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1話 団の姉御にご挨拶
『団の姉御にご挨拶』
西南西の神社、猿神宮から戻ってきたグランは、甲板にカタリナの姿を見つけた。
「ああ、団長か。しかしキミはよくこう次から次へと面倒事を……」
「あの、ごめんなさい……」
カタリナの目の前にあったのは、アンチラが空に落ちそうになったグランを助けるために、如意棒をグランサイファーに突きたてたためにできたものだった。
「んん? その子は?」
「ああ、カタリナ。新しく団の仲間になったアンチラだ。よろしく頼むよ」
「アンチラです。よろしくお願いします」
アンチラはそう言って礼儀正しく腰を折った。
その勢いで、彼女の毛並みのいい尻尾がふわりと宙を舞う。
カタリナの目がその尻尾に機敏に反応したことを、グランは見逃さなかった。
「んんっ。ごほん。……まあ、なんだ。アンチラ、だったか。丁寧に挨拶してくれて、ありがとう」
「いえ。カタリナさんは団でもいろいろと取り仕切っている方だとうかがいました」
カタリナはアンチラの言葉ににっこりと笑いかけたあと、一転してグランに厳しい表情を向けた。
「だがな、団長。しっかりとはしているようだが、彼女はまだほんの子供じゃないか」
カタリナの言葉にグランは腕を組んでたははと笑った。
「まあ、そうなんだけどさ。アンチラにはアンチラの目的があるみたいだから」
「目的?」
「ボク、テンジクへ行きたいんです」
「テン…ジク…?」
「やっぱりカタリナも知らないよなぁ。俺も、他の皆も、噂すら聞いたことがない島なんだ」
「イスタルシアへ行くみなさんの船なら、聞いたことすらないような島にも行くことがあると思うんです。あるいは、イスタルシアにならテンジクの情報もあるかもしれません。ボク、どうしてもご先祖様やサンゾー様が向かったっていうテンジクへ行きたいんです」
「……話は分かった。だがな、アンチラ。キミはまだほんの子供だ。それは、今すぐでなければならないことなのか?」
「……そ、それは」
アンチラは言葉に詰まってうつむいてしまった。
「うん。まあ。それも、そうなんだけどさ」
だが、カタリナの言葉にグランは腕を組んでたははと笑った。
「ヤイアー! 待つですー! べらめえこんちくしょうめー!」
「あはは! とことことこ~……。クムユおそ~い」
真面目な話をしている横を、団の年少組がドタバタと走り抜けて行った。
「…………」
「…………」
「…………」
「ま、なんだ。うちでそんなこと言っても今更だろ。な!」
「団長! キミが言うな! キミが!」
顔を赤くしたカタリナはグランに喰ってかかった。
「キミの人望は大したものだと思うし、私も認めるところだ! しかしなぁ! 私は全部が全部を認めたわけではないぞ!! コラ、聞いているのか!」
そんなカタリナをよそに、グランはそっとアンチラに耳打ちをする。
「カタリナさん、ご迷惑はおかけしません。ボクもお供に加えてもらえませんか?」
アンチラはそう言って、まるで握手を求めるかのようにカタリナの手の前へ、毛並みのいい尻尾をくるんと差し出した。
恍惚とした表情になったカタリナを横目に、さ、次行くか、とグランは甲板を歩き始めた。
「わ、私は全部が全部を認めたわけではないぞ!!!!」
「カタリナさん、もうちょっともふもふしていかれます?」
続くかは不明です
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