作業のやり方や条件のこと。過去の失敗からの教訓が豊富に織り込まれています。それらを踏まえたうえで「このやり方で作れば、必ずうまく作れる」という方法なので、標準を守れば誰が作業しても同じ成果が得られます。だからこそトヨタの各職場で広く用いられているのです。

「標準」は日本人同士はもちろん、外国人に指導する際にも大きな力を発揮します。インドネシアの工場で現場従業員を指導した経験がある富安輝美はこう語ります。

「日本人同士ならあうんの呼吸でわかることも、海外ではイチから説明が必要です。しかし標準さえ丁寧に教えてあげてそれが共通語になれば、言葉が通じなくても技術が未熟でも失敗を防ぐことができます。

私が指導したある現地従業員は、標準に沿って仕事を着実に進めたことで、技能五輪の世界大会にまで出場して見事、銀賞を獲得しました。やすりさえ使ったことがない人がそんな賞まで取ってしまうのですから、やはり標準の効果は素晴らしいものがあります」

具体的には、作業要領書や作業指導書と言われるものが「標準書」に該当します。この標準書は、単純に作業の手順を記載してあるだけでなく、間違いやすい点や判断に迷いやすい点が「要所」として具体的に記載されている点がポイントです。

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