殺しあう敵同士で紡いだ奇跡的な友情
元々敵同士だったけど打ち解けて交流が始まる物語はみんな大好きです。
ドイツ兵捕虜と日本人の交流を描いた「バルトの楽園」とか、韓国兵と北朝鮮兵の友情を描いた「JSA」など枚挙に暇がありません。
弱肉強食の緊張した世界の中で、敵対していた者同士が友情を結ぶ物語はほっこりするし、憎しみ戦い合う人間に対する希望を感じます。
それは万国共通の感情のようで、様々な「伝説的な戦場の友情物語」が今も語られています。
1. 普仏戦争「クリスマス休戦」
クリスマスの歌をきっかけに1日停戦した仏独軍
1870年7月に始まった普仏戦争は、プロシア軍が旧態依然たるフランス軍を各地で圧倒。皇帝ナポレオン3世も既に降伏していたものの、戦闘が止まることはなくフランスの各地でジリジリとした消耗戦が展開されていました。
事件が起こったのは、戦争の行方がもはや明らかで両軍ともに戦意を失いかけていた1870年12月24日のクリスマス・イヴの日に起きました。
パリ近郊の塹壕でフランス軍とプロシア軍が互いに撃ちあっていた所、銃を持たずに両手を上げたフランス兵が塹壕から地上に登ってきて、フランス語で「きよしこの夜」を歌い始めた。
両軍ともに、ただちに発砲を停止し、その歌に耳を傾けた。そうだ。今日はクリスマス・イヴだった。
フランス兵の歌が終わると、次はドイツ兵が塹壕から上がってきて、マーティン・ルーサーの"From Heaven Above To Earth I come"をドイツ語で歌い始めた。
この出来事がきっかけで両軍は戦闘を止め、一日だけ「クリスマス休戦」を行うことにしたのでした。
2. 第一次世界大戦「独露オオカミ停戦」
オオカミに悩まされた両軍が一時的に停戦
第一次世界大戦の東部戦線。
対峙するドイツ軍とロシア軍の前に現れた第三勢力は、オオカミの群れでした。
オオカミは貴重な物資を食い散らかしてしまうし、襲われて怪我を負う兵士も出てきて、両軍の兵士の間で不満が高まっていました。あの畜生をマジでなんとかしてくれ!
初め、両軍はそれぞれ単独でオオカミを撃ったり毒を入れたエサを撒いたりして対処していましたが、オオカミの群れは独露両軍地域に縦横無尽に出現し、きりがない。
そこで最終的に両軍は「まずはオオカミを駆除することが第一」として停戦に合意。
戦闘を当面中止し、オオカミ駆除のための共同戦線を張ったのでした。
両軍が集中的に駆除対応を行ったことでオオカミは徐々に減っていき、数百頭のオオカミが殺害され、一時的に両軍に平和が訪れたのでした。
オオカミにとってはとんだ災難だし、これによって個体数の減少が起こったことを考えると複雑な気分になりますが…。
3. 第二次世界大戦「敵同士で極寒の中サバイバル」
イギリス軍とドイツ軍兵士による極寒の地でのサバイバル
1940年4月27日、枢軸国支配下のノルウェー。
3名のパイロットが乗ったイギリス軍機が、ドイツ軍爆撃機とドッグファイトを繰り広げた挙句、両機とも被弾して墜落。
墜落した地はノルウェー中部にあるグローツリと呼ばれる寒村で、4月とはいえ雪と氷に覆われた極寒の地。
イギリス兵3人は歩きまわって掘っ立て小屋を発見し、そこに身を寄せました。
するとしばらくして、墜落したドイツ軍爆撃機のパイロット3人が同じく寒さに耐えかねて掘っ立て小屋に避難してきました。
当初は互いに敵愾心に見ていたいたようですが、次第に「この極寒の地を共にサバイバルする仲間」のような意識が芽生えてきて、食料をわけあったりして、協力しながら暮らすようになりました。
その後ドイツ兵1名はノルウェーの巡視兵によって誤って射殺され、2名は敵に寝返った罪で刑務所にブチ込まれてしまった。イギリス兵は共に本国に帰還することができました。
1977年、当時存命だった元イギリス兵ボストック氏と元ドイツ兵スコピス氏は37年ぶりの再開を果たし、当時の思い出を語り合ったそうです。上記の写真はその当時のものです。
2013年にこの出来事をモチーフにしたノルウェー&スウェーデン共同制作の映画「Into the White」が公開されています。(邦訳版はないようです)
4. 第一次世界大戦「ANZAC&トルコ共同戦線」
敵味方が協力してベドウィンの襲撃を撃退
第一次世界大戦の中東戦線。
ANZAC軍(オーストラリア・ニュージーランド連合軍)は、現在のヨルダンの首都アンマンに駐在していたオスマン・トルコ軍を攻めて降伏させ、その地にキャンプを張って約5,000名の歩兵を駐屯させていました。
ところが、トルコ軍の降伏を知った地元のベドウィンの軍勢約10,000が、今こそ長年の恨みを晴らす時として大挙して押し寄せ、降伏したトルコ軍に対して攻撃をしかけようとしてきました。
ANZAC軍は平和裏に降伏したトルコ軍の守るためとして、トルコ軍と共に押し寄せるベドウィンに抵抗して押し返すことに成功しました。
たった一夜だけの出来事でしたが、敵味方同士で戦った軍同士の奇跡的な連合は、トルコとオーストラリア・ニュージーランドの国民の心を暖かくしたのでした。
5. 第一次世界大戦「クリスマス休戦」
最も有名な「英独・クリスマス休戦」
この話は非常に有名なので、きっとご存知の人も多いでしょう。
1914年12月24日、第一次世界大戦の西部戦線の話です。
フランス北部の塹壕の中で睨み合っていた英独両軍ですが、クリスマス・イブの日、ドイツ側の塹壕から「きよしこの夜」が聞こえてきた。それを聞いたイギリス兵も「きよしこの夜」を歌い返した。
その翌日、どちらともなく両軍の兵士が塹壕の外に出てきて互いに歩み寄り、一時的な休戦が実現しました。
休戦中は、互いの兵士がサッカーに興じたり、記念写真を取ったり、タバコやチョコレートといった品物を交換したりして、普段殺し合っている者同士とは思えない友情に満ちた光景が繰り広げられました。
もしかしたら、互いに戦い合う男同士分かり合える何かがあったのかもしれませんが、それはその時、その場にいないときっと分からないものなのでしょう。
イギリスのスーパーマーケットSainsburyが、クリスマスキャンペーンの一貫で作ったプロモーションビデオが一番分かりやすいです。
まとめ
普段日本という国の中にいてそこから物事を見ているから、特に中国・韓国が憎たらしく思ってしまうけど、いざ外国に出てみると日本人が真っ先に仲良くなる人種は、中国人・韓国人だったりします。
お米を食べる、家で裸足になる、漢字が分かる、三国志が好き…等々、共通の価値観があれば仲良くなれるし、
直近の話題で言えばPokemon Goがあれば、ムスリムともアフリカの人とも仲良く慣れると思う。
なのでいかに中国憎たらしいと思っても、一市民として彼らと草の根的に交流を続けるのがもっとも大切なことだと思います。
もしかしたらぶち壊しになる時が来るかもしれないけど、それまでの積み重ねはどこかで活かされるはずです。
参考サイト
"10 Unexpected Wartime Friendships" LISTVERSE