black bride
GYZE / Black Bride (2015)

1. Black Bride
2. In Grief
3. Honesty
4. Insane Brain
5. Black Shadow
6. Winter Breath
7. Twilight
8. Satanic Loop
9. 菜の花
10. Julius
11. 明日への光
12. Gnosis *

GYZEの2年振り、通算2枚目のアルバム。
Victor Entertainment / Coroner Recordsからのリリース。

日本のメロディックデスメタルバンドです。
前作リリース後、Shogo(Ba,Vo)が脱退して今作からAruta(Ba,Vo)が加わっています。
DISARMONIA MUNDIのEttore Rigottiが運営するCoroner Recordsから1stアルバムをリリースしたことで話題となり、去年、逆輸入的な形でVictorから日本デビューを果たし、その後もチャレンジングなライヴ活動を行っていてるこのバンド。
かくいう僕も何気なくその1stを輸入盤で買ったらそのクサいサウンドにまんまとやられてしまい、その年のベストアルバムの一つに選んだり去年2月のライヴに足を運んだりしました。
で、今作。
サウンドは前作から変わらず疾走感とクサメロを大事にしたメロスピ型のメロディックデスメタル。
ただ作風的には多少の変化がありました。
まず前作にあったDM系のモダンメロデス色が減退。クリーンVoの登場する曲は#3のみだし、ゴリゴリとヘヴィに聴かせる曲もなしでアルバム全編ほぼ疾走曲。デビューしたてのメロスピバンドでもここまで偏らんよなぁってくらいの徹底した疾走っぷり。
そしてメロディ面でも変化が。
「クサい」という部分に変わりはないんですが、そのクサさのタイプが違う。
前作が歌謡曲的な親しみのあるクサさだったのに対し、今作はネオクラ的なクサさに寄っていった感じがある。
正直モダンさどうこうよりもここの変化が一番大きいと思う。
J-POP的な哀愁のある歌謡曲系メロディと同様に北欧メロデスの要素も色濃く出すことでジャパメタ特有のクドさを中和し、日本らしさと欧米志向な部分をバランス良く調和させていた点を僕は気に入っていたので、そういう意味では今作のクラシカルなサウンドは日本人好みではあっても日本らしさは薄くなっている印象です。
ギターはとにかく弾きまくり。口ずさめるギタープレイから、「おぉすげー!」と思うようなメタルらしいエキサイトメントのあるギタープレイになったと思います。そのため、ギターの情報量がかなり多くなっていて聴き手が消化するのに若干時間が掛かるきらいもある。いくつかの曲は故にメインに据えているはずのギターメロディの印象が残り難く、聴きやすいはずなのに掴み難さを感じることもありました。逆に言えばそれだけギターメロディだらけのアルバムってことでもある。
加えてアレンジ面でも情報過多な部分があり、Keyをたっぷりと入れてメロディを厚くしているけど過剰になり過ぎて音同士が重なってゴチャッとしている気も。ギターだけで充分煽情性の高いメロディを奏でてるのだからもう少しシンプルにしてもよさそう。
そうはいってもメロディの強力さは流石の一言。ここまでクサメロだらけの楽曲に出来るってのはそれだけで才能なわけで。Ryoji(Vo,Gt)のメロディメイカーっぷりは今作でも遺憾なく発揮されています。
残念なのは音質かな。
演奏のバックにシャーシャリシャリと、まるで音全体に細かい砂利を振り撒いたかのような粗がある。
メタル特有のディストーションとは別の、本来ならば必要のないはずのザラつき。これはEttoreがミックスをミスったのか?それとも意図的なのか?

イントロのギターハーモニーからクサさを発散しまくるタイトルトラックの#1。落ち着いたピアノやROYAL HUNTっぽい豪華絢爛なシンフォニックなKeyを使いつつもメインに据えているのは当然ギターでネオクラっぽくピロピロと弾きまくってます。特にコーラスのギターメロディはかなり強力。去年3月のライヴでこの曲の未完成Verを聴いた時から既にクサかったですw
イントロでは初期SYMPHONY XばりにギターとKeyがネオクラっぽくユニゾンし、ザクザクとアグレッシヴに刻むアップテンポのヴァースから一旦トーンダウンするメロウなパートを抜けてNORTHERみたいなキラキラパートやネオクラ系の疾走メロデスパートへと繋がっていく#2。後半は特にネオクラ的でかなり派手。
初期スウェディッシュメロデス的なパワーと叙情性が光るイントロ ~ ゴリゴリとモダンに刻みながら甘過ぎないメロディを添えるヴァースから荘厳な雰囲気のブリッジでヘヴィに落とし、Ettoreによる日本語のクリーンパートへ展開する#3。
胸キュン系の優しいピアノで幕を開け、ヴァースはMORS PRINCIPIUM ESTみたいな硬質モダンメロデスをアップテンポ ~ 疾走の展開でザクザクと聴かせ、メロウなブリッジから前作の「Final Revenge」みたいなノリで楽しげに叙情メロディを弾きこなす#4。ネオクラなソロがベタで素敵。
GALNERYUSちっくなイントロから「君を乗せて」っぽい歌謡メロディを配した疾走メロデスをやっている#5。中間のIN FLAMES ~ DRAGONFORCEみたいな展開が面白かった。確かこの曲、前身バンド時代からあって最初はインストだったはずだけど、Vo入りの曲になったんだね。
#6はイントロで北欧的透明感を醸し、グルーヴィーになったNIGHTRAGEってな感じのミドル/アップテンポで進めていくヴァースからGYZEらしいメロウなブリッジを経て、コーラスでは落ち着きのある叙情メロディを上品に響かせているメロデスナンバー。この曲はあまり日本っぽさがなくて全体的にスウェーデン産っぽい。後ろでキラキラピカピカと鳴ってるトランス風のKeyがちょっとだけうるさく感じました。
メロスピタイプのイントロの後、初期DARK MOORみたいなギターメロディでクッサクサの疾走メロデスをやってる#7。アルバムの中で最もネオクラしてる曲。
#8はイントロとヴァースをブラストビートで爆走し、コーラスはARCH ENEMYばりの泣きメロを発散するメロデスナンバー。
#9はイントロからGALNERYUS臭が半端ないジャパメタ系メロデスナンバー。
#10はAT THE GATES風のリフでバシバシ突貫するヴァースから、ネオクラまではいかないまでもARCH ENEMYっぽさを感じさせるコーラスでテンポを落としてしっとりと泣かせるメロデスナンバー。
#11はアコギによるインスト。
#12は日本盤のボートラ。疾走感は抑え目のメロデスナンバーだけど本編と遜色ないクオリティ。

前作以上にやりたいことやアイディアを詰め込んだアルバムだと思います。
クサいメタルが好きな人はマストでしょう。

評価:★★★★☆