岡山大学工学部同窓会
2011/01/22
榊原精先生のご退官に寄せて
機械工学科 竹元 嘉利

榊原精先生は平成21年12月に満65歳の誕生日を迎えられ、岡山大学の規程により平成22年3月31日をもって本学をご退職されました。

先生は昭和47年3月東京大学大学院博士課程を単位取得退学され、同年4月に岡山大学工学部生産機械工学科の助手に就任されました。その後、昭和50年2月に理学博士を取得、昭和62年4月に工学部機械工学科の助教授に昇任され、平成19年4月には自然科学研究科の准教授に就任されました。その間、先生の所属研究室は塑性加工学研究室、機材材料学研究室、材料物性学研究室へと名称が変わりましたが、アルミ合金の時効析出挙動のご研究は、就任以来38年一貫して続けられました。特に自動車業界における車体の塗装焼き付け時のベーキングを利用した最適硬化処理や、メカノケミカルを利用した廃プラスティックスの分解処理など産業界にとって重要で卓越した成果を上げられております。また先生はアルミ合金以外にも、チタン合金、マグネシウム合金など主に軽金属関係を対象としたご研究に注力され、平成9年9月に日本金属学会論文賞、平成16年11月には軽金属学会論文賞を受賞されました。

先生は材料工学、金属塑性学、機械材料学といった専門の講義だけでなく、英語(工学部)、機械工学英語、微分方程式、線形代数、図学など実に多くの幅広い授業をご担当いただきました。先生の授業は声が大きくて分かりやすく、どんな初歩的な内容でも親身になって指導されていたため、多くの学生から厚い信頼が寄せられていました。さらには、後半では学生生活委員をされていたことも相まって、毎日先生を訪ねてくる学生が途絶えることが無かったことが印象的でした。先生はご自分でも「仏のサカキバラ」と自称しているように先生に救われた学生は多かったように思います。一方で先生が叱るときは、滅多にないことと声が大きい分、それは恐ろしく、2回ほどその光景を目の当たりにしましたが、私も含めて皆呆然として言葉を失ったものでした。

そんな榊原先生は無類の専門書好きで、高価な洋書でも自費で沢山購入しておられました。自分では「積ん読だ!」などと仰っていましたが、先生の蔵書を拝見するとどの本にも至る所に線を引き、本の間違いを指摘している箇所も多々見受けられました。しかし先生の後半は、雑務に追われ読書の時間が激減したことを嘆いており、退官後には存分に本を読みあさると意気込んでおりました。

先生のこれまでの教育・研究活動ならびに組合や社会活動に対するご貢献とご尽力に深く感謝の意を表します。またご健康に留意されて悠々自適もいいですが、たまには我々後進の指導も兼ねて変わらぬ笑顔を見せていただければこの上なく幸いです。


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