邦楽と洋楽、両者の大きな違いは使われている言語にあります。 それぞれ邦楽は日本語、洋楽は英語であることは自明の事実ですね。
さて、英語と日本語の両者は明らかに違う言語と言えます。 単語も発音も文法も、何もかもが違っています。
そこで、英語と日本語それぞれが言語の世界においてどのように扱われているのか、またそれらのルーツはどうなっているのか気になってきました。 英語も日本語も、現在世界で使われている言語のどれもが元より存在したわけではありません。 これらの言語の起源に何かしらのヒントが有るかもしれません。
英語について
英語はイギリス・イングランド地方を発祥とする言語で、現在では世界各国で話されている言語です。 英語が世界中で用いられているのは、超大国のアメリカ合衆国が公用語に英語を用いているからでしょう。
言語学上では、英語は印欧語族(インド=ヨーロッパ語族)という語族の中のゲルマン語派に分類される言語です。
印欧語族
言語学において、言語はその起源や性質によって様々分類されています。 この分類はおおまかな部分から細部に至るまでありますし、同じ言語だとしても地域によって分類されていることもあり、特に細かいところまで追っていくときりがないので、本記事では大枠で捉えていくます。
印欧語族(インド=ヨーロッパ語族)とはその名の通りインドやヨーロッパに広がる言語を一括りにした語族です。 印欧語族は非常に大きなくくりで言語を分類するカテゴリで、印欧語族に分類される言語としては英語やドイツ語などのゲルマン語派、フランス語やイタリア語などのロマンス語派、ロシア語などのスラブ語派、サンスクリット語などのインド語派などが分類されています。
以下の図に印欧語族に所属する語派や言語をおおまかにまとめました。
15世紀中ば〜17世紀中ばの大航海時代においてヨーロッパ諸国が海外進出した影響もあり、印欧語族の言語を公用語としている国は100を超えています。
ゲルマン語派
ゲルマン語派とはゲルマン祖語より分化した英語、ドイツ語、オランダ語などの言語です。 ファンタジー作品などでお馴染みのルーン文字も、ゲルマン語派の文字に分類されていますね。
ゲルマン語派の特徴としては、グリムの法則という法則に沿って語音が変化することや、ゲルマン祖語やゲルマン祖語の元となった印欧祖語に備わっていた文法上の数・性・格の要素を引き継いでいる事があります。
ただ、こういったゲルマン語派の特徴は人口に膾炙するにつれて次第に簡略化されていきました。 英語においては文法上の数と格を表現するための単語の変化は最小限になり、文法上の性に至っては消滅しています。 文法上の数・性・格が未だに残っている他のゲルマン語派の言語と比べると、英語は良く言えばシステマチックな覚えやすい言語、悪く言えばいいかげんな言語なんですね。
日本語について
一方の我々日本人が普段から使っている日本語、この言語は言語学の分野において極めて特殊な言語なのです。 それは日本語がどの語族、どの語派にも分類されていないためです。
英語については印欧語族、ゲルマン語派に分類が可能でしたが、日本語はそういった分類が未だはっきりとなされていません。 そのため、日本語は日本語族という独立した語族に便宜上カテゴライズされています。
日本語はどこから来たのか 日本語は何者か 日本語はどこへ行くのか
日本語は現在においてもその起源がはっきりとしていない言語です。
日本語には漢字が使われているため、中国や朝鮮が日本語の起源と思っている方も多いでしょうが、日本語は中国語や朝鮮語とは似ても似つかない言語とされており、これらとの関連性は認められていません。
また、アルタイ語族という北東アジアから中央アジア、東欧にかけての広い範囲で話されている言語の語族に分類されるという説もありますが、これも中国語や朝鮮語と同じく関連性を見いだせてはいません。
これらの他にも様々な言語との関連性をこじつけて日本語の起源を主張する学説があるものの、どれも仮説の域を出るに至りません。 多くの学者が研究していても解明されない日本語は不思議な言語と言ってもいいですね。
音楽におけるアウェーな言語である日本語
では、ここで音楽の話に戻してみましょうか。
現在のポピュラー音楽は西洋音楽の音楽理論をベースになっています。 「ドレミファソラシド」の音階はもちろん、音の基準や和声、進行や終止などの、今や音楽においての常識となっている事柄は全て西洋音楽の音楽理論から由来しています。
このように西洋音楽がベースとなっているのであれば、当然歌詞にはゲルマン語派やロマンス語派の言語を使うことが前提になっているかもしれませんね。 また、現在のポピュラー音楽を形成している音楽理論の中でもとりわけ大きな存在であるバークリーメソッドもまた、アメリカ合衆国が発祥の地であるため、これもまた歌詞には英語をはじめとするゲルマン語派やロマンス語派の言語を使うことが前提となっているでしょう。
そんな世界の中における日本語とは、まさに異質な存在です。 西洋音楽の音楽理論とそこから派生した音楽理論に支配されている現在の音楽では、日本語が使われるなんてことは想定の範囲外だったでしょう。 そのため、日本語は現在のポピュラー音楽と食合せが悪くなってしまい、歌詞に日本語を用いる邦楽がいわゆるダサい音楽になってしまう原因の1つかもしれません。
次回は更に細かく、音楽における英語と日本語の違いを見てみることにしましょう。