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ホーム転落死 白いつえへの気配りを

 地下鉄の駅で、目の不自由な男性がホームから転落し、電車にはねられて死亡した。多くの人がいる場所で、なぜ悲惨な事故が繰り返されるのか。社会全体で受けとめたい。

     事故があったのは、東京メトロ銀座線青山一丁目駅のホームで、男性は盲導犬と歩いていた。同駅にはホームドアが設置されておらず、男性は、線路側に近づくように歩き、足を踏み外すように転落したという。

     駅のホームでは、こうした事故が近年相次ぐ。2011年、つえをついた全盲男性が東京のJR山手線目白駅のホームから転落して電車にはねられ亡くなった。12年に埼玉県、昨年も大阪府で視覚障害者のホームからの転落死事故が起きた。

     日本盲人会連合が目白駅の転落事故後に全国252人を対象に実施したアンケートによると、3人に1人以上の92人にホームからの転落経験があった。見過ごせない数字だ。

     こうした悲劇を防ぐ安全対策の切り札がホームドアである。国土交通省が鉄道事業者に設置を促し、全国665駅(今年3月時点)で設置されている。首都圏の地下鉄の約半数、山手線で8割を超える。視覚障害者団体の要望はなお強いが、設置数の増加は近年、鈍っている。

     整備コストのほか、ホームの強度が弱いなど構造上の理由があるという。銀座線も開業が古くホームの強度が弱かった。それでも18年度中には2駅を除き設置する予定だった。

     視覚障害者は、駅のホームを欄干のない橋に例える。鉄道事業者は、ホームドア設置の優先度を上げるよう検討してほしい。

     ただし、施設の整備を待つだけでは事故は防げないだろう。

     駅やホームは人が集まる場所である。目の不自由な人は白いつえを持ったり、盲導犬と一緒に歩いたりしている。見かけたならば見守り、危険が迫っていたら即座に声をかけ手をさしのべる。公共の場での気配りを大切にしたい。

     先の日本盲人会連合のアンケートで、転落しそうになった151人に「なぜ転落せずにすみましたか」と聞いたところ、「体や腕をつかまれたりして止められた」「周りから声をかけられた」との回答が計120人に上った。そうした配慮を社会全体に広げたい。

     一方で、電車内のみならずホームを歩きながらスマートフォンを操作する人は後を絶たない。ある視覚障害者は「人とぶつかって方向が分からなくなってしまった」とホームからの転落理由を挙げた。画面ばかり見つめていれば周囲は見えなくなる。「歩きスマホ」は、命にかかわるような重大事故につながる危険な行為だと認識する必要がある。

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