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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ
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聖樹様からのお話と、エルの遺言

死したものは生き返れない。これは変更しません。
(行くか)

 緑色の外套を身に纏い、宿屋を後にする。ログインをしたときにはワンモアの世界は夜中であり、人通りは少ない。これから向かう先は聖樹様の元なので、人通りが少ない方が都合がいいだろう。聖樹様はエルフ村の中央に大きくそびえているから、夜中であっても見落としようがない。僅かながら聖樹様は発光もしているため、昼間より夜の方がより美しく見える。

(むしろ暗いからこそ足元に注意だな……)

 転ばないように注意しながら、聖樹様の元へと急ぐ。聖樹様を守っている見張り役の人に一旦止められたが、外套から顔を出し、自分の名前を告げて要件を告げるとあっさりと通過許可が出た。ログインして歩くこと十数分後、自分は聖樹様の元へと到着。聖樹様の元には、椅子にすわりながらお茶を飲む一人の緑色の髪を持った女性がいた。その女性の服装は薄い布を纏うだけの外見をしており、街中で見かけたらなんて格好をしているんだと自分なら首をかしげるだろう。

〔来たか……待っていたぞ〕

 頭の中に直接響くような声がする。これは聖樹様だな。

〔今回、わざわざ来て貰ったのは伝えたいことがあるからだ。まずはそこにいるハイエルフの里にいる聖樹から来た使いより話を聞くがよい〕

 聖樹様の声に促されて、お茶を飲んでいた女性が口を開くのを待つ。女性はお茶が入っているカップをテーブルに置いた後に音を立てずに立ち上がった。立ち上がった姿をみると、足の脛より下が見えない。幽霊みたいな物なのか?

「ハイエルフの里にて、ハイエルフに長く加護を与えてきた聖樹様より、伝言がございます。『狂信に近い者達の一族、またその者を結界の外に出した愚か者は、斬首の刑に処された』との事です」

 詳しい話を聞くと、今回の一件によりガージャの属していた一団はハイエルフの誇りを汚し、森に無用の血を降らせた罪として処刑することを長老が決定。トイさんが写し取っていた水晶が何よりの証拠となり、言い逃れできる状況ではなくなった。さらにハイエルフの聖樹様も今回の一件について非常に怒り狂いこうハイエルフ全員に向かって告げたらしい。

〔このようなおろかなことをする為に、私はお前達に加護を与えてきたのではない。あからさまに他の種族に対してこれだけの打撃を与えた者を始めとした関係者に処罰が下せないと言うのであれば、100万回太陽が昇るまで、お前達に一切の加護を与えぬ!〕

 ちなみにこの加護、怪我や病気への耐性や治癒の促進を始めとして、農作物の生育に収穫などにも関わっているらしい。その加護が突如無くなったらどうなるか? 怪我や病気はまちがいなく増えるし、何より食料事情が急速に悪化する。加護ありきで生きてきたため、その加護が無くなった途端にハイエルフの里はぼろぼろと崩れ落ちる事になるらしい。

 明らかな証拠がある上に、聖樹様まで敵に回したガージャが属していた一団は居場所や逃げ場を完全に失った。その結果、斬首刑を受け入れて、刑は実行された。その場を戦って生き残っても、聖樹様からの加護がなくなれば生きてはいけないと言うことが刑を受け入れた理由だったらしい。また、色香に迷ってガージャを結界の外に出した門番も同じく斬首の刑が下された。そもそもこの門番がガージャを外に出さなければ、今回の悲劇は起こらなかったのだから。

「そうですか……」

 結局ハイエルフの一番過激な集団は、ガージャという引き金が引かれたことでその幕を下ろしたことになる。そもそもなんでそんな連中が生まれたのかは謎だらけだが、人間にだってそんな極端な思考を持つ集団はいる。ハイエルフ達を一方的に頭がおかしいなどと糾弾は出来ないだろう。そんな部分までリアルと同じような理不尽を作り出さなくてもいいだろうにと、内心で文句をつぶやく。

〔ハイエルフ達の一件はひとまずそれでいいだろう。そして私からは、お主の弓の一件とエルからの最後の伝言を受け取っているから呼び出させてもらった〕

 最後の伝言……つまりは遺言か。

〔そのまま伝える。『残されていた寿命はもうしばらくあったから、君ともっと一緒に居たかったけれど……ごめんね。それから、ハイエルフに憎しみを持ち続けちゃダメ。こんなおばあちゃんのために、君が憎しみの感情にとらわれ続けるのは嫌だなぁ。君には笑っていて欲しいよ。最後に、君からもらった弓に私の中に残っていた最後の力を篭めておいたよ。その弓を、君が持っていた進化する弓に重ね合わせて欲しいな、それが私の伝えたかったことになるから』だ、そうだ〕

 もらった弓……エルヴン・エルダーボウの事だな。チグルイとエルダーボウをアイテムボックスから取り出して、聖樹様の前でそっと重ね合わせる……そうすると、エルダーボウがチグルイの中に吸収された直後、チグルイから生えていた刃が全てガラスが割れるような音を出し、木っ端微塵に砕け散った。

「え?」 〔ほう〕 「これは……」

 自分、聖樹様、ハイエルフの聖樹様の使いがチグルイの変化を見守る。包帯のような物が次々と出てきてチグルイを巻いて包み込む。やがてチグルイの紅い外見は包帯に包まれる事で完全に見えなくなり、色が全体的に淡い緑色へと変化していく。変化が完全に収まったチグルイは、かすかに緑色に発光する装飾が美しい弓へと変化していた。


チグルイ→護魂ごこんの弓

血に狂った所有者の運命を救うために魂を投げ出した者の心に弓が応え、再び変化を起こした。この弓を持つのはお前が初めてである……託された魂の重さを絶対に忘れてはならない。

Atk+110 魂弓こんきゅう 所有者が変身中のみ使用可能 魂をささげた者の力が宿っている 大きさが必要に応じて変化

特殊能力 貫通力強化(中) 大雷光招来(確率低) 大砂塵招来(確率低) 矢が光状になり、命中直前に4本に分裂する 大妖精の魔薬(ランダムで状態異常を付与する、確率中)弦1本 サハギンの水膜(水による矢の威力減衰無視) 捧げられたエルフの魂(一部の弓技を変身中でも使用可能&エルフ族と同じ弓補正がつく)


〔──おお、まさか、血に狂った進化の武具の運命をここまで変えるとは〕

 聖樹様が驚いたような声を出す。そうか、エル。お前は殺されてもなお、復讐などするなと。憎しみに染まるなと……。ガージャの一団は斬首されたと言う事を、もちろんお前は知らないだろうが……お前がそういうなら、もうガージャのことを恨むのは止めておこうか……遺言と魂の両方で訴えられてしまっては、もう何もいえない。

〔その弓が、我の言いたかった事を全て告げてくれたか。今まで血に狂い、魂を食らって多くの者が無残な死を迎えてきた。それを繰り返さぬように忠告を行うつもりであったが……その弓を託されたおぬし自身が、これからどうするべきかを一番良く分かっている筈だ〕

 聖樹様の言葉に頷く。エルの魂を無駄にしないようにしないといけないな、奇跡は一回しか起きない。

〔だが、私の大事な娘の死に対して、お主は心より怒り、そして泣いてくれた。その事については聖樹としてではなく、エルフの父として礼を言う〕

 こうして、聖樹様との話は終わった。聖樹様は何か願いはないか? と聞いてきたが、何も思いつかなかったので首を左右に振る事で返答とする。さて、ダークエルフの谷に向かう準備を始めようか……こういう時、気分を変えるためには冒険する場所を変えるのが一番だ。夜明けを待って、PTを解散する為にメンバーを集めようか。
これで、エルフの森ストーリーは終幕です。テーマは「理不尽」でした。

スキル

風迅狩弓Lv16 剛蹴(エルフ流・若輩者)Lv30  百里眼Lv22 ↓技量の指Lv17 小盾Lv26 隠蔽・改Lv1
武術身体能力強化Lv51 スネークソードLv46 義賊頭Lv17
妖精招来Lv7 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv1.04

控えスキル

木工の経験者Lv1 上級薬剤Lv18  釣り LOST!  料理の経験者Lv7 鍛冶の経験者LV18 人魚泳法Lv9 

ExP 13

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

進化武器 

チグルイ→護魂ごこんの弓

Atk+110 魂弓こんきゅう 所有者が変身中のみ使用可能 魂をささげた者の力が宿っている 大きさが必要に応じて変化

特殊能力 貫通力強化(中) 大雷光招来(確率低) 大砂塵招来(確率低) 矢が光状になり、命中直前に4本に分裂する 大妖精の魔薬(ランダムで状態異常を付与する、確率中)弦1本 サハギンの水膜(水による矢の威力減衰無視) エルフの魂(一部の弓技を変身中でも使用可能)
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