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打倒中国を目指した日本だったが、準決勝でドイツに惜敗した【写真:田村翔/アフロスポーツ】打倒中国を目指した日本だったが、準決勝でドイツに惜敗した【写真:田村翔/アフロスポーツ】

命運を分けた伊藤美誠の逆転負け
卓球日本女子、ドイツの粘りに屈す

(スポーツナビ)

最終ゲームを9−3でリードしながら

 2大会連続となる決勝進出は夢と消えた。卓球日本女子代表にとって、リオデジャネイロ五輪での目標は「打倒中国とメダル獲得」だ。4年前のロンドン五輪、今年の世界選手権といずれも団体戦の決勝で中国に敗れている。今大会もシングルスの準決勝で、福原愛(ANA)が中国の李暁霞に完敗を喫した。「打倒中国」は日本にとって悲願。しかし、その中国との対戦すらかなわなかった。日本の行く手を阻んだのはドイツだった。

 日本は、準々決勝のオーストリア戦からオーダーを変更し、1番手に伊藤美誠(スターツ)を起用した。ドイツの1番手で来るであろうペトリサ・ソルヤは、今年の世界選手権で石川佳純(全農)と福原に勝利している。一方の伊藤は、直近の対戦でソルヤを下しており、その良いイメージを重視する狙いだ。

 結果的に、この伊藤とソルヤの試合が、両チームの明暗を分けることになってしまった。伊藤が先手を取り、ソルヤが追いかける展開で進んだ試合は、両者が2ゲームずつを奪い合って、最終ゲームを迎えた。そこで伊藤は9−3とリードする。勝負は決まったかに思われたが、ここからソルヤが7連続ポイントを奪い、10−9と逆転。最終的に12−10で最終ゲームを勝利し、この第1試合はドイツがものにした。

「9−3の状況から、最初の2本を相手が思い切って狙ってきて、そのあとに自分のプレーができなくなってしまいました。慌ててはいなかったんですけれど、自分のミスが増えてしまって、もうちょっとゆっくり卓球をすれば良かったと思います」

 試合後、意気消沈しながら伊藤はそう振り返った。

逆転され、試合の流れがドイツへ

出鼻をくじかれた日本は歯車が狂い、5番手の福原も逆転負けを喫した【写真:田村翔/アフロスポーツ】出鼻をくじかれた日本は歯車が狂い、5番手の福原も逆転負けを喫した【写真:田村翔/アフロスポーツ】 どんな競技であっても、出だしというのは重要だ。初戦の勝利や、先制点というのは確実にチームに勢いを与えるし、その後の流れを決めていく。日本は伊藤の逆転負けによって、歯車が狂い始めた。

 第2試合はエースの石川が、2ゲームを先に奪われながらも、3ゲームを連取しイン・ハンに逆転勝ち。この勝利で勢いに乗るかと思われたが、続く福原と伊藤のダブルスでは2−1とリードしながら、またしても逆転で敗れた。4番手で再び登場した石川がストレート勝ちを収めたものの、今度は5番手の福原が、最終ゲームで9−7とリードしながら、そこから4連続ポイントを喫し、万事休した。

 リードはするのに、勝負を決め切れず、最終的には逆転される。ドイツ戦ではこの展開が繰り返された。日本の村上恭和監督は、伊藤の第1試合にその要因を求めた。

「5試合すべて大接戦になると思っていました。その中で初戦の美誠が1つのヤマでした。最終ゲームで9−3とリードしていて、逆転されたわけですから、試合の流れが全部向こうに行ってしまった。佳純が一時は戻してくれましたけれど、あの試合がひとつの大きな鍵だったと思います」

 一度狂った歯車を戻すすべを日本は持っていなかった。もちろん15歳の伊藤だけに責任があるわけではない。伊藤と同じく、5番手の福原も勝ちを意識するあまり、最終ゲームでは「相手がわざと浮かしてきたボールを打ち急いで、ミスをしてしまった」と悔やんでいた。決勝進出、メダル獲得がちらついていたからこそ、平常心を失っていたとも言える。

中1日でどこまで気持ちを立て直せるか

3位決定戦は中1日で行われる。彼女たちはどこまで気持ちを立て直せるか【写真:田村翔/アフロスポーツ】3位決定戦は中1日で行われる。彼女たちはどこまで気持ちを立て直せるか【写真:田村翔/アフロスポーツ】 日本は中1日空けて、もう1つの目標である「メダル獲得」に向けて、3位決定戦に臨む。相手はおそらくシンガポールだろう。中国と準決勝で対戦するシンガポールは、組み合わせが決まった直後から、3位決定戦を想定し、そこに調子を合わせてくる可能性もある。

 日本はこの1日でどこまで気持ちを立て直せるかが、3位決定戦の鍵となりそうだ。4時間にも及ぶ激戦で敗れたダメージは非常に大きい。その傷をどこまで癒せるか次第で、結果も変わってくるだろう。

 石川は強い決意を示す。

「団体でメダルを持って帰るというのが私たちの目標でもあります。でも結果だけにこだわらず、自分たちのプレーをしていけば必ず結果はついてくると思うので、3人らしく思い切りやることが大事だと思います」

 伊藤はこの日の悔しさをぶつけるつもりだ。

「私は今日、1番手と3番手で落としてしまいました。勝敗が最初で決まってしまったという気持ちもあるので、この悔しさを糧に銅メダル決定戦で頑張りたい思います」

 福原はすでに次を見据えていた。

「1日あるのでしっかり気持ちを切り替えたいと思います。今日も良いところはたくさんあったと思うので、その良いところだけを残して、悔しさはとりあえず置いておいて、次に向かいたいと思っています」

 準決勝で受けたダメージからいかにして立ち上がるか。3位決定戦はチームの、そして彼女たちの強さが問われる。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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