逆に、必要貯蓄額(率)を確保することができなくなるような場合には、当面の支出を諦めるなり、老後の生活レベルを下げるなり、あるいは予定よりも長く働くなり、といった対策が必要になるわけだが、その「加減」を大まかではあっても計算で具体的に求めようというのが、この式の趣旨であり、「要所を押さえて、細かなことは気にしない!」ことが目的だ。
運用利回りとインフレ
この計算式では、持っている資産と今後に積み立てる貯蓄について、運用利回りとインフレ率を「ゼロ」と置いている。これは、ほぼゼロ・インフレとゼロ金利である現状にたまたま近いが、将来状況が変わっても、資産の運用利回りがインフレ率並み以上に確保されているなら問題は生じない。
実は、筆者は職業柄(一応は運用を勧める側の証券マンである)もあり、実質運用利回りが介在する計算式も作ってみたのだが(ご興味のある方は楽天証券ホームページの筆者の連載記事をご参照ください)、考えてみると、長期的な収入も、現役期間も、もちろん運用利回りも、大いに不確実なのが現実だ。特に、運用利回りに、実質的に高い利回りを長期間にわたって「アテにする」ことの有効性には疑問がある。
持っている資産に関しては「概ねインフレ率程度の運用が可能だ」と考えた上で、その時々に許容可能なリスクを取って運用を行い、結果として得られた状況を、その都度、資産額(A)に反映させて評価するやり方が現実的で使いよいように思う。
例えば、運用のリスクに関しては、想定される最大損失額(マイナス2標準偏差くらいのケースを想定する)を老後期間(b)で割り算して、許容可能であるかどうかを判断する程度でいいと思う。たとえば、bを30年と想定する場合、資産額の変化(例えば損失)を一月あたりの取り崩し可能額に換算するために「360」で割ってみて、将来の生活への影響を評価するのが分かりやすい。
何はともあれ、「運用を上手くやって、老後不安を解決しよう」と思って過大なリスクを取ったり、「長期投資」を盲信したりすることは、運用で大失敗をする元になりやすいので、気をつけておきたい。
かつて、消費者金融のテレビCMの末尾には、「ご利用は、計画的に」というフレーズが付いていた。これに対して、筆者はいつも、「計画的に行動できないから、人は、消費者金融を利用するのではないか」とツッコミを入れたい気分でいた。読者には、「人生設計の基本公式」を使って、お金について計画的に考える手段を持っていただきたい。