前回
続き。
魏と蜀の国力の差は、後世分からなくなっているが当時の人には自明である。
それを諸葛亮が分かっていなかったはずがない。
仮に取れたとして維持できるか??
長安を維持するには潼関を守らねばならない。
守りが破られれば長安はひとたまりもない。
まず、孔明が何度も北伐に出しながら中途半端に引き揚げているのは兵站補給が続かなかったからである。やはり自明の理である。
長安は遠く、潼関はさらに遠い。
一方東からは川沿いだから攻めやすい。
長安も潼関も戦略上の要衝だから、安定的に維持出来れば魏にとって大変な脅威。
到底維持が出来ない自信の無い所を攻めるとすれば、不意に襲って叩けるだけ叩いて引くという作戦になるが、叩いてダメージがどれだけあるか成算が無く、行き帰りに危険が大きいとすれば、諸葛亮が「縣危である」と退けたのは妥当な所だ。
そして蜀の猛追撃の報を魏国で聞きながら、
悩む男がいた。
元蜀の将「孟達」である。
今は魏にあって新城の太守となり、魏国西南の兵権を任されていたが、文帝(曹丕)が亡くなってから、軽く扱われている。というゾロゾロ本音が出てきた。
なんと!申耽と申儀を呼び寄せ、謀反の心を打ち明けてしまう。
(何をやっとるんや!孟達!ちなみに孟達大好きな武将の一人なんですが、この行為は以後、致命的ミスになってしまう孟達様…)
もちろん二人は城を出た後、孟達の謀反に呼応したふりをして、彼らは城を出てから司馬懿に知らせる準備をした。
孟達からの密使が届くと孔明はこれは魏を落とす最高のチャンスと酒宴を開いた。
しかしさらに密偵が来て、
司馬懿が平西都督に任じられ、
「魏王と日を決めて長安で落ち合う様子です」と聞いた孔明は驚いた!
(司馬懿は若い頃から「聡明博学にして大略あり」と評判だった。魏の荀彧に推挙されても病気を理由に辞退。しかし度々なる曹操の強い誘いにより受けて仕えるようになる。まさに魏国の諸葛亮であった。)
孟達は蜀への帰参を喜んだが、司馬懿のことについての反応は鈍かった。
(おい!孟達様!(ー ー;)…)
「丞相は思ったより、気の小さなお方じゃのう、考えてみるがよい。苑城は洛陽より八百里、新城までは千二百里の道のり。司馬懿が総指揮を命じられたにしても、まず魏王とあって正式に任命されねばならぬ。それまで勝手に兵を動かせぬわ、その間の手続きや使者の往復で一ヶ月はかかる。その間にそれがしは城の堀を深く堀り、諸将ならびに三軍の兵はことごとく要害の地に占めさせておくわ。たとえ司馬懿であろうともそれを破れるものではない。丞相にはご安心あれとお伝えくだされ」
(第一回の孔明の北伐は蜀軍の大進撃もあり、またとない機会が孟達の謀反だった。歴史を元に戻せないが孟達が孔明の言う通りに動いていたならば……蜀軍は水を得た魚の如く長安を攻めて、洛陽を落とせたかも知れない。まさに if だが。)
新城を出た密偵は孔明の元へ急ぐ。
孟達の手紙を見て再び驚いた。
孔明「孟達め、司馬懿が攻めてくるに一ヶ月はかかる。その間に充分用意が整えられるとしたためて参った」
馬謖「しかし長安で魏王と落ち合って、それから兵を動かすとなれば、早くて一ヶ月はかかると思われまするが」
(馬謖よ、おい、馬謖∑(゚Д゚)なんで孔明は馬謖をかわいがったのかね?諸葛亮は自分で策を読むのは天才だったが、人を見る目がなさ過ぎた。これは司馬懿とは致命的な差が出た、と思わざるを得ない)
孔明「孫氏の兵法にこういう言葉がある。『その備え無きを攻め その不意に出ず』司馬懿が孟達の謀反を知ったら許可など得ずに、一気に新城に襲いかかるわ。直線的に進めば十日もかからずに新城に着こう」
といい、もう一度密偵を放つ。
孟達「孔明は疑い深いと人の噂、これを見ればまさにその通りじゃのう」
そして事は露見する事になる。
孔明の言う通りになってしまう。
司馬懿の陣に来たのは、
あの申儀の家の者。。。
司馬懿は一刻を争う!と進撃命令を出した。
仲達は孟達謀反の知らせを聞くや、急いで進撃した。二日の道を一日で進む速さであった。
その途、右将軍の徐晃と会い、合流して徐晃が先鋒を務めることになる。
これにより徐晃軍と司馬懿軍がまとまり、新城への進撃を急いだ。
密偵「孟達様は司馬懿様が到着するにしても一ヶ月はかかると、まだのんびりと備えをしてございます。それを孔明様が心配をされて次々とお指示を出されていたのでございます」
密偵「十日もかかるまいと」
それを聞いた仲達は驚きを隠せなかった。
司馬懿「それにしても孔明とは恐ろしい男じゃ、わしの考えと行動をまるで見通しているようだ。孟達が指図通りに動いていたなら魏国は危なかったぞ」
新城では金城、上庸の準備が整わず、孟達はイライラしていた。
その時先鋒の徐晃軍が新城を攻めてきた報告をうける。
見ると徐晃の軍が取り囲んでいた。
徐晃「孟達!お前の謀反はもう露見してるのじゃ、おとなしく降参せい!」
ここで孟達の武将の力を見た!
南無三…(-∧-)合掌・・・
大将を失った兵は混乱し、それに乗じて孟達は城を出て迎撃に出る。
しかし司馬懿の大軍が!
それを見て退却し、城固めに入る孟達。
(ここにきて孔明の助言を思い後悔するも、既に遅しですぞ!孟達様!)
孟達「よいか城門をしっかり固めて防ぐのじゃ、がんばっていれば蜀軍が長安目指して動き出す。そうなれば司馬懿の軍勢もここに留まっておれぬわ」
(ここに至ってまだ甘い孟達様。孔明はそんな馬鹿な真似はしません。元々蜀の裏切り者孟達、孔明はあっさり切り捨てても惜しくはない)
しばらくして援軍の報告が。
申耽と申儀である。
もう司馬懿にチクっていたことも知らず、城門を開けてしまう孟達様…。
しかも城門を開けた際、敵の兵が城を占領し、司馬懿の旗が立っていた。
もう逃げる場所を失った孟達。
一人で二人を相手し、粘るも申耽の槍に力尽きる。
徐晃の死が呆気なく非常に残念だが、蜀推しの俺からしたら消えてもらってよかったという将の一人。
この喜び様は忘れませんぞ 、孟達様。
南無三…(-∧-)合掌・・・
曹叡「司馬懿、かつて汝をしりぞけ郷里にわびしく過ごさせたは朕の不明が敵の謀略に乗せられたもの。それを恨みに思わず魏のためによくぞ駆けつけてくれた。そなたが孟達の謀反をおさえてくれなんだら東西両京が危ういところであった」
ここに仲達は前例のない破格な特権を与えられたのである。
続く。