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【佐々木正明のリオ日誌】
1分23秒間のオマージュ 会場で3度流れた君が代の“アダージョ” 激闘のレスリング女王を癒やす
表彰台に立った伊調は、そうした地元の人々の応援に感謝するかのように、四方に向かって何度もお辞儀をした。
金メダリストは会場を去る際、マスコットのビニシウスのぬいぐるみにサインを書き込み、観客席に投げ入れるしきたりになっている。伊調からの貴重なプレゼントを受け取ったブラジル人がそのサインを見せてくれた。ぬいぐるみには「伊調馨 58キロ級 GOLD」と記されていた。
伊調は2014年11月に母を亡くしていた。試合終了後、報道陣に囲まれ、「こんなにも天井を見上げたオリンピックはない。必ず上を向いて母と会話してから試合に臨みました。最後も母が助けてくれました」と言った。
国歌斉唱が終わったとき、伊調はやはり天井を見上げた。きっと、天国の母へ、4連覇を果たしたことの報告だったのだろう。
そして、最後の土性の対戦相手は、伊調のときと同じくロシア人選手だった。私の隣にはロシア人の女性が元レスラーの夫とともに、観戦していたが、やはり土性が勝ってしまうと、そうそうと会場を後にした。
去り際、その女性がぽつりと私にこう言った。
「日本の女性はとても強いのね」