そんな大島さんが、自身初となるフォトエッセイ『ボクらしく。』を8月半ばに刊行した。
前回、KAI-YOUが行ったインタビューでは、女装のこと、AV業界のこと、性別のカテゴリーについての想いをストレートに語っていただき、誰もが「自分らしくありのままに生きる世の中になればいい」という言葉が印象的だった大島さん。
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現在26歳。日系ブラジル人。私たちからすれば、決して平坦ではなかったのではないか? と想像してしまう様なその人生や、挫折、恋愛観などを赤裸々に綴った書籍の刊行にあたり、再びお話をうかがった。
イケてない時代もさらけだした! 覚悟は決めてます!
──前回のインタビューの反響はいかがでしたか?大島 良い意味で普通の雑誌であればカットされる部分も書いてくださったので、僕の考えを読者に伝えることができたのかなと思います。
最近は、僕に対するイメージのつじつまも合ってきたというか、業界からもファンの方からも反響はたくさんいただきました。
──印象に残っているファンからのコメントはありましたか?
大島 Twitterでは「既成概念や、性別のカテゴリーをぶち壊していってほしい」というようなコメントも見ました。果たして僕がそうなれるかわからないですが、「男/女」って単純に考えていた人が、それだけじゃないんだって考えるきっかけができたら嬉しいです。
──では改めて、これまでの生い立ちについてお話をうかがいます。ブラジルにはいくつまで住んでいたのですか?
大島 2歳までですね。5歳の時にも2ヶ月だけブラジルに帰国したんですが、戻ってきてからはずっと日本という状態です。
小・中学校の時は、どちらかというとお調子者で、目立ちたがりでした。髪の毛も天然パーマで、小太りで冴えない男子な感じだったので、自分のビジュアルに関しては全然自信がなかったです。「一生彼女とかできないんだろうな〜」みたいなことを本気で思ってる少年でした。
今回のフォトエッセイでは、イケてない頃の写真も初公開しています。自分の中ではとてもコンプレックスな部分なんですが、そこまで見せなきゃ意味がないので。
──書籍には、本名も載せられてるそうですね。
大島 AV女優やってる人って、辞めた後も本名を晒すことってなかなかないじゃないですか? それを晒すことで、いくらでも過去の経歴は出てくると思うんです。親戚や友人に迷惑をかけるかもしれないというところで少し悩みました。
──怖くなかったですか?
大島 怖いですね。しかも僕の本名って多分日本に1人ぐらいしかいないですし。住所や電話番号がバレるかもしれないし。
でも、よく芸能人の方々がバッシングを受けると「素人だからって何でもかんでも書いていいと思いやがって」みたいなことを発言されますが、それを望んだのは自分なのになってちょっと思います。僕の場合は有名になりたいという大前提があるので、そこに関してはある程度、覚悟は決めてますね。
ブラジルの記憶 ブロンドのお姉さんが……!?
──ブラジルでの印象深い記憶はありますか?大島 5歳の時の記憶は少しだけ残ってます。もともと日本にきたのは一時的なもので、その後ブラジルに定住する予定だったんですが、僕が日本の保育園で友達ができてしまい、ブラジルに帰るのが嫌だと駄々をこねて、2ヶ月だけブラジルに帰国した時のことです。
両親が僕にできるだけブラジルの風景を教えてあげたいと、いろんな場所に連れてってくれたんです。ブラジル国内を周る大型客船のクルーズツアーに参加した時に、ご両親と姉・弟というスペイン人の家族に会ったんです。外国人って誰にでも気軽に話しかけるじゃないですか? 両親もそういうところがあったので、すぐに仲良くなったんです。
その家族とは2泊3日のツアーの間ずっと一緒にいたんですが、お姉さんが、北欧系の血が入っているのか、色白でブロンドの髪の毛で、とても綺麗な人だったんですね。多分15歳ぐらいで、思春期なのか家族とはあまり一緒にいない感じで。
甲板のプールに両家族で遊びに行った時にも、そのお姉さんはいなかったんです。しばらく遊んでから甲板にあがってプールの方を見てたら、奥からそのお姉さんが泳いでくるんですよね。ブロンドの髪が水になびいて、とても美しかった。
一瞬スッと水に潜ったと思ったら長い髪の毛をうしろにまとめて甲板にザッて上がってきたんです。でもね、ブラを着けてなかったんですよ。「え……」と思ってたら、男性用の水着をはいてるんです。唖然としてたらこっちに来て、僕の頭をポンッて撫でてスッと向こうに行ってしまった。お姉さんだと思っていたら男性だったんですね。
その光景がすごく記憶に残っていて、それが今の僕の女装に繋がってるかはわからないんですけど、もしかしたらその原風景が自分の生い立ちに関係してるかもしれないとは思います。
──女性だと思っていたら、男性だった。子供からしたら衝撃的ですね。
大島 昔友達の子供を預かったことがあって、その当時まだ僕は男性の格好をしていたんです。だから一緒にいるときも、もちろん男の声で遊んでたら「お姉ちゃん声ガラガラだね」って言われて。当時から髪の毛は長かったので、僕のことを女性だと感じていたらしい。すっぴんで男の姿をしてたのに、ちょっと髪の毛が長いというだけで、簡単な記号の違いだけで判断しちゃうんですね。
ブラジルの両親が緊急来日! 女装をカミングアウト
──ご両親は今現在、ブラジルにお住まいなんでしょうか?大島 そうですね。
──あまり会わないんですか?
大島 1年ほど前に一度だけ日本に帰ってきたことがあります。実はそれが女装がバレた時なんです……。
女装で生活しはじめてからは1度も両親に会ってなかったので、男ものの服をひっぱりだして着替えたりして。妹がまだ幼いので「なんでお兄ちゃんは男なのに髪の毛長いの?」とか言われて、誤魔化すのが大変でした。
──ご両親にはどのような形で女装が発覚したのでしょうか?
大島 両親が日本に来た時点で、どうやらすでに勘付かれていたんです。両親に連絡するのに、いつもSkypeを使ってたんです。自分のアカウントのアイコンを、親と話すときは男の格好、友達と話すときは女装に設定し直していたんですが、ある日アイコンを変え忘れて、両親の画面にずっと女装のアイコンが表示されてたらしいんです。
だから、両親はいろいろな思いを抱えて日本に来ていたみたいなんです。仕草も男として振る舞うことはできるので、会った時は普段通りだと思ったらしいんですけど。
でも、後日、ブラジルに帰国した両親から「ところで、あなた女装してる?」ってメールがきたんです。僕はSkypeの件も知らなかったから焦ったんですが、そこは嘘をついてはいけないと思って正直に告白したら、Skypeの件を告げられて。
──女装を知ったご両親はどのような反応を?
大島 一番気がかりだったのは、心が男なのか? 女なのか? ということでした。というのも、母親はカトリックなんですが、カトリックは古い宗派なので、同性愛は厳禁です。
ブラジルはニューハーフがけっこう多い国なのに、カトリックも多いため、同性愛者が迫害される傾向にあって、一緒に暮らしてたときは両親もTVにニューハーフタレントが出ると顔をしかめるんですよ。だから「この両親には女装は絶対言えない」とずっと思っていました。でも聞かれたからには正直に「心は男です」って伝えたんです。
でも、心が男でも男性が好きな人はいるじゃないですか? 両親は多分そこまで考えていなくて、心が男なら女が好き、心が女なら男が好きという単純なロジックで聞いてきたのかもしれません。
「自分のことを女だと思ったことはありません」と返したら、「安心しました、でももしあなたの心が女だったとしても、私たちは認める気でいました」って返信があって、それはすごい決断だなと思って。でも同時に、「100%理解し合えることは絶対ないだろう」とも思いました。「認めるつもりでいました」というのは、理解するということではないので。
──完全な理解は得られないのでしょうか?
大島 セクシャル・マイノリティの方々を含め、頭ではわかっても心では理解できないということが起こりやすいと思いますね。
以前、ゲイの友人が、母親に「実はゲイなんです」って話したら、すごい泣かれたという話を聞きました。片親で、唯一の一人息子だったので、親一人子一人だったけどカミングアウトしたら、母親を傷つけ、自分も傷つくということを体験したと。その数日後、母親が「これあげるわ」って持ってきたのが、母親が昔着ていたドレスだったんです。
友人は「ゲイっていっても心が女なわけじゃないのにね」って笑ってたんですけど、僕はそれを聞きながら、これはすごい重い話だなと思ったんです。
母親が理解しようとしてくれたのはわかるんですが、当事者からすると女になりたいわけじゃないので、「理解はしてもらえない」という事実がそこにあるとすごく感じて。
──ブラジルに戻ったことがないというのもそれが理由なんでしょうか?
大島 一番の理由は、まだ小さい妹に説明するのが難しいからです。ただ、ブラジルに遊びに行くとかは別に問題ないんです。でも僕のような人種が、海外でどういう扱いになるのかをあまり知らないので、不安もあります。
海外では、一部の国を除いて、「女になりたいわけじゃないのに女装をする」という価値観があまりない。例えばタイだと顕著ですが、「女性ホルモンを打たない、手術をしない人」は、「ニューハーフになりたいけどお金がなくてできない人」という扱いになると思うんですよ。
──「男の娘」って、日本特有の文化なんですかね?
大島 中国とか韓国とかアジア圏中心のような気がしますが、アメリカなどにもCross Dresser(異性装者)があるので、そういう性癖の人はなんとなく分類としては存在しているみたいです。
「国籍がブラジル」ということ
──国籍はブラジルですよね? ブラジル人としてのアイデンティティはお持ちなんですか?大島 ほとんど日本で育ってきたので、あまりないです。でも再認識する場面はたくさんあって、例えば、ブラジルはちょっと前まで兵役がありました。韓国みたいにガチガチじゃなくて、免除の申請をすればなんとかなるぐらいの軽いものではありますが、基本的には行かないとダメ。でも、僕の場合は日本にいるから行けませんっていうのが通るんです。
その申請はブラジル大使館で行うんですが、場所は東京と名古屋。僕は大阪に住んでいたので、名古屋まで行かないといけないんです。そのために仕事を休んだり、遠い道のりを行って数分で終わるような申請のために長蛇の列に並ぶんですが、やっぱりこういうことをしないといけない国籍なんだというのは改めて感じました。
あと、選挙に行けないことも自覚する部分です。どれだけ政治のニュースを見ても自分は投票に行けない、かといって「外国人の参政権を認めろ!」とは思ってないですけど。帰化しちゃえばいいんですが、その手続きも1年くらい役所に通い続けないといけなくて。国籍が外国人だからこそ直面する課題は感じます。
AV女優になる前は、体育会系の営業マン!?
──AV女優になる前にはどんなお仕事を?大島 大学に落ちて浪人生活しながら、バーテンダーなどのバイトをしてました。一度、就職して会社員になって。その会社が潰れてからは、バイトを転々とするフリーターでしたね。オンラインゲームの会社で事務をしたり、オカマバーで、女装ではなくスーツ着て働くボーイをしたり。
──当時、仕事中は普通に男性の格好だったんですか?
大島 23歳で完全に女装の生活に切り替えるまではずっと男性の格好で、もちろん仕事も男性が就く仕事でした。会社員時代は、ものすごい体育会系の会社で営業をしていたんです。
──体育会系ノリはどうでしたか?
大島 高校を出たばかりで叩き直されたというか、社会のルールを考えるのにはいい機会になったと思います。
ただ、社会通念上は、良いことだとは言い切れない部分はありました。それでも僕が入ったときはまだマシだったんです。昔の先輩の話を聞いたら、上司がずっと竹刀を片手に電話でアポをとる社員の横を回ってたとか(笑)。
僕らも毎朝、社訓を絶叫したり、決起会という名の飲み会で、毎月の抱負を居酒屋で大絶叫するんですよ(笑)。
──大島さんも叫んでたんですか?
大島 「今月からはバンバン売っていくんで、よろしくお願いします!」みたいな(笑)。
──営業成績はどうでしたか?
大島 可もなく不可もなく……。法人相手に携帯電話を売る仕事だったんですけど、大企業だとすでに持ってるから中小企業や零細企業に行って「1台どうですか?」みたいな仕事でした。月に30台売ってくれないと困るって言われるんですが、僕は月10台ぐらい。越えられないぐらいの目標じゃないと意味がないという会社でした。
ポジティブな大島さん
──お話をうかがっていると大島さんは、どんな場面でもそれほど悲観せず、ポジティブですよね?大島 そうかもしれません。今回の書籍も、お世話になっている編集長に僕から持ちかけたんです。最初は写真集をつくりたいという話で。
僕は正直、自分が文章がうまいとは思えなくて、最初からエッセイを書くという発想はなかったんです。でも、話をしたら、TVに出てるアイドルの写真集ですらそんなに売れないのが現状だと。それで「フォトエッセイにしよう! 薫ちゃんの考えも人生も多分に盛り込まれてる本なら俺も買いたいと思う!」と言われまして。
──執筆はスムーズに進んだんですか?
大島 いえ、全然。僕は、いろんな人が僕を見て「あの子はなんでもないんだね」みたいな結論が出た時に、大島薫というアイコンが完成するという考えで、曖昧な存在の代表になりたいんです。でも、文章ってある種の結論が見えないといけないじゃないですか? だから、執筆中はすごい辛かったです。
曖昧な存在を結論づけるとは、一体どういうことなんだろうと。生い立ちは時系列に沿って書けばいいんですが、考え方とか未来のことを書くのは難しかった。
その時も編集長から「薫ちゃんはどうして自分を客観視するの?」と言われて。人は大抵コンプレックスにまみれているし、落ち込んだりとか悩んだりするものだから、人に見せることばかり考えて行動している僕には、親近感がわかない。リアリティを感じられないと。
だから、このエッセイはもっと当事者でないといけない。普通の人が何かに悩んだりするように、僕の悩みも出ていないと、つくられたものになってしまう。
もちろん僕だってバッシングされたら傷つくんですよ。よくエゴサするので、いろんなこと書かれているのを見て落ち込むんですけど、それもそんなに悪いことじゃないと思っちゃうんですね。
それより話題に挙げられない方がよくないじゃんって思います。好きの反対は無関心じゃないけど、名前がそれだけつぶやかれてるってことですから。やっぱり僕は人を楽しませることが自分の楽しみになってるんですよね。自分が隠したいことをさらけ出すのも、問題発言もふくめて反応を求めちゃうんですよ。あんまり後先を考えてないところもあります。
乳首出しが衝撃的な表紙!
──さらけ出すといえば、書籍の表紙も衝撃的ですよね?大島 表紙はだいぶ揉めました(笑)。上半身裸で砂浜にいて、地平線をバックにしている写真。撮影したらとても良いのが撮れたんですよ。
でも、締め切り直前の会議で表紙の乳首はマズくなったと言われて。別に何の問題もない写真のはずですが、大手の書店はお客さんの目を気にするので、女性の裸体のような印象を抱かれそうだから嫌がられて、売り上げに響くと。
僕も熱くなって「今さら無理じゃないですか?」と詰め寄ると、編集長が「今はコンプライアンス的な問題もあってしょうがない」と。「僕の乳首が何のコンプライアンスにひっかかるんですか!?」って。大の大人が乳首で激論を交わす状態になって(笑)。
──最終的にどうやってそのままいこうということになったんですか?
大島 「より多くの人に届けることを考えても、乳首は出した方がいいと思う?」と聞かれても、僕は「絶対それがいいと思います!」と即答したんです。もちろんインパクトに期待しないと言ったら嘘になりますけど、ただ、それを出せることが男である証明になる、僕が大島薫である証明にもなる。
問題提起でもありますし、性別がすごく曖昧なものの上に成り立っていることについて考えるきっかけになると思いました。この写真以外の表紙は考えなかったです。ただ、より多くの人に届けるという意味では、発行部数が減るかなとも予想したんですが、むしろ最初より増えたんです。
──書籍のタイトル『ボクらしく。』に込められた思いは?
大島 最初は「ボクらしさ」にしようと思ったんです。でも「らしさ」っていうのは、言いきりの形になってると思ったんです。
最終的に女性になりたいニューハーフさんがいて、いつかはやめてしまう女装男子もいます。僕の場合だと、今のこの状態が完成系なので、途中過程で完結してるというのを表したくて「らしく。」という表現を選びました。
──写真では女装も男装も両方されています。衣装選びもご自分で?
大島 もともとカメラは趣味でやっていました。写真も自分で撮ろうということになり、写真の構図も全部自分で決めて、シャッターリモコンを使ってセルフで撮りました。もちろんアシスタントでカメラマンさんやメイクさんはいますが。
──セルブランディングという意味で、こだわった点はありますか?
大島 本のために痩せようと思って糖質制限をしました。僕の中では、理想の男の子像の追求として、華奢であるというのは大事な部分でしたから。骨格的にはキツいところがありますが、痩せられるだけ痩せようと。
女性タレントさんなら綺麗であればあるほどいいじゃないですか? 僕の場合はちょっと特殊で、わざと筋肉を落として脂肪を増やしたりするんです。というのも、AVだと女装していても最後には全部脱いでしまうので、女性っぽく見せるためにあえてぽっちゃりさせるんです。
AVを辞めてからは痩せるために筋トレも再開しました。前のインタビューでも話しましたが、「女装」という考えから外れてきたという部分がより顕著になってきています。
「変態性」について。部分は違えど、普通な人はいない
──人はカテゴライズできないものが不安になりますよね? 九龍ジョーさんの書籍『メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方』の中でも大島さんについて触れています。大島さんを見ていると自分の「変態性」が暴かれると。大島 自分が応援しているアイドルだったり、好きなタレントや芸能人がいる方は、自分の「こうであってほしい」という願望を押し付けるというか、投影してしまうんですよね。ちょっとイメージと違う言葉を使ったりすると、すぐ炎上するじゃないですか?
いろんな人がいろんなことを僕に求めてきたり、願ったりしてくれることがすごく多い。例えば、女性ファンから「大島さん、その見た目なのに男らしいところが好きです!」って言われたりして、その子の中では萌えポイントだったりするわけなんですが、実際はそこまで男らしいわけでもない。ちょっと垣間見えた男らしさが彼女の中で広がってるんですね。好きな人に理想像が投影される「心の鏡」みたいなところは誰にもあると思うんです。
──では、大島さんは、ご自分のことを変わっているとか「変態」だと思われますか?
大島 前のインタビューではセクシャリティについて、その人をジャンルとかレッテルではなく個人として判断してほしいとお話しましたが、「変わってる部分」というのも人それぞれ絶対にあると思うんです。部分は違えど、普通な人はいないんだろうなって。
──変わっている部分は誰しもある部分だから、それが当たり前であると?
大島 特殊な性癖の人たちだけの話に聞こえますが、一般人も時と場合によると思うんです。すごい綺麗なニューハーフさんが登場した時に、ノンケの人が「これだったら俺でもいけるわ!」みたいなことを言う。
同じように、ゲイの人も女性を好きになることもあると思うんですよ。カテゴライズしすぎちゃうと、ゲイの人が女性を好きになりそうな瞬間が来た時、踏みとどまっちゃうんじゃないかと思って。もしかしたら自分の人生を豊かにしてくれる相手かもしれないのに。
きっと人ってたくさんの記号で恋愛をするんだと思うんですよね。ノンケ、ゲイ、ビアンとか関係なく、心のどこかで自分を決めつけない部分は持っててほしいと思います。
──ジャンル、定義、記号から外れる瞬間というのがあって、その時には身を投げ出したほうがいいと?
大島 フラットに考えられる思考は持っておくべきかなとは思います。記号に縛られてていいんですよ、それはその人の好みでもあるから。その記号を一度分解してみて「女とはなんなのか? 男とはなんなのか?」というのをしっかり自分の中で認識すべきかなと思います。
僕の中で変わっている部分があるとすれば「見せたがり」な部分ですね。普通の人だったら躊躇して止めちゃうところを見せちゃう。あと、異常なほどおもしろいものが好きなんです。幼い頃は空気が読めないことも多くて、本当にボケちゃいけないところでボケたり。大人になってからもそういう部分はあるんだと思います。
「その人自身が理解される」世の中へ…
──アメリカで同性婚が認められたという大きなニュースがあって、SNSのアイコンを虹色にするレインボーフラッグなどの動きがありますが、何か思われるところはありますか?大島 僕は、レインボーフラッグはやってません。渋谷区で同性婚が認められる認められないというのもありましたが、もちろん注目してないわけではないです。僕はLGBT(※レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)界隈を含め、市民権を得て認められていくことに関しては賛成です。
ただ、僕が女装や男性との性行為をはじめたことに関して言うと、2次元の影響を大きく受けていて、見た目は女の子なのに男同士でこんなことをしてるみたいな背徳感が重要なファクターとしてあると思うんです。そこに、何かしらの変態性を感じて高まっちゃう人もいたり。でも、それが市民権を得て当たり前になってくると、背徳感はなくなるかもしれません。これも当事者からしたら「僕たちは変態なのか?」と不謹慎な意見になるかもしれませんが。
ニューハーフに関しても先天性と後天性があると思っていて、性同一性障害で幼い頃からずっと悩んできて女性になった人。男性に抱かれる背徳感がいきすぎて女性になる選択肢をとった人。女装趣味で、世間一般からは「変態」と言われる人がニューハーフになるケースだってあるわけです。
今の世の中だと全員「元男のニューハーフ」というくくりにされます。一人ひとり考え方も違うのに、それを一緒くたにするのはちょっと違うなと思いますね。
──そのくくりをとって、「その人自身を見てほしい」ということですね。
大島 少数派の声は届きにくいんです。なかなか公にされないので、不謹慎でも、もっと言っていくべきだと思うんです。じゃないと「その人自身を理解する」段階までには行かないと思います。同性婚には概ね賛成ですが、それだけで理解が進むとは思っていません。
フラッグシップに関しては、基本的にパレード的な運動には参加しないようにしてるんです。以前、GAPの企画には参加しましたが、基本的に誰かに何かを主張して、「同性愛を理解させたい!」とは思っていません。
その活動は尊いものですが、拍車がかかりすぎてしまうところもあって、「絶対に理解したくない!」と言っている人にまで「でもね、こういう現状があってね……」と呼びかけるのも違うのかなと。「理解して!」と訴えるのであれば、理解できない人たちの声も理解する必要があると思っています。
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大島薫 // おおしまかおる
純粋な男性でありながら、男の娘として大手AVメーカーと専属契約をした元AV女優。
現在はタレントとして活動中。
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GAP原宿フラッグシップ店の「OUT IN JAPAN」プロジェクトにおいて、多くの著名人と並び、男の娘として大々的に紹介された。
作家としての執筆活動も熱心に行っている。
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ボクらしく。 (マイウェイムック)
著者:大島薫
発売 : 2015年8月18日
価格 : 1,500円(税込み)
販売元 : マイウェイ出版
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