韓国産の怪獣映画『第7鉱区』を観てきた。私の大好きな怪獣大暴れ系映画だったのだが、なんていうかイマイチだった。しかしなにが“イマイチ”だったのだろうか。具体的にどこが足りていて、どこが足りなかったのか。ちょっと思うところあったので、今回は 「 怪獣映画を面白くする要素 」 について、個人的に明文化してみたい。
【1、クリーチャーが魅力的であること】 クリーチャーが魅力的であること。これは言わずもがな、超重要な要素だ。「 怪獣映画って無名俳優ばっかり出てて魅力的なスターがいないじゃん 」 という人もいるが、すぐれたクリーチャーはそれだけでスターみたいなもんだからいいのだ。その証拠にエイリアンを見よ。シガニー・ウィーバーは知らなくてもエイリアンを知っている人はたくさんいる。ターミネーターを見よ。リンダ・ハミルトンを知らなくてもT-1000を知っている人はたくさんいる。 じゃあ、具体的にどうなっていれば「魅力的」なのか? <1-1:見た目が斬新であること。> 観客は、今まで見たことのない怪物を見たくて映画館に足を運ぶのだ。焼き直しやパクりデザインの怪獣では魅力大激減。一目で頭に焼きつく個性的な特徴がなければいけない。 <1-2:見た目が美しいこと> クリーチャーデザインで陥りがちなのが、「怪物は気持ち悪けりゃいいんだろ?」という安直な発想から奇をてらった醜悪さばかりが強調されて、生物としての美しいフォルムを保っていないパターン。 ウルトラ怪獣のデザインで有名な成田亨氏は、「気持ち悪いだけのデザインならいくらでもできるが、そんなことはしない。怪獣には怪獣の美しさがなければいけない」という哲学で数々の名怪獣を世に送り出していた。 スタン・ウィンストンやフィル・ティペットら、ハリウッドの大御所モンスターメイカー達も、文化は違えど同じ哲学を持っていただろう。彼らの作ったクリーチャーは、不気味で、人知を超えた不可思議な形状でありながら、たしかに美しいフォルムを持っている。クイーンエイリアンの頭部の曲線、『レリック』のコソガの肩のフォルム、『スターシップ・トゥルーパーズ』のウォーリアーバグの色彩・・・。 単に気持ち悪いだけのデザインでは、長年ファンから愛されるクリーチャーにはなりえない。 <1-3:ルール設定がしっかりしていること> 意外と重要なのは、各クリーチャー独自の「ルール」である。例えば世界一有名な怪物ドラキュラのルールは以下の通り。 ・血を吸われた者はドラキュラに隷属させられる。 ・十字架・ニンニク・日光・銀・流水に弱い。 ・不老不死。心臓に杭を打ち込むことでのみ死ぬ。 ・コウモリに化ける。 ・鏡に映らない。 などなど。 なぜルールが重要なのか。それは、独自のルールがあればあるほど、それを利用してストーリー展開に幅を持たせたり、伏線を張ったりしやすくなるからだ。怪獣映画というのは、ともすれば「怪物が出てきて、人間殺しまくって終わり。以上。」になりがちだ。そこに、こういったクリーチャー独自のルールを持ち込むことで、ストーリーのメリハリが段違いになる。 怪獣映画のマスターピース、『トレマーズ』を例にとって考えてみよう。『トレマーズ』に登場するグラボイズのルールと、そのルールがもたらす作劇上の効果は以下の通り。 ・土の中にいるので銃器が効かない → 銃で簡単に殺せる、という解決策が取れない ・コンクリや岩は掘り進めない → グラボイズに襲われる場所と襲われない場所を設定することで、「あそこまで逃げ切れば助かる」といったサスペンスを設定できる ・音にのみ反応する → 必死に音を立てないようにするサスペンスを設定できる。逆にあえて音を出すことで人間が逆襲するという爽快感ある展開につなげることができる その他、ゾンビルール、プレデタールール、パラサイトルールなど、傑作怪獣映画には独自のルールがあるものが多い。(逆に、初代エイリアンは「絶対無敵」という反則技をルールにして魅力的になった稀有な例だ。エイリアンは2作目以降で社会性昆虫的な設定が後付されて神秘性を失ったが、とはいえルールを拡充してストーリーを広げるためには最良の選択だっただろう) 古典的モンスターとして、ドラキュラと同じぐらい知名度のあるフランケンシュタインや狼男に比べ、ドラキュラを扱った映画の数が格段に多いのも、フランケンシュタイン達に比べて、「ドラキュラルール」を用いてストーリーを作りやすいからだと私は見ている。(もちろん、基本的に人間の姿をしているドラキュラのほうがメーキャップがラクだという技術的・予算的な理由もめっちゃ大きいと思うけど) <1-4:怖いこと> クリーチャーはほとんどの場合、人間が乗り越えるべき試練として映画に現れる。誰が見ても恐ろしいものでなくてはならない。しかし、これは当たり前のようでなかなかできないことだ。だって所詮、作りモノだもん。作り手が、どこまで観客を本気で作品に引き込めるか、その努力とテクニックが試される。 例えば『ミミック』に登場する“ユダの血統”は、「人間に擬態する虫」というドリフのコントみたいな設定なのに、ちゃんと怖い。それは、「どういう場所にコイツがいたら怖いか。逆にどういう場所にいたらバカバカしく見えるか」を、監督と脚本家がちゃんと吟味し、撮影・照明・音響といったスタッフ全員でクリーチャーの怖さを後押しする演出をしているからだ。だから地下鉄ホームでミラ・ソルヴィノが襲われるシーンと、彼女の叫び声がトンネルの奥底に消えていくシーンは鳥肌が立つほど怖い。 そしてもう一つ、「コイツに遭遇したら即死する」という凶悪な武器があればあるほど、そのクリーチャーの怖さは増し、当然映画としての緊張感も段違いになる。 『アイ・アム・レジェンド』のダーク・シーカーは、登場シーンこそ凄まじく不気味なものの、いざ人間側とのバトルになると今ひとつ恐ろしくない。単に腕力の強いオッサンにしか見えないので、「殴り合いでも何とかなるんじゃない?」と観客が思ってしまうし、なにより主人公がウイルスへの免疫を持っている設定なので、「主人公が1回でも傷つけられたら終わり」というゾンビ映画的な緊迫感が生まれない。 クリーチャー側には人間を一瞬で葬り去る殺傷力を持たせつつ、なおかつ主要な登場人物はご都合主義に陥らずにそれをかいくぐって生き延びる展開をつくる・・・。このバランスが怪獣映画を成り立たせるうえで一番難しい部分かもしれない。 さて、クリーチャーへの言及はこのへんで止めよう。
【2、人間が魅力的であること】
2つ目のポイントは、人間が魅力的であること。これはなにも 「人間が描けていない映画なんて、レベルが低いからね!」 と言いたい訳ではない。 怪獣映画を面白くする小道具として、最大のポテンシャルを秘めているのが人間だからだ。 観客が怪獣映画を見るときは、フツーは人間側の視点に立ってみることになる。登場人物の立場にのめり込めばのめり込むほど、映画を楽しむことができる。いくらクリーチャーが恐ろしい姿をしていても、襲われる側の人間を応援できなけりゃ「あ、こいつ死んだ」程度にしか感じないわけで、ハラハラドキドキなんてできない(『ザ・フィースト』シリーズがどれもイマイチなのは、「感情移入できる登場人物」が一人も登場しないからだろう)。観客を単なる傍観者にさせず、「がんばって生き延びてくれ主人公!」と思わせ、映画の参加者に仕立て上げるためにも、人間側の描写に手を抜いてはいけないのだ。 人間側のキャラ描写が素晴らしかったクリーチャー映画といえば、『グエムル』が近年の作品では群を抜いていると思う。(まあポン・ジュノですからね。計算づくの演出と情熱的な勢いを両立させたキャラ描写。さすが技巧派) この映画では、主人公ソン・ガンホを始めとして、登場人物は失敗ばっかりで超カッコ悪いのだけど、あきらめず(ホントに全然あきらめない。最高。)、家族のためになりふりかまわず全力で事態に挑む彼らの姿に、観客として本気でエールを送りたくなる。観客は彼らと涙や怒りを共有し、クリーチャーに立ち向かっていくのだ。
【3、戦いが派手であること】
3つ目のポイント。映画は派手なほどいい。・・・という訳でもないが、怪獣映画の場合は派手なほうがいい。どうせ大した中身はないのだし、見た目に金をかけるべきだ。 怪獣映画を見に来る観客は、別に魂を揺さぶられようとか、賢くなろうと思って映画館に来る訳ではない。爆発シーンを観てスカっとしたり、怪獣を観てハラハラしたい、それだけだ。だったらその期待に応えるのが怪獣映画の務めだろう。人間と怪獣の攻防は、視覚的な興奮に満ちていなくてはいけない。 さらに映画のラストバトルで、先に挙げた「怪獣ルール」を伏線としてクリーチャーにトドメを刺したりすれば盛り上がりは最高潮だ。 これは個人的な嗜好だが、最初は地味目に始まって、ラストに向かって尻上がりに派手になっていく映画は、「おお、予想外の展開!嬉しい誤算!」という感じで観終わった後の満足度がとても高い。(『ミミック』とか『第9地区』とか) 怪獣映画とはちょっと違うのだが、ケビンベーコンのCGちんこに皆が熱狂した(僕調べ)『インビジブル』のラスト、エレベーターでのバトルなんかが“うれしい誤算”バトルの代表格だろう。まさか透明人間映画を観に来て、あんなにアイディアに満ちて、あんなにスリル連続のド派手バトルが待っているとは! 【4、まとめ】 さてと。個人的に思いついたことを明文化できてスッキリしたので、完全自己満足、まとめらしいまとめは無い。私が挙げた要素はあくまで1つのアプローチ例であり、全く別のアプローチから描かれた怪獣映画も今後たくさん生み出されてくることだろう。 怪獣映画は本質的には「剣とドラゴン」という人類の歴史上もっともオーソドックスなおとぎ話であり、だからこそこれからも様々なバリエーションに調理され、新たな恐怖と興奮を私たちに提供し続けてくれると思う。あー、面白い怪獣映画もっと観てぇー。 |
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