感謝
あれはまだ僕がすっかり子供だった頃
やがて向かわなくてはならない大人という未来に
夢と夢を無関心に重ね合わせ
絶望のない恐怖に駆られていたものだ
痛みを感じたというそれだけで流れてしまう涙の先に
泣いてはいけないという大人があった
巡るめく春夏秋冬
やがて僕は大人になり泣かなくなったが
そのかわり
いつも自分がどこにいるのかわからなかった
少女と過ごしたレンゲ畑は
いつのまにか心の景色から消え去り
幸せとは何だろうと考えるようになっていた
沈んでゆく島のように氷砂糖の欠片を水に落としてみる
それは小さな「く」の字型をしてコップの底にたどり着いた
きっと迷ったのだ
いつも僕は自分の未来が不安だった
なぜにこんなに傷つきやすいのだろう
手を叩いたら始まり
手を叩いたら終わる
そんな人生の囲いの中で今日を生きてる
くだらない事実と
ヤキのまわった現実に身を委ねたが
それでもやっぱり居場所がわからなかった
昨日をくぐり今日をまたぎ
明日を越えてゆく
そうやって誰もが生きているのだと悟った時
僕は運命を愛おしく感じることができたのだ
その気持ちを忘れないよう心の中に印形を押して
先の見えない未来にもそっと感謝をするのだ