2016年08月14日

スローなブギにしてくれ

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81年の『スローなブギにしてくれ』は当時見なかった。見たくなかったのだ。

70年代の学生時代、藤田敏八の秋吉久美子モノは好きだったが、日活に入ってもパキさんは人気があり過ぎて先輩たちが独占して助監督には就けなかったからちょいとスネてしまい、別にいいやという気持ちになっていたのもあるが、自分が目指そうとする方向とは傾向が違うと思うようになってきて、大林さんは見ても、角川という大メジャーに進出したパキ作品は敢えて見ないでいた。

監督になって以降は呑み屋で会ったり結婚パーティに来てくれたりして親交はあって、『海燕ジョー』や『リボルバー』は見たが、これだけは見ないままになっていて、35年後「角川映画祭」でやっているので、今見ないと一生見ないなと思ったので見たら、やっぱり結構面白いのだな。
今見た方が面白いかも知れない。

山崎努が女子高生の浅野温子を拾って車に乗せるが反抗するので高速道路で棄てて後から追って来たバイクの古尾谷雅人が助けて福生で同棲になる。「限りなく透明に近いブルー」の街だ。
高速道路で車がビュンビュン走る脇で移動レール撮影も凄いが、猫を路肩から放り投げたりは、今では出来ない撮影だろう。
(入社した年に「高校大パニック」で浅野温子と、「人妻集団暴行致死事件」で古尾谷雅人と仕事しているのが、もう一つの見ない原因だったかも知れない。同期の友人が出世し過ぎると眩しくてまともに付き合えないという心理と近い。こちらはまだ助監督だ、という……)

片岡義男の原作を幾つか繋ぎ合わせているが、主題歌の「うぉんちゅー、俺の肩を抱きしめてくれ 生き急いだ俺の夢を憐れんで」という歌詞に驚くほど忠実に物語は進み「人生は自分を愛しているだけの悲しいゲーム」という話を分かり易く撮っているが、南佳孝のバブル的メロディとはチト違和感があるカッコつけないリアルビンボー映像で、観客の共感を呼ぼうとか女性に受けようとか全く考えて無いのが潔く新鮮。
自分勝手な山崎努が女たちからモテまくるのは監督の分身か……

後半1時間は殆ど予想つかず、くっついたり離れたりで、いつエンドマークが出るかというサスペンス…現場で悩みながら撮っているので全く退屈しないが、ラストシーンだけが分からない。
海から車が引き上げられ、山崎努が濡れそぼり浅野温子らしい女が車の中で死んでいる。
その前は古尾谷の子供を妊娠した浅野が腹の痛みで倒れて空を見上げる、というところからラストシーンになるから、これが幻想なのか、時間がジャンプしたのか、全く分からないように繋いで空撮で終わる。

それで結局は「スローなブギにしてくれ」という歌自体をパキさんはどう感じていたのだろう?と映画館の表に出て、少し考えながら歩くと突然「八月の濡れた砂」のメロディが聴こえて来たのであった……
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cap058
「桃尻娘」の竹田かほり。他にも日活勢は宮井えりなとか、高橋明さんとか出ている。

kaneko_power009 at 11:08│Comments(0)TrackBack(0)見た映画 | 日活

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