尖閣問題、中国の主張には2つの誤りがある

なぜ、今になって強硬姿勢を見せているのか

尖閣諸島についての根拠の有無は前述した。台湾の状況は尖閣諸島と同じではないが、やはり中国の主張には問題がある。

台湾が中国によって支配されるようになったのは、1683年以降である。当時の中国は清朝であり、その年より以前は鄭成功が統治していた。この人物は明時代の人物だが明朝廷の命を受けて台湾を統治したのではなく、個人としての行動であり、また、その期間は22年という短期間であったので、明は台湾を支配していなかったというのが通説だ。

清朝は台湾の一部を支配していただけ

また、清朝は台湾の一部を支配していただけであった。台湾の西半分であり、東半分は最北端の一地方だけであった。そして清朝政府は統治外の地域、すなわち東半分の大部分を「番」と呼ぶ住民の居住地とみなして漢人がその地域へ入ることを厳禁するなど、統治下と統治外の地域を厳格に区別していた。

このような歴史的経緯は台湾の教科書に明記されていることであり、中国としてもそれは百も承知のことである。にもかかわらず、台湾を中国の「固有の領土」と主張するのは、繰り返しになるが、日本から取り戻したいからである。

ただし、台湾についてはもう一つの事情が加わっている。中国にとって、台湾の中国への統一が実現しない限り第二次大戦直後から始まった中国の内戦は終わったことにならないのだ。

中国は今回の判決後、むしろスプラトリー諸島(中国名「南沙諸島」)などでの攻勢を強めているきらいがあり、そのため今回の裁判はあまり有効でなかったという見方もあるようだが、真相は全く違うと思う。

中国としては南シナ海、台湾、東シナ海の領土問題の根底には、日本の軍国主義との戦いがあり、手を緩めることはできない。もし国際社会の言うように物分かりの良い態度をとれば政治的に大問題になる恐れがあるのであり、今回の判決のように中国にとって危険なことが起これば強い態度で出ざるを得ないのだと思う。戦闘的な行動形式は今や多数の国家にとって無縁かもしれないが、中国にとっては、いざという場合には必要なことだろう。

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