大手銀行の貸し出しが3年9カ月ぶりに減少しました。全国銀行協会がこのほど発表した「全国銀行預金・貸出金速報」によると、7月末の全国銀行貸出残高は前年同月比で2.1%増加しました。しかし、そのうち都市銀行の貸出残高は前年同月比0.7%減となりました。日銀が量的緩和とマイナス金利政策を続けているにもかかわらず、大手を中心に企業の資金需要は減退傾向にあることを示しています。
このデータは全銀協が全国の都市銀行、地方銀行、第二地銀、信託銀行などを対象に調査しているものです。その推移を見ると、第二次安倍内閣が発足した2012年12月ごろから伸びが大きくなり、13年後半には全国銀行全体で3%台後半、都市銀行で4%台まで拡大していました。
これは08年後半~09年前半以来の高い伸びです。この時期の貸出増加はリーマンショックで資金繰りが悪化する企業が増え、後ろ向きの資金需要が高まったことが要因でした。
これに対して、2012年以降はアベノミクスが背景となり、“平時”としては高い伸びとなりました。その後、頭打ちぎみとなった時期もありましたが、全般的にまずまずの伸びを示していました。
ところが、16年に入ったあたりから急速に伸び悩み始めました。特に都市銀行の貸出残高の伸び悩みは顕著で、ついに7月末にはマイナスとなったものです。都市銀行の主要顧客である大手企業の資金需要が低調なことが最大の要因です。「海外情勢や国内景気の先行きが不透明」として多くの経営者が依然、慎重な姿勢を崩していないことを如実に表しています。
今年2月に日銀が導入したマイナス金利の影響で、企業の借り入れ姿勢がより慎重になった面も否定できません。このような状況が、日銀の金融緩和に手詰まり感が出ていると指摘されることにつながっているわけです。
一方、地方銀行の7月末の貸出残高は前年同月比3.9%増、第二地銀は同3.4%増と、比較的高い伸びを記録しました。この数字から見れば、地方や中小企業の資金需要は底堅いと言え、金融緩和の効果は出ていると評価することもできそうです。
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