【寄稿】時代錯誤の中華秩序に執着する中国

 こんにち、ウェストファリア秩序と米国的世界秩序の最大の競争相手は、イスラム的世界秩序と中華的世界秩序だ。イスラム文明を除くと、東アジアに生きる者にとって、最大の関心事は中華的世界秩序ということになる。しかし「平等な多数の国の平和共存」というウェストファリア的理念は、中国文明にはなじみのないものだった。中国の天下観は、中国の統治者を、天下万物を支配する超越的存在と見なした。宇宙の中心たる中国が、文明と野蛮を分かつ絶対的基準だった。韓半島、わけても朝鮮王朝は、こうした中華秩序の磁場へ、最も積極的に溶け込んだケースだった。

 しかし21世紀の世に、こうした時代錯誤的な中華秩序の復元は不可能だ。ウェストファリア的世界秩序が、中華秩序とは比較にならない、人類史における普遍的な訴求力と正当性を持っているからだ。「南シナ海に対して中国が領有権を持つ」とする主張がPCAで敗訴したことは、東南アジアにおいて中華秩序の復元が不可能だということを雄弁に物語る。北東アジアにおいても、16世紀以来、独自の世界秩序を叫んできた日本が中華的世界秩序を受け入れるはずがない。そうなると、残るは韓半島だけだ。全世界が糾弾する核保有国・北朝鮮を中国がかばう理由や、THAADを口実に中国が韓国を圧迫する理由はただ一つ。「中華秩序への新たなる組み込み」に対し、国家的執着があるからだ。

 袁世凱は、壬午(じんご)事変(1882年)から日清戦争(1894-95年)直前まで、暴圧的かつ破壊的なやり方で韓半島に介入した。その結果が日清戦争の敗北と、その後すぐに到来した清帝国自体の滅亡だった。自らを滅ぼし、国まで滅ぼした。希代の反面教師にほかならない。中国はTHAAD問題を掲げて、韓国にウェストファリア秩序と中華秩序の二者択一を強要している。しかし、主権国家の相互尊重に立脚した平和共存は、歴史の至上命令にして世界秩序の礎石だ。韓国を属国と見なす粗暴な中華主義は、中国が真の大国になり得なかったことを証明している。

尹平重(ユン・ピョンジュン)韓神大学教授(政治哲学)
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