戦争の悲劇や戦友への思い、いま遺す 旧制園部中の5人が冊子
旧制園部中(現園部高)を1941(昭和16)年3月に卒業した男性5人が、戦時体験を冊子「戦友の時空」にまとめた。戦争がもたらした悲劇や亡くなった戦友の記憶をつづり、平和の尊さを呼び掛けている。
■広島原爆や特高訓練つづる
老舗和菓子店「くりや」会長の山名長雄さん(92)=京都市下京区=が「同世代が年々少なくなる中、後世に体験を語り継ぎたい」と思い立った。同級生で同中11回卒業生の塩貝春男さん=京都府亀岡市=、前林登さん=京丹波町=、山口吉雄さん=京丹後市=、畑田重夫さん=静岡市清水区=が寄せた原稿を四六判51ページにまとめた。
塩貝さんは、原子爆弾が投下された1945年8月6日、所属中隊が広島に空襲警報を発令し、中隊長が直射光線を浴びて亡くなったことを明かした。
畑田さんは「原爆投下や終戦の事実さえ、知らされなかった」と軍隊生活を述懐し、「戦争は敵、味方を問わず全ての人に無意味なもの」と記した。
特攻隊員として訓練を重ねた前林さんは玉音放送を聞き、「あぁ、助かった、と心の中で叫んだ」と当時の心境を打ち明け、「戦争は最も人権を無視した行為。特攻は最たるもの」と強調した。
山口さんは、所属した船舶砲兵部隊の行動が機密だったため、船や隊員の被害が伏せられた事実を紹介。「犠牲となった戦友に会うため、広島の部隊慰霊碑に毎年参拝している」としたためた。
終戦前に遊海岸(京丹後市)の防衛隊長になった山名さんは「ソ連軍が来たら迎え撃て」と命令されたが、部隊には剣や銃が無く、「物資不足がここまで深刻とは知らなかった」と振り返った。
山名さんは「同じ経験は子孫にさせたくない。国のあり方や平和の尊さを考えるきっかけになれば」と願う。300部作成し、母校の図書館などに寄贈する。
【 2016年08月12日 12時02分 】