News Up なぜ人気？ 若者はまる 俳句かな8月18日 12時38分

飲料メーカーの伊藤園が主催している「新俳句大賞」。
今回で２７回目となったコンテストには、これまでで最多の１８６万句余りが寄せられました。このうち、実に９２．５％にあたる１７２万句余りが高校生以下の作品でした。
７月に受賞作品が発表され、最優秀賞にあたる「文部科学大臣賞」を受賞したのは、応募当時、中学３年生だった埼玉県の男子生徒が詠んだものでした。

「ただいまの 静かに響く 金魚鉢」

このコンテストは、俳句に必要な季語がなくてもよいといった自由さが人気を集めていて、授業の一環で作品を作り、応募する学校が多いということです。

インターネット上でもさまざまな俳句が投稿されていて、ツイッターには、思わずにやりとさせられるものも多く見られます。

「迎え火を 息子に任せ 仕事中」
「満月が 金メダルひとつ おすそ分け」
「夏の日の 影のあなたに 触れている」
「夏休み 部活がないと めっちゃ暇」

俳句のイベントに参加する若い人も増えています。
エッセイストの千野帽子さんや、小説家の長嶋有さんなどが参加する句会の「東京マッハ」。
この句会は、作者を伏せた状態で参加メンバーの俳句を発表し、観客も含めた投票で人気を集めた作品を批評します。
句会は５年前から始まり、チケットは毎回、すぐに売り切れる状態だということです。

初回からのメンバーの１人で、俳人の堀本裕樹さんによりますと、最近は２０代から３０代の若い観客も増えているということです。
堀本さん自身も句会を主催していて、ここ１年ほどで大学生が参加したり、まったくの初心者の人が参加するようになったということです。

その理由について、堀本さんは「芸能人が俳句の出来を競うバラエティー番組が人気で、その影響もあって俳句に興味を持つ人が増えたのではないか。そして、１７音の中でいかに日本語を駆使していくかというところに新鮮さを感じるのだと思う」と話しています。

俳句に情熱をかける高校生もいます。
ことしで１９回目を迎える「俳句甲子園」。近代俳句を確立した正岡子規のふるさと、松山市で開かれる、高校生の俳句の日本一を競う大会です。
ことしは、過去最多の３４都道府県の１０２校、１３７チームが予選に参加しました。

８月２０日から始まる全国大会を前に、出場校の１つ、東京家政学院高校の俳句同好会を訪ねました。
全国大会では、与えられた季語やキーワードを使った俳句を詠んで、対戦相手と批評し合います。
この日は、相手からの質問を想定して、どう返すかを話し合っていました。
「散文的なニュアンスが緩やかな気だるさを表している」
「切れ字を使うと大げさになってしまうから、あえて使わない」
１７音に込めた思いをどう表現すれば伝わるのか、１つの句に１時間ほどかけて、時には激しく議論していました。

同好会で部長を務める３年生の大西菜生さん（１７）は、附属中学の３年生のときに同好会に入りました。それまで俳句を作ったことはなかったといいますが、徐々に俳句の奥深さにはまっていったといいます。
「１７音で表せる世界は狭いと思うかもしれませんが、その裏には作者の自由があり、広くていろいろな意味が込められている。俳句は難しいけど、作っているといろいろな驚きや発見があるところが魅力です」と話していました。

なぜ、若い人たちの間で俳句の人気が高まっているのか。
高校生のときに「俳句甲子園」に出場した経験もある俳人の神野紗希さんは、若い人ならではの理由があるのではないかと指摘します。
「ツイッターやＬＩＮＥなどのＳＮＳで短い文章のやり取りに慣れている若い人にとって、俳句の短さは相性がいいのではないか。また、俳句は、作者だけでなく、読み手の解釈が加わって完成する、いわばコミュニケーションを求める文芸でもある。今の若い人たちにとって、俳句はコミュニケーションのツールとして合っているのだと思う」と話しています。

「短さが 人気の秘密 若者に」
たまには、静かに１７音と向き合ってみるのはいかがでしょうか。