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深圳・香港、株を相互取引 12月にも解禁、自由化前進

2016/8/17 1:12
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 【香港=粟井康夫】中国と香港の証券監督当局は、深圳と香港の証券取引所の間で株式の売買注文を取り次ぐ相互取引を12月にも解禁する。昨年夏以降の中国の株式相場の混乱が一段落したと判断、資本取引の自由化に向けた歩みを進める。海外の投資家にとっては香港経由で深圳に集積する中国のベンチャー企業に投資しやすくなる。

 中国の李克強首相は16日の国務院(政府)常務会議で「深圳・香港間の相互取引の実施案をすでに承認した。中国の資本市場の国際化に向けた確かな一歩になる」と明言した。

 両取引所はシステムの接続など準備作業を本格化し、「(12月下旬の)クリスマス前にも相互取引を始めたい」(香港取引所の李小加最高経営責任者)としている。9月に杭州で開く20カ国・地域(G20)首脳会議をにらみ、金融市場改革の進展をアピールする狙いもある。

 中国政府は2014年11月、上海と香港の間で株式相互取引を解禁した。「適格機関投資家」と呼ぶ一定条件を満たした金融機関にしか国境を越えた証券投資を認めていなかったのを見直し、個人を含む幅広い投資家が個別銘柄を売買できる道を開いた。

 当初は15年末にも深圳と香港の間でも相互取引を開始する計画だったが、昨年6月以降の中国株急落や人民元安など市場の混乱を受けて実施を延期していた。

 香港取引所の発表によると、新制度は上海・香港間の相互取引の大枠を引き継ぐ。対象銘柄は深圳上場の最大880銘柄(ベンチャー企業市場「創業板」を含む)、香港上場の最大417銘柄。投機マネーの急激な流入を防ぐため、香港から深圳への買越額に1日当たり130億元(約2000億円)、深圳から香港への投資には105億元(約1600億円)の上限を設ける。

 一方、上海・香港間で設けていた累積の総額上限(香港から上海への買越額で3000億元、上海から香港への買越額で2500億元)は撤廃する。投資家にとっては買越額が総額上限に達し、株式を長期間にわたって売買できなくなるリスクが低くなる。

 香港と隣接する広東省深圳は「東のシリコンバレー」と呼ばれる中国のベンチャー企業の集積地に発展しつつある。深圳上場株が相互取引の対象に加わることで「世界中の投資家が新世代の民営企業にアクセスできる」(HSBC)と歓迎する声が広がる。海外投資家の間では「中国経済の減速で鉄鋼、金融など従来型の国有企業の先行きは厳しい半面、インターネットやヘルスケア関連など新興企業株は魅力的だ」との見方が強い。

 深圳との相互取引の解禁はMSCIなど国際的な株価指数への中国株の組み入れにも追い風となり、年金基金など海外の機関投資家による中国株投資を後押しする可能性もある。

 一方、「深圳株のPER(株価収益率)は46倍と上海株(17倍)や香港株(12倍)に比べて割高で、海外投資家には手を出しにくい」(アクサ・インベストメント・マネージャーズ・アジア)との指摘も少なくない。

 中国の株式市場は昨年夏のバブル崩壊後、中国政府による買い支え策への依存が続く。上場企業からの申し出で株式の売買を停止できる制度など不透明な仕組みも残ったままで、資本自由化に向けた改革の加速を求める声も強まりそうだ。

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