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 太平洋戦争が要因となった病気やけがで2014年度末現在も治療を受ける元軍人・軍属が全国で238人、うち戦場体験などによる精神疾患で療養中の患者は13人いることが厚生労働省への取材で分かった。入院中の精神疾患患者は6人で、数十年間退院できないケースもあるとみられる。兵庫県内では08年度まで元軍人の男性患者1人が通院。過酷な体験から長い年月を経ても心身の傷が癒えないことが、あらためて浮き彫りになった。

 軍での公務上のけが、病気による治療が必要な元軍人・軍属には、都道府県が戦傷病者特別援護法に基づいて戦傷病者手帳を交付。医療費などが給付されている。

 精神疾患で療養中の戦傷病患者は、04年度末に143人いたが、14年度末には13人になった。高齢化し、亡くなる人が増えているとみられる。兵庫県生活支援課によると、県内では軍在籍中に発症した男性が08年度まで治療を受けていたが、09年に死亡している。

 また、他の病気やけがで治療を受けている県内の戦傷病者は、15年度末時点で9人と判明。戦争体験が要因となった呼吸器疾患で多可町の元2等兵の男性(90)と加西市の元1等兵の男性(94)が、けがなどによって加古川市の元軍属の男性(87)がそれぞれ入院している。通院中は88~94歳の元軍人6人。

 戦争と障害者の問題を研究してきた清水寛・埼玉大名誉教授によると、1937年の日中戦争から45年の終戦までに、療養施設に収容された戦傷病患者は約26万人。うち精神疾患患者は約1万4千人いたという。

 清水名誉教授は「戦争はおびただしい数の戦傷病者をつくる。特に戦争に行って精神疾患となった患者は家族から家の恥のように言われ、社会復帰できずに病院で亡くなるなど、“復員”が果たせないこともあった。悲惨な状況を繰り返さないために、戦傷病者の存在を忘れてはならない」と指摘する。(斉藤正志)

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