人民元覇権の到来か…世界銀行、中国で初めてでSDR建て債券発行

人民元覇権の到来か…世界銀行、中国で初めてでSDR建て債券発行

2016年08月18日10時03分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
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  人民元覇権が到来するのだろうか。世界銀行は12日、中国で初めて特別引出権(SDR)建て債券を発行すると明らかにした。

  SDRは国際通貨基金(IMF)加盟国が緊急時にIMFから資金を借り入れられる権利だ。無形の通貨のため額面価はSDRと表示されるが、決済には国際的に通用する通貨が使われる。世界銀行はこのSDR債券を取り引きできる通貨として人民元を選択した。ジム・ヨン・キム世界銀行総裁は「グローバル金融市場で中国の役割増大を支援することになりうれしい」と所感を残した。規模は20億SDR(約2850億円)にしかならないが、人民元の国際化を推進する中国としては意味ある一歩だ。

  中国の人民元国際化戦略は米ドルの影響力を低くし国際決済通貨を多角化する一方、人民元の地位を高めるところにある。人民元を国際決済通貨に格上げさせれば輸出入の為替相場変動から自由になるなど中国中心の「ゲームのルール」を作ることができる。SDR債券発行はこの戦略のスタートラインと言える。主要金融機関と中国政府が人民元決済債券を発行することによって人民元の流通を活性化するという腹案だ。中国は政府系銀行を利用して今月中に3億~8億ドル規模のSDR債券も発行する。来月4~5日に杭州で開かれる主要20カ国(G20)首脳会議を念頭に置いた措置だ。日本経済新聞は、習近平国家主席が国際通貨としての人民元の「実績」を知らせたいだろうと分析した。

  事実中国もこうした内心をあえて隠さなかった。ドル覇権に息を殺している国際機関と欧州連合(EU)、英国などの同調を引き出せるだろうという判断からだ。カギは国際社会で「人民元を安心して使っても良い」という信頼を植え付けることだ。中国は政策的に外国為替市場に介入しており投資にはリスクが伴う。このためSDR債券発行はIMFの公信力を利用して一種の「経歴」を積もうとする措置と解釈される。

  SDRは各構成通貨の加重値により価値を決めるためSDR債券は構成通貨の一部が切り下げられても損失は制限される。例えば人民元で決済するSDR債券を買い取った場合、人民元の価値が100%下落しても債券の価値には人民元加重値である10.92%だけが反映される。カトリック大学経済学科のホ・イン教授は「事実上取り引きが難しいSDRと人民元をまとめて市場性を持たせるという意図で人民元国際化の第一歩」と分析した。特に2021年に中国共産党創設100周年を控えた習近平指導部は2020年までに人民元を「交換でき自由に使える通貨」にするという目標だ。最近人民元の国際化にスピードを出しているのはこのためだ。

  実際に世界での人民元の決済比率が6月基準で1.72%まで上昇するなど人民元の使用が拡大しているという点は肯定的なシグナルだ。使用量増加とともに市場の信頼を背負えば国際通貨としての影響力が一気に成長することも期待できる。金融研究院のイ・ユンソク国際金融研究室長は「人民元取り引きが増えるには民間での使用が増えなくてはならず、信頼問題が障害だった。貿易など実体が後押しする中で金融部門が拡大してこそ人民元が独立的に国際通貨に立ち上がれる」と説明した。

  しかし中国の人民元国際化戦略は根本的な矛盾を抱えている。人民元の信頼向上のために当局の介入を自制し市場を開放すれば人民元の価値と信頼下落につながる可能性が大きい。昨年8月に人民銀行が人民元を切り下げるとすぐ人民元の価値は手がつけられないほど急落した。4兆ドルに達した中国の外貨準備高は3兆2000億ドルまで減った。当局がドルを放出して外国為替市場に介入したという情況証拠だ。特に2015年11月~2016年1月には毎月1000億ドルずつ減少した。こうした外貨準備高減少は中国の対外信用度に悪影響を与える。SDRも国際的に通用する通貨ではないためSDR債券を発行したからと人民元の信用が上昇したとは言いがたい。

  中国当局はSDR債券発行を決めた7月に広州、上海、北京など大都市の銀行を対象に外国為替売買調査表提出、海外送金事前報告など強力な外国為替管理策を施行した。人民元国際化への欲望と現実的限界がぶつかった格好だ。

  また、中国が莫大な貿易黒字を記録する点も人民元国際化の障害物だ。米国はレーガン政権時代に双子の赤字で世界にドルを供給し、基軸通貨としてのドルの影響力を強固にした。中国は現時点では米国より経済の基礎体力が弱く人民元拡散に限界がある。
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