内閣府が発表した4~6月期の実質経済成長率は0・2%(前期比年率換算)で、2四半期続けてプラス成長だった。

 4月の熊本地震の影響は、日本経済全体で見れば限られた。英国の欧州連合離脱が決まったのは6月下旬だが、その後の各種指標を見ても世界経済に大きな悪影響は出ていない。新興国経済も小康を保っている。「景気はこのところ弱さも見られるが、緩やかな回復基調が続いている」(7月の月例経済報告)との判断は妥当だろう。

 ただ、4~6月の国内総生産(GDP)の内容も見ればせいぜい「横ばい」だ。超低金利を支えに住宅投資が急増し、予算の前倒し執行などで公共事業も増えたが、GDPの6割近くを占める個人消費が0・6%増、1割を超える企業の設備投資は1・5%減と低調だった。

 過去最高水準が続いてきた企業収益は、ここ数カ月の円高基調を受けて減益に転じた。とはいえ水準はまだ高く、利益の蓄積もたっぷりある。

 それを従業員の給与や賞与に回し、消費を活発化し自社の売り上げ増もにらむ。設備や研究開発への投資に充ててイノベーション(技術革新)を起こし、市場を切り開く。そうした企業の取り組みを政府が政策で後押しする――。これらが引き続き大きな課題となる。

 まずは企業の経営姿勢だ。

 みずほ総合研究所のリポートによると、金融を除く東証1部上場企業を対象に12年度以降のカネの使い道を調べたところ、自社株買いや配当という株主への還元策が大きく増え、株式取得による合併・買収(M&A)も活発だった。その一方で、人件費・福利厚生費や設備投資費の増加はゆるやかだった。

 株主への向き合い方は日本企業の課題の一つだが、本業を長期的に強化していくには従業員や設備・研究開発への投資が欠かせない。利益の使い道と株価の関係を見ると、人件費に重点を置いた企業の株価上昇が最も目立ったという。

 政府は秋の臨時国会で経済対策の柱となる補正予算案の成立を急ぐが、公共事業を積み増すだけではGDPの一時的なかさ上げにしかならない。

 日本経済に必要なのは、企業の賃上げや投資増が自律的に持続する仕組みだ。例えば法人税改革では、税率引き下げを最優先してきた姿勢を改め、賃上げや投資を促す減税をいま一度じっくり検討してはどうか。

 経済活性化の主役となるべき企業も、支える政府も、将来を見すえた判断こそが大切だ。