芸能
視聴率1桁でも看板 「サザエさん」はどこへ行く?
アニメ評論家 藤津亮太
放送開始から今年で48年目となる長寿番組「サザエさん」。ところが、その人気ぶりに異変が起きている。フジテレビの看板番組として、最盛期には40%近くあった視聴率が、今年5月、7月と2度も1桁台を記録してしまった。「アニメの設定が時代に合わない」などの批判も出ているが、SNSでは番組内容や視聴率の動向も含めて注目度は依然高い。「サザエさん」の今後はどうなるのか、アニメ評論家の藤津亮太さんが分析する。
2016年7月3日、アニメ『サザエさん』が、関東地区の番組平均世帯視聴率9.9%と2桁割れを記録した。5月22日の7.7%に続いての1桁台だが、5月は裏番組が「笑点 歌丸ラスト大喜利スペシャル」(視聴率27.1%)で、数字が持っていかれるだけの理由があった。ところが7月3日には有力な対抗馬がない。
この異例の数字に、いよいよ『サザエさん』が視聴者と乖離 を始めたのではないかという観測も出始めた。放送開始から半世紀が近づく『サザエさん』はこれからどうなるのか。『サザエさん』とはどんなアニメなのか改めて確認しながら、『サザエさん』の行く先を考えてみたい。
意外と低いアニメ視聴率
ご存じの通り『サザエさん』は長谷川町子の4コママンガが原作。1950年代から江利チエミ主演の実写映画(全10作)が人気を集め、東京五輪の翌年の65年にはTVドラマも放送。そして、69年からは、現在も続くTVアニメがスタートした。アニメは当初、スラップスティック(ドタバタ喜劇)なテイストだったが、途中から現在のホームドラマの路線に変更になった。第2次石油危機が起きた79年には39.4%という驚異の視聴率をたたきだしているし、2000年代前半にもたびたび20%台をマークしている。
現在の視聴率は、おおむね10%台前半で推移している。1桁に再び転落した7月の9.9%の翌週10日は11.1%に回復しているが、実は、これはその週のアニメの中では最高視聴率で、その週の視聴率トップ30にはギリギリ入らないぐらいの数字(30位の「ぶらり途中下車の旅」が11.8%)だ。13~14%をとった週は、アニメ番組で唯一、視聴率トップ30に食い込んでいる。
誤解をしている人も多いかもしれないが、最近のアニメ視聴率というのは、おしなべて高くない。『サザエさん』に続く人気番組は『クレヨンしんちゃん』。これが8%~10%。その下に『ONE PIECE』と『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『名探偵コナン』が6~10%の間で並んでいる。つまり大半のアニメは視聴率10%未満なのである。全アニメ番組の半分弱を占めるコアなファン向けの深夜アニメになれば、視聴率はさらに低くなる。このように『サザエさん』はほかのアニメと比べても特別な存在といえる。
2016年08月17日 05時20分
Copyright © The Yomiuri Shimbun