古本の“懐かしいにおい”の正体を科学的に解説
図書館などで感じる古本の独特なにおい。その香りの元は、インク、紙や装丁に入っている化合物です。本には、バニラやアーモンドなどの香り成分と同じ化合物が含まれています。また、古本のにおいについて調べることで、本が作られた年代や適切な保護方法などを調べることもできるのです。
- シリーズ
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SciShow 2016年5月14日のログ
- スピーカー
- Michael Aranda(マイケル・アランダ) 氏
古い本のにおいはどこから生まれる?
マイケル・アランダ氏 図書館や古本屋に入ったら、古い本のにおいに囲まれます。
わかるでしょう。少しカビ臭くても、バニラやコーヒーまたは切ったばっかりの芝生のにおいも入っているような香り。それとも、新しい本のパリッと新鮮なにおいのほうが好きですか?
本のにおいがそれほど独特なのは、なぜなのでしょうか?
それはインク、紙や装丁に入っている化合物が原因となっています。
紙は木材パルプから作られますが、有機化合物、すなわち炭素を含む化学物質がいろいろと含まれています。
具体的には、紙には、ポリマーセルロース、グルコースの分子の長鎖が、植物細胞にみられる複雑な化合物リグニンと一緒に含まれています。このリグニンは、時間が経つと光や熱、湿気の影響を受けて、破壊されていきます。
この過程で、簡単に気化する揮発性有機化合物を放出します。この揮発性有機化合物にはさまざまな種類があって、結局どれが放出されるかは製造業者が使った紙や装丁によって決まります。
例えばアーモンドのにおいがしたら、おそらく酸素と二重結合した炭素が炭素のリングについているベンズアルデヒドのにおいです。
ベンズアルデヒドは自然界ではアーモンドに入っているので、アーモンドのにおいがすると感じるでしょう。
バニラのようなにおいは、バニリンのおかげです。バニリンはバニラのにおいや味の原因の化合物です。
甘いにおいがするとしたら、原因はおそらく炭素のリングに別の炭素が接続した形のエチルベンゼンでしょう。エチルベンゼンはプラスチック製造でよく使われていて、インクやペイントにもよく入っています。
花の香りがする場合は、きっとアルコールの一種の2-エチルヘキサノールです。溶媒でよく使われます。
新しい本は、違う種類の揮発性有機化合物を生み出します。近代的な製造プロセスでは、過酸化水素が紙を白くするために、耐水のためにアルキルケテンダイマーを使います。
科学者や歴史家は、揮発性有機化合物を調べることによって、古い書籍の年齢および状態について調査することができます。例えば、水や煙の影響を受けたかもわかります。
さらに、古い本のにおいについて調べることで、歴史家は品質が下がった本を見つけ、その原因を特定し、より優れた保存・保護の方法を発見することもできます。
本に書かれた言葉からだけではなく、本のにおいからもいろいろ学ぶことができるんですね。