福地慶太郎
2016年8月15日03時00分
自由な作文教育が反体制思想の芽生えにつながると、国は教師たちを次々と弾圧した。軍国主義教育が徹底され、言論の自由が大幅に狭められた時代。あまり語られなかった教育現場での言論弾圧を、常総市の元高校教師、増田一也さん(80)が証言した。
父の事件を呼び覚まされたのは十数年ぶりだった。7月上旬、地域の教員らの会合に呼ばれた後のことだった。会場から自宅へ送ってくれた近所の中学校長が語りかけてきた。「戦争を知らない人たちに事件の話をしたらどうでしょう」
太平洋戦争開戦4カ月前の1941年7月。増田さんの父、実さんは、治安維持法違反容疑で逮捕された。国民学校の教師だった実さんは、身の回りの事柄をありのままに書かせる「生活綴方(つづりかた)」という作文教育を実践していた。食事や親の農作業だけでなく、食糧難や衣服が買えないといった貧困ぶりも書かせた。これが、共産主義思想の啓発とみなされた。
思想犯を取り締まる特別高等警…
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