【就活生、全くもって必見ではない】総合商社の仕事を「コケシ」と「ぬか漬け」で説明した。

2016/8/16 00:32 ネタりかコンテンツ部

こんにちは、ライターの熊谷(@kumagaimanato)と申します。さて、みなさんは「総合商社」と聞いて、どんな仕事をしている会社かすぐに思い浮かびますか? 何も思い浮かびませんか? 思い浮かびませんね? 有難う御座います。

 

本日は、人気だからと総合商社を志望する就活生はもちろん、「総合商社って聞くとちょっとイケてる気がするけど、実際何をしてるのか一切知らない」という方に向けて、総合商社の仕事を解説してみたいと思います。

 

 

総合商社の仕事は、なぜ分かりづらいのか

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私自身、総合商社に約4年間ほど勤務していたのですが、実は「総合商社って何をしている会社なんですか」という漠然とした質問に対し、いまだに分かりやすく回答することができません。

 

なんとなく、「インターナショナル」、「合コン」、「激務」、「体育会」、「合コン」のような世間的イメージがありますが、そのビジネスの実態はどうなのか。小学生でも理解できるほど分かりやすく説明したいけども、それがなかなかできません。

 

 

では、なぜ実態を説明するのが難しいのか。それは「ラーメンからミサイルまで」と言われるほど、余りにも多様な商品を扱っていることが背景にあるのではと思われます。

総合商社のビジネスを全く知らない人が、「サバの缶詰を海外で売ったり、鉄の原料になる鉄鉱石の鉱山を保有したりする会社」という説明を受けたら、重度の混乱に陥り失禁してしまうのも無理はありません。

 

 

そこで今回は仮に総合商社の商品が「コケシ」と「ぬか漬け」のみだったら、という異次元の前提に立ち、彼らのビジネスの歴史を大胆に整理してみたいと思います。

 

総合商社の歴史

以下、時代別にその歴史を整理していきます。

 

1)1986-1990年 「トレーディング」で安泰

 

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約30年前、総合商社は「トレーディング」と呼ばれるビジネスをしていました。これは簡単に言うと、「誰かからコケシを買って、そのコケシを他の誰かに売る」というビジネスです。

 

 

例えば、一般的に売り買いされているコケシの価格(コケシの「相場価格」と言います)が100円とすると、97円でコケシをコケシメーカーから買って、そのコケシを102円でコケシ好きの人に売る。っっっしゃああああ!!! 5円儲かった!!!

 

 

 

 

これです。

 

 

 

 

特に、日本のコケシメーカーからコケシを買い、それを海外のコケシ好きに売るというような、「輸出モデル」が王道でした。

 

 

総合商社は、「どの国の人がいくらでコケシを欲しがるかを、鬼のように知っている」、「外人に対して、英語でコケシの魅力を鬼のように説明できる」、「海外のコケシに関する法律を鬼のように知っている」というような、鬼のようにさまざまな存在意義があったので、日本のコケシメーカーも海外に売る時には総合商社に頼らざるを得ない状況だったのです。

 

というわけでコケシの輸出による収益は、順調でした。

 

 

また、総合商社は「コケシ」と同様、「ぬか漬け」においてもトレーディングをおこなうなど、日本品をせっせと海外に輸出して稼いでいました。

 

(※各総合商社は、この時期は安定して300億〜500億円ほどの連結準利益をあげていました。)

 

2)1991-1999年 「トレーディング」に暗雲が立ちこめる

 

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得意の輸出モデルで、バッコンバッコンと日本のコケシを海外に売っていた総合商社。しかしこの時期になると、やや雲行きが怪しくなってきます

 

 

大きな原因は、インターネットの発達により、日本のコケシメーカーが海外のコケシ事情を自分たちで入手できるようになったこと。これまで総合商社に聞かないとわからなかったような海外のコケシ情報も、ネットの発達により誰でも入手できるようになってしまったのです。

「おお、スコットランドにもコケシ好きの人達がいるみたいだね。かれらは120円で買うそうだ。よし、メールしてみよう。」

 

 

さらに、日本のコケシメーカーが、英語を話せる「ジョン」や「メアリー」と言ったインターナショナルな社員を多数採用するようになりました。その結果、わざわざ総合商社を通さずとも、海外のコケシ好きと対等に交渉できるようになっていったのです。

 

そしてついには、コケシ販売用の海外支店をつくるような日系コケシメーカーも出現。日系コケシメーカーのグローバル化は加速し、「フェルナンデス」や「オストグル・ヴィッチ」といった大型外国人助っ人も獲得。もはや、総合商社の出る幕はありません。

 

 

 

特にこの時期はバブルの崩壊直後だったため、不況に苦しむ日系コケシメーカーは必死でした。総合商社は、これまで「97円で買って102円で売っていた」ような商売で、軒並み「100円で買って102円で売る」ことを余儀なくされる苦境に陥ります。

 

 

もちろんコケシのみならず、「ぬか漬け」のトレーディングにおいても同じ理由で総合商社の存在意義は低下し、収益は落ち込みます。そしていよいよ、巷のコケシメーカー達の間では、こんな言葉が囁かれるようになります。

 

 

「え、総合商社って、いらないんじゃね?」

 

 

(※各総合商社の連結純利益は、この頃100〜300億円程になってしまいました。)

 

3)1991-1999年 「投資」への挑戦

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トレーディングでの収益が縮小していく中、「これはマジでヤバい、アカンやつや死ぬ。」と焦った総合商社は、「投資」ビジネスに力を入れはじめます

 

 

総合商社の「投資」は、『週間ダイヤモンド』や『PRESIDENT(プレジデント)』を読んで情報を仕入れ、有望そうな会社の株を買うという中年のオジさん達の個人投資モデルとは一味違います。

 

 

総合商社のおこなう「投資」は、まずコケシのトレーディングをしまくったことにより得られたコケシに関する世界中の情報を整理するところから始まります。

 

一体、コケシはどの国で、いくらで取引されてきたのか。今後それはどうなるのか。さまざまなコケシメーカーやコケシ好きの外国人と付き合ってきたため、総合商社は世界中のコケシに関する情報を阿呆みたいに保有していました。

 

そして、それらの情報の分析を進めた結果、“コケシは今後、ネパール近辺の国で不足する”ということが分かりました。さらに、ネパールは木材の値段が安く、低いコストでコケシを作ることが可能という情報もあります。

 

つまり「ネパールの安い木材でコケシを作って、それをネパール近辺で高く売ると儲かりそうだ」という予測が成立したのです。

 

 

 

しかしこのプロジェクトは、総合商社だけでは進めることができません。そもそもコケシの作り方が分からないし、ネパール国内のルールだとか色んな事情もよく分からない。

 

そこで、コケシの作り方を知っている日本のコケシメーカーAと、ネパール付近の事情にやたらと詳しいネパール&Co.の2社と友達になり、3社だけのグループをつくって、熱心に密談を重ねていきます。

 

その中で「3社でお金を出し合ってネパールにコケシ工場を作らないか」という提案があり、それぞれの役割を決めることに。

「じゃあ、コケシメーカーAが工場の設計して、ネパール&Co.がネパールのことを教えてね。うちはネパール近辺の国に売ったり運んだりするから。利益は三等分ね。」

このように総合商社は会話が変な空気にならないよう積極的にグループでのやり取りをリードします。

 

 

こうして完成したコケシ工場から狙い通りの利益が生まれれば、その一部は総合商社の取り分になり、その後は工場が安定的に動くよう皆でメンテナンスすればOK。

 

 

これが総合商社の「投資」です。個人投資家には到底できない、総合商社ならではのやり方ですね。『週間ダイヤモンド』や 『PRESIDENT(プレジデント)』の情報から株を買う個人投資とは、全く違うということがわかります。

 

 

 

なお総合商社は、ネパールのコケシ工場に加え、同じような方法でスリランカに「ぬか漬け」の工場もつくりました。総合商社は、これらの工場……つまり“投資案件”が花開く時を、じっと待ちます。

 

4)2000-2013年 「コケシ投資」の好調

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暗中模索で頑張り続けた「投資」ビジネス。総合商社は、ネパールのコケシ工場で90円でつくったコケシが、ネパール近辺では110円で売れると想定していました。

 

しかし総合商社の予想は、大きく外れます……。

 

 

 

良い方向に。

 

 

 

 

なんと、世界中で空前のコケシブームが起こり、各国の人々が狂喜乱舞してコケシを買い漁るようになったのです。コケシ、コケシ、コケシ。世界のコケシの相場は上がり続けます。150円、200円……そして、300円。

ネパールの工場は、90円でコケシを作ってネパール付近に300円で売る、そんな工場に生まれ変わったのです。作りまくりの、売りまくり、儲かりまくりです。

 

 

こうして総合商社は、これまでとは比べ物にならないほどの利益を手に入れます

かつて「トレーディング」の商売ではコケシ1個につき5円(=102円−97円)だったものが、「投資」ではコケシ1個で210円(=300円–90円)の利益に。

ついに、時代が我々に追いついてしまったようだ……。総合商社は、空前の好景気に沸きます。

 

 

 

なお、スリランカの「ぬか漬け工場」のほうは、この間ほとんど儲かりませんでした。ぬか漬けブームは全く来なかったからです。まあでも、コケシ工場でめちゃくちゃ稼いでいるので、全体で見ると、問題無し!!!

 

 

(※総合商社の雄である三菱商事の2000-2013年における連結準利益の年間平均は2,953億円。全世界を巻き込んだリーマンショックの頃でさえも、総合商社は概ね1,000億円以上の利益を出していました。)

 

5)2014-2016年 「コケシ」の終わり

 

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コケシブームは各地で突然に終わり、長らく300円近くの値がついていたコケシの価格は暴落します。「ああ、もうコケシ飽きたわ。」

 

特に、その恐るべき人口から巨大な「コケシ需要地」となっていた中国で、コケシブームが完全に終わってしまった影響が大きかった。コケシが売れない。

 

 

 

コケシ、50円時代。

 

コケシの相場価格は50円まで落ち込み、総合商社の持つネパールのコケシ工場は、70円で作ったコケシを50円で売る、つまりコケシ1個につき20円の赤字が出る構造になってしまいます。すでに稼働中のコケシ工場は、雇ってしまった工員の人件費がかかるため、製造を止めるわけにもいかない。ああ、作れば作るほど、赤字。

 

 

 

トレーディングビジネス “だけ” をしていれば、世界のコケシ相場価格が50円になっても、47円で買って52円で売れば5円の黒字になります。しかし「投資」はそういうわけにはいきません。コケシの相場の影響を、世界の大きな動きの影響を、モロに受けてしまうのです。それはコントロール不能。

 

「コケシ投資」が収益の柱となっていた総合商社の収益は、大きく落ち込みました。

 

 

一方、スリランカのぬか漬け工場は、引き続き大して儲かっていませんが、ぬか漬けの相場価格は変わっていないので赤字にもなりません。ギリギリ黒字を保っています。

 

(※2014年度に住友商事が732億円の赤字を計上。2015年度には、三菱商事、三井物産が赤字へと転落しました。)

 

6)2016年〜 時代は……「ぬか漬け」だ

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コケシの価格は、今後10年間は50円前後なんじゃないか、と言われています。もうコケシなんて流行らない。これまでのように、コケシの投資で儲けるのは難しい。

 

 

その一方で、世界の動向をみていると、「ぬか漬け」の相場価格は今後10年間で恐ろしく上がる可能性がある。どうも、2020年頃に、新興国を中心として空前の「大ぬか漬けブーム」が来ると言われている。NUKAZUKEがインターナショナルスタンダードになるらしい。

そう。次に注力すべきは、ぬか漬けだ……!

 

 

こうして総合商社は、ぬか漬けのトレーディングで得られた情報を改めて整理し、スリランカ以外にもぬか漬け工場をつくるべく(=新たな「投資」をするべく)動き出します

さああああ〜て、お次はブルネイに工場を作ろうかしら? いや、バルバドス? アゼルバイジャン共和国?

 

「トレーディング」により日本のぬか漬けメーカーと仲良くしていたこと、そして海外のぬか漬け事情に詳しくなっていることにより、ぬか漬けの投資においても総合商社は有利な立場。

そして今の彼らは、コケシ投資による成功体験も持っています。つまり、

 

 

「トレーディング」と「投資」。

 

 

この切っても切り離せない2つのモデルこそが、現在の総合商社のビジネスの要だったのです。

 

まとめ

もちろん、総合商社が実際に取扱う商品は「コケシ」と「ぬか漬け」のみでなく、理科の実験で使うような「危険な液体」から巨大な「鉄の塊」まで多岐に渡ります。総合商社というのは、それほどまでに総合です。

 

そして、それらのさまざまな商品に対し、「トレーディング」や「投資」をおこなっているのです。

 

 

……というわけで今回は、いくつかの側面を大幅に削ぎ落としながら、大胆に総合商社のビジネスモデルの大筋を説明してみました。

 

「トレーディング」「投資」「商品が複数あること」など、総合商社のビジネスモデルの超基本的な特徴の理解に、少しでも貢献できたなら幸いです。

 

それでは……!

 

画像:イラストAC

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